第4話☆リア充なライバルはお星さまになってほしいな(いろんな意味で)
魔法少女にライバルはつきもの。
はるなもそれに漏れませんが。漏らします。
やっと魔法少女らしい活躍が見られるか否か……
今日は日本晴れです。雲ひとつ無いすっきりとした青空。はるなのこころもハレバレしてます☆対してお腹はペコペコグーグーしてます☆
「ねえ……」
なんか、そんな空の色によく似た髪の色をした女の子が話しかけてきました。浅葱色のワンピースの服がよく似合う女の子です☆ もしかして、カサンドラの呪いを打ち破るなんて、この子、お友達になれるかも……今日はいい日です☆
「なに、普段から惜し気もなく魔法少女の格好してんのよ! バカなの!?」
あー、前言撤回ーこいつクソ野郎ですね★私、芹沢はるなは好きでこの格好のまま生活してるわけじゃないんです。単純に普段着を買うお金が無いだけです。この「オルタナティブ・エンハンスド・ドレス」はそー簡単に汚れたり破れたりしない凄い服なのでいつも着てるわけです☆
「つーか、めっちゃ臭いし!? 何なのこの干しイカを腐らせたみたいな匂いは!?」
「あなた失礼ですね! 単純にずっとお風呂に入ってないし服を洗って無いだけです!」
「ちょ……それ、何日くらいよ!?」
「ざっと四か月くらいかな」
「きゃー!! 近寄んな!!」
わわわわわっとこの青髪女は私から距離を置きました。ひどいです……傷つきます。
「あんた、どういうヤバい生活してんのよ!?」
「あっちの橋の下に住んでます!」
「まさか……あの汚ない段ボールハウスで生活してんの!? しんっじられない!!」
「つーか、あんた誰なんですか!? なにさまですか!? 会ったら途端に人の事を汚いだのくさいだのイタいだの言いくさって!!」
「私? あんたみたいなのに名乗るのもなんだけど一応教えといてあげるわ。私はぴりん。ぴりん=LΓ(えるがんま)=木皿儀!! このへんじゃ結構有名な魔法少女なんだけどな!」
あー、そういえば、諸般の事情で私以外にもこの日本の47都道府県に魔法少女がいっぱいやってきてそれぞれの県に代表者を置いて監視してるとか風の便りで聞いたけど、こいつもその魔法少女の1人ってわけですか。
「どう、思い出したかしら? この岐阜県を代表する魔法少女である、この私を!」
「あー、ごめんなさい知りません。大体東京や大阪とか首都圏ならまだしも地図でどこか分からない人多数のド田舎の代表って、あんま自慢することでも無いと思うんだけどなー実に器が小さいですね」
「うっさいわこのド不潔バカチビ!!」
「むかー!! 不潔とバカはともかくチビだけは聞き捨てならないです!!」
「何でそこだけ気にすんのよ変な奴。しゃあ、どんどん言ってあげようかなーチービチービチンチクリンのミクロちびすけー!!」
こいつマジ低俗です★言ってることが小学生レベルですねと齢11歳、小学生5年生相当の私が言っちゃいましたテヘッ☆彡
「何よ? もう言い返せないのー? ダっさーい」
「これ以上言い合ってもばからしいからやめただけですよ。そっちこそ大人気ないです」
「私、まだ14歳だしー子供だしー」
と、こちらに向けてアッカンベーをしてきました。なるほど「厨坊」というのはこういう奴のことを言うのですね理解いたしました★
「……そーですか。じゃ、他の子みたいにどっかの女の子の家に居候して学校かよってたりするのかなー? うらやましーですねー」
と、ニヒルな感じで言ってみました★前も話したかもしれないけど、通常魔法少女がこの世界で暮らすときは、かならず同じくらいの歳の比較的裕福な女の子の家に居候することになっているのです。理由単純明快、安全だからです。例外はあるけど大体は安定した財力を持ってるしご両親もおかしな人は少ないから身の危険が極めて少なくてもってこいなんだよね☆昔、ロリコンのおっさんの家に居候してヤバい事になった魔法少女がいたらしいからそのへんはとーっても厳しくなったんだ★★でも、はるなは正直誰でもいいので住まわせてほしいです☆
「うん、いつもマサトと一緒に学校通ってるよ。羨ましいでしょ?」
……ほへ……? い、今なんと言いましたか?
「まさと? 珍しい名前の女の子ですね」
「なにいってんの、マサトは男の子だよ」
お、あ、おとこ、オトコノコですとーーーー!?
「で、でも魔法少女は女の子の……」
「あんた知らないの? 特例があるのよ。<魔法審議会>で審査し、まっとうな人間であると判断され許可された人間なら、女の子じゃなくても同居を許される〈マジカルリニエンシー制度〉を使ったのよ。ま、ちょっと手数料がかかるