引きこもりたい
ああ、私は家が好きだ。
特に自分の部屋が大好きだ。
外になんか出たくない。
人と関わりたくない。
だからお願いします私をそっとしておいてください。
「...さま、お嬢様!!」
「ひゃぁぁっ!」
バタンッ!と大きな音をたてて部屋に入って来た女性に本を読んでいた私は驚き変な悲鳴をあげた。
「お、おどろかさないでよエリ一っ!」
「何が驚かさないでですか!私は何度も呼び掛けました!」
「だ、だって本を読んでたんだから...」
「だってじゃありません!私は午後に予定が入っていますと申しあげましたのに!」
エリーと呼ばれた女性は、私の言い訳をバッサリ切り捨てた。
「ごめんなさいぃぃ!」
情けない声で謝った私にエリーは呆れたようにため息をついた。
「...もう良いです。それよりもお嬢様、今日は御予定が入っております。早く御用意を」
「ごめんなさい、お願いします...」
「はぁ、お嬢様はもっとちゃんとしていればお綺麗なのですが」
「ごめんなさい」
棘を多く含んだエリーの言葉に私は謝ってばかりだ。情けなくて涙目になる。
「それでも公爵家令嬢ですか!しっかりしてください!」
「はいぃぃっ」
その後私はエリーに瞬く間に姿を整えられた。その間私はエリーに令嬢たるは何なのかを延々と聞かされるはめになった。
情けない。
私の名前は、プリシア・マルカティス。
ゲインドルツ王国のマルカティス公爵家令嬢ですね。私は両親にすら秘密にしていることがあります。
それは私には前世の記憶という物を持っているという事。
人に聞かれたら医者に連れて行かれそうだけど本当の事です。なぜならこの世界は乙女ゲームの世界なのですから。
何を馬鹿なと思うかも知れないけど事実なのです。前世の私はいわゆるオタクで乙女ゲームという物にハマっておりました。その中でも特にハマっていた乙女ゲームがありました。それは~夜空に輝く君だけの星~というタイトルの乙女ゲームでした。この国、ゲインドルツ王国はこのゲームに登場する物語の舞台です。物語は特別な力を持つヒロインが学園に入り五人の攻略対象と恋に落ちるというありきたりなストーリーです。
そして問題が一つ私の役はヒロインの邪魔をする悪役令嬢なのです。
プリシアは攻略対象を慕う令嬢で攻略対象と仲良くなるヒロインに嫉妬して嫌がらせや果てにはヒロインを殺そうとして返り打ちに合うのです。
はいもう此処まで来れば分かりますね、そうです最後には断罪されて処刑や国外追放と悲惨な目に合うのです。プレイしていた側からすればざまぁとしか言えませんが本人からすれば堪ったものじゃありません。
ああ神様、私貴方に何か酷い事しましたか?
と、まあこんな感じで私は破滅フラグを回避しようと思いました。
しかし問題がもう一つそれは私が人見知りが激しいうえに引きこもりという事です。そこで私は考えました、ならばいっそのこと家に引きこもってしまえば良いと。幸い父は私に甘いので私は社交嫌いという事にして攻略対象と関わらない事にしました。まあ学園には必ず行かねばなりませんがそこでは必要以上に関わらなければいいはずです。
私は悠々自適な引きこもりライフの為に破滅エンドを回避して見せましょう。