第6話☆エレメンタル格差社会
魔法少女にプリティーなお友達はお約束。だが、そこにも、世知辛い社会の余波が……
ほわひー!
今日は豊作です! 道ばたで見つけたお金、なんと総額203円! コンビニの高級サケおにぎりが買えます! ジャンプして空中で1回転したいレベルです!
「あんた、いつもながらビンボーくさいわね」
むっ、そのムカつくツンドラ声はリア充魔法少女のぴりん★★
くっそー、またコイツわたしを馬鹿にしにきましたね★★
「何の用ですか」
「あんたに、見せてあげようと思って、ほら」
ん、何かちっちゃいドラゴンみたいないやドラゴンが、ぴりんの右肩に乗っています。それを、指さしてぴりんの奴は人を小馬鹿にするような笑顔を浮かべます。
「どう? 私のエレメンタルよ。光の竜のタックん。羨ましいでしょ」
こいつ、猫型ロボットに出てくる金持の御曹司みたいな自慢話をはじめました★★ようはこれが目的で私に近づいたのかこのクソ野郎め★★
「あんたは、召喚しないの?」
「うっ」
エレメンタルいわゆる精霊について説明しますね。
これは、魔法世界エンターライズの魔法つかい、魔法少女が召喚もとい生み出す事ができる使い魔のようなもので、一種のペットでありパートナーです。召喚には色々な「素材」を必要になり、その素材と本人の資質によって呼び出されるエレメンタルの姿は変わります。炎の力が強い魔法使いはサラマンダーみたいなトカゲになりやすかったり、水属性なら魚みたいな姿になりやすかったりする傾向わけですが、100人いれば100通りで、まったく同じものが産み出されることはありません。
生み出せば、戦闘時のサポートを任せられたり、パシリに使ったり、囮にしたりと非常に役立つ便利な存在なのです☆
ただ、このエレメンタルは一生で1人1体しか召喚できません★これは高位の魔法使いでも同じです。生涯において1体で、死滅したら二度と召喚できないんです★★そのため、わたしは召喚をためらっているわけです★★
「あー、そっか、素材が手に入らないのか。そうよねー、ラムダ樹の枝とか、虹閠石とかとっても高価だしね。この日本にはそんな素材探しても無いだろうし」
「むっかー!」
「それに、あんたのようなのが召喚したら貧乏神とか餓鬼とか出てきそうだし」
「そんなの出てきませんっ!」
「それなら、呼んでみなさいな。マリアージュ様の召喚したベリオスネイルみたいな究極のエレメンタルを。ま、貧乏人には無理でしょうけど」
伝説の大魔道士マリアージュ様(~992)は、世界を魔王「イネイブラー」から救ったエンターライズでもトップクラスに有名な方です☆その相棒はとても美しい白亜の神霊竜ベリオスネイル☆未だエンターライズの歴史上最強と言われるエレメンタルなのです☆
そのレベルのヤツを幼い魔法少女のわたしがいきなり召喚するなんて出来るわけがないでしょ(`ω´)未来から猫型のロボットが来て何かスゴい道具出してくれなきゃ無理(`ω´)無茶苦茶なフリをするんじゃねーですこのクソリア充爆発しろ(`ω´)
「あー、怒った怒った。んじゃ、これから学校のみんなでボーリング行ってくるから、せいぜい頑張りなさいなあははは!」
むきー! まだやると言ってないのに何て捨てゼリフ吐いて去ってくですかあんにゃろめ! チクチョー! わかりましたよ! わかりました! はるなの秘められし魔力を思い知らせてやるです↗↗☆☆↗↗
そうです。私にはとっておきの魔法の杖があるのです! どうやって手に入れたかは企業秘密ですが、私の杖はこの世にひとつしかない伝説の杖! この前だって禁断の魔法を(運良く)使えたスゴいヤツなんです。これを使えば錬金術も(多分)可能です☆☆ふっふっふ見てろよあの青髪下衆野郎にはるなの生み出した究極最強絶対無敵のエレメンタルを見せてやるです☆☆☆☆
さあ、素材を集めるよ!
もちろんさっきの203円は使いません(°∀°)0円であんなドラゴンかるく超えちゃいますクソスネぴりんの鼻の穴をグイッ開かしたるのですサブちゃんなみにしたるのですフンフンフンフンフフンフン(。・_・。)ノ
まずは、この「デラックスはるなハウスⅢ(段ボール製)」のある長良川河川敷で探しましょう。川原には色んなものが落ちているものです。このへんで、安土桃山時代には戦もあったみたいだし、亡くなった武士の怨念の残燭が物に宿っている可能性があります(★皿★)
相変わらずごつごつした足場です☆☆この忠節橋から大縄場大橋にかけての河原の石は、下流なのでみんな程よい丸みを帯びています。夏は高熱でこの石たちがチンチンアチアチになるので裸足では歩くのキビシーですよ★★ただ、水虫の人は、このアツアツになった石に足を乗っけておくと直せるらしいですよ☆☆おばあちゃんの知恵袋的なやつです(°∀°)
にしても結構色んなものが落ちてますね~
空き缶とかコンビニ袋とか花火のゴミ捨てちゃいけないやつもありますが、薄い色した流木なんかもあります★★長い流木はなかなか味わい深く魔法使いの杖にも適してるんですよ★★実際に愛用するおじいちゃんもいるようです★★
そうですね~ひとまず、この真っ白で綺麗な木の枝を素材の1つにしようかな☆☆☆意外と潜在魔力とかありそうだし☆☆☆
お、あそこには数珠が落ちてます★★お墓参りの帰りに橋の上から落としたんでしょうか? 罰当たりですがなかなか面白い素材です★★ふふん、あそこにはケロポンの人形も落ちてますね~キーホルダーから取れたのか頭に付け根があります☆☆ゲットゲット☆☆
ふー、なかなか収穫ありました。
同じ場所は霊質が片寄りやすいので他のところに行きましょう。何かお腹すいたしやっぱりコンビニがいいですね☆☆
~~歩行すること約20分~~
みんな知ってる町のほっこりステーション、サンクルKにやって来ましたパチパチパチ~
ここは、食材探しに最適な場所です。なぜなら、ゴミ箱が外にあるから☆最近のコンビニは店の中にゴミ箱があることが増えたけど、ここはまだ外にゴミ箱があるんです。まあ、カフェスペースのそばならこっそり漁れるんですが、やっぱり外の方が楽ですね~時代遅れありがたやありがたや~
さ、まずは3つのゴミ箱のうち燃えるゴミの中身を漁るよ。はるなは、ある程度「吸着魔法」も使えるのでゴミ箱の中に手を入れれば、その掌に磁力を発生させて物を吸い付かせることができるんだ~あんまり重いものは無理だけどそこそこくっつくよ☆☆じゃ、実践するね☆☆
ジジジ
ジジジ
ピタッ
おっ、なかなかの手応えです。
これは~お~「月刊マルジン」じゃないですか。有名な青年向けマンガ雑誌です。最近は「磐梯山」と「エロトロール」がアニメ化されて人気なんだよ☆☆結構立ち読みしてるので内容も熟知してます。わたし的には特に「磐梯山」が面白いのでオススメですね~先週までやってた「くされ正彦対峙篇」は神レベルだったし☆☆まさか、ヒロインくらすね貴理子が死ぬとは思いませんでしたよネタバレごめんなさい☆☆
それはさておき、んーこれ意外と使えるかま知れません。なぜかと言いますと、本と言うものは昔から魔力や霊力を持ちやすいのです☆☆書き手の魂が籠っていることが理由になることもありますが、文章や絵そのものが魔法回路になったり精霊契約の触媒になった例もあります。私の故郷で有名なのは約2000年前に存在した「エギラ禁書」ですね~何とか焼却できたんですが、危うく世界まるごと魔王の手に落ちるところだったそうです。うわ、なんかいつになくまともな解説してしまいましたね☆☆はるな、結構物知りなんですよ☆☆
マンガ本を使うとか天才的な発送です。じゃ、次☆☆
ジジジ
ジジジ
ピトッ
グチャア
わ、誰ですか! チョコモナカを丸ごと捨てたもったいないさんは!? 手がべとべとになっちゅいました。仕方ないので舐めます☆☆あまーい☆☆
少し元気が出ました! よし、このチョコモナカのモナカの部分も素材にしましょう!
~それから15分後~
うひぃ、ずいぶん集まりましたね☆☆
かんびんコーナーでは模様が魔印のようなモンスターなドリンクの缶を手にいれましたし、手袋のような装備品も見つかりました。これは、ドラスティックなエレメンタルが出来そうです☆☆☆☆ただ、もう1つ何かが欲しいですね☆☆☆☆
どこかに落ちていないかな☆~
どこかに落ちていないでしょうか☆~
はほわ?
見つけたです!
駐車場の片すみに落ちてる青く透き通った小さな青い玉。
これは、まさか月刊ヌーで言ってた宇宙から来た石「マリッジストーン」では!? すごいものを見つけてしまいました!!
※尚、実は只のBB弾です。
これはシンパシーをビンビン感じるよ☆☆
これがあれば、異世界の暴獣すら召喚できそう☆なんだかワクワクしてきました(°∀°)
さあ、河原に戻っていよいよ召喚の儀式をはじめるよ☆ミ
「さあ、私の要請に答えて! スティーマ・ラータ!」
空間に歪が起き、現れるは、深き銅色の古びた杖。
どーやって手に入れたかは伏せますが、私の秘密兵器です。
杖を手に取ると、いつも持ってるクソ使かえない安物の魔法の杖は地面にポイします。ま、ひのきの棒と同レベルだし。
そして、次にスティーマラータの先っぽの尖った方を使って砂地に魔方陣を描きます。ちなみに今回は近所の高校が使ってるグラウンドを使ってるよ☆☆今日は学校休みだし多分だれも来ません☆☆いちおう結界は張るけどね☆☆
魔方陣のかたちは、蠍にしました。これも、召喚されるエレメンタルに影響します。エンターライズでは五芒星がいちばんメジャーな魔方陣なんだけど、エレメンタルもベタで平凡陳腐なものになりやすいらしいし、羊の魔方陣だと治癒能力に長けるけど攻撃性能の低いエレメンタルになりやすいらしいし、火とか水の魔方陣はその属性に特化したエレメンタルになって長所と弱点が極端になってピーキーな性能になりやすいです。その点において、この蠍の紋章は、一撃必殺の攻撃を得意とするエレメンタルか或いは毒やなにかでじわじわと相手をいたぶる特殊なエレメンタルが召喚されやすく、また際立った弱点を持ちにくいのが特徴です。有名どころの精獣王ベリオスネイルは獅子の紋章で、海真星リヴォルノンは魚の紋章から呼び出されたそうです。ですが、私はそれをなぞらえるのはカッコ悪いって思うので、あえてあまり成果の出ていないマイナーな蠍の紋章で最強のエレメンタルを召喚するのであります☆☆ロッケンロール☆☆
魔方陣が完成したので、集めた素材を魔方陣の真ん中に固めてぽいぽい置くと、魔方陣の外側に立って(★★内側に立つと自分も召喚素材になって消えます★★)杖のとがった方を地面に突き刺します。そして、魔法契約の言葉を唱えますが、これも何種類かあって召喚に影響します。私は「大智三唱」を唱えます。これも、マニアしか選ばないチョイスですシャゲナベイベー☆☆
「大いなる大宇宙の尊よ。我と、三の絆を交わしたまえ。それは空、それは色魂、それは背反功徳。私は、その首念をもってその最なる裁定を必ずや迎え入れよう。出よ、我と運命を共にする勇壮なる精霊!!」
唱え終わると、魔方陣からピカッと光が放たれ、ぶわっと煙が沸き起こりました。吹き付ける魔力、煙のなかを走る蒼い雷、これは期待大です! ガチャで言えばSRとか☆5鯖が出るレベルです!
シュウウゥ
煙が少しづつ引きます。一体どんなエレメンタルが呼び出されたのでしょうか☆☆カッコいい魔術か、それとも絶プリティーなマスコット的うさぎか、それともそれとも冥府の骨犬みたいなアンデットモンスターか☆☆
「おー、こんにちは」
は、はひ!?
何かな、このだらしない声は。
「君がオイラを呼んだんだね」
え、
え、
ええええええええええおああああああ!? なんじゃこいつわああああああ!?
「驚いたかい?」
驚くに決まってるじゃないですか★★★★
だって、だってさー、どうみても、サツマイモだし★★サツマイモに目鼻口がついてるだけだしマジフザケンナボケ★★
「なんだよー、機嫌悪そうだなあ」
当たり前じゃ★★スライムとかゴブリン召喚されるよりヤバイわツーかなんやねんその(・3・)って表情は★★ホンマイラつくけどとりあえず何者なのか聞くしかありません★★
「あんた、名前は?」
「おー、オイラは焼き芋の精霊ヘコキイモさ!」
ドッキャーーーーーン!! なんですかその絶望的なネーミングは!? よく自信満々に言えるよねそれ(;´д`)それになに? さつまいもじゃなくて焼き芋!? なんで焼いたんや★★★★蠍の紋章の影響は(゜Д゜≡゜Д゜)?★★▲★ロックの神さまお答えてください★◎★J×↘
「なんだよー何かオイラ悪いことしたかい?」
「……あのー、単刀直入に聞きますけど、あんた強いんですか? 特技は?」
「ああ~オイラの特技は、とっても臭いオナラを出すことだよ」
ぐはっ( ̄□ ̄;)それ、普通の人間でも出来るよね★★★★
魔法少女の相方に相応しくなさすぎるだろ★★★★
「そんなにガッカリするなよ。まだ出会って間もないじゃないか」
「元の世界に帰ってください」
「えーっ、オイラの何がいけないんだよ?」
全部ダメだよ。
ただの臭い屁をこくイモですよね、むしろ何を評価しろと言うのですか★★★★
「これから長い付き合いになるんだから仲良くしようぜ!」
「ううぅ」
ひどい、ひどすぎです★★あんまりすぎるだろ★★★★神さまなんでや★★★★とにかく、これは、恥ずかしくてとてもじゃないけどぴりん見せられません★★★★さっさと、隠れ……ん、この気配……まさか……
「あはは! あんた天才だわ」
「げぇっ、ぴりん!?」
「くっそーバレたかなぜココにって顔マジでウケるー。さっきからずっと見てたんだけど召喚に夢中で気づかなかったようね」
「こっそりストーカーとは悪質ですね!」
「こっそりって言うか、大々的に召喚してたら気付くにきまってるでしょ」
「ぐうう」
「それにしても、まさかイモを召喚するなんて。しかも、名前がヘコなんだっけ? ぷぷぷ」
悔しい悔しすぎる。こうなったら、このヘコキイモに一矢報いてもらうしかありません!
「ご主人様、お友達ですか?」
「この状況でよくそう解釈できるよね」
「ま、喧嘩するほど仲が良いって言うじゃん」
「喧嘩って言うより、イジられてるんですよ主にあんたのせいで」
「うわあ、責任転嫁ですか。情けないですねーご主人様」
「コイツ、軽くディスりましたね。もー、このクソイモ。さっさとあの子に力を見せてやるです!」
「正式名で言ってください」
「もー! へ、ヘコキイモ、あんたをバカにしたバカヤロウぴりんにお仕置きしてやるです!」
「りょうかい~」
プゥー
ヘコキイモは、その場で屁をこきました。わたしのいる場所で、ってか、くっさー!! 何食ったかしらんけど、劇的にくさいです!! 鼻が曲がるウギャー!!
「な、なによこれー!? はるな、早くなんとかしてよ!! 服に臭いがついちゃうよ~!!」
ふ、ふふふ、結構効果ありますねこれ★★★★
見た目のインパクトは薄いですがバカ女を困らすには十分です。ふふふ、苦しむがよい!
「もー、タックん! あのサツマイモに仕返ししなさい」
「ガウー」
お、反撃してきますか。
はるなのヘコキイモに自分のエレメンタルで反撃してきますか★★ドラゴンが、しっぽでえいって、ヘコキイモをはたきますか★★★★
「ぐぎゃーー!」
ほえ?
あの。
あのー。
一撃で粉々に砕けたんですけど。
「あ、やりすぎた」
いや、ぴりん、やりすぎたっていうか、ヘコキイモが異様に脆かっただけです。ってか、耐久力まで焼き芋なみとかかドンだけ弱いんですか( ̄□ ̄;)
「ごめんね。流石に悪いことしたわ」
「……もう、いいです」
こうして、はるなの相棒のエレメンタルは、またたく間にあの世へと旅立ったのでした★★★★
~~~~
後日、ぴりんがコンビニのスイーツをお詫びとして持ってきてくれましたが、はるなのエレメンタルは300円くらいの価値しかないと言われているみたいで何だかモヤモヤします。ま、サツマイモだったしそんなもんかとも思……いませんよチックショー!!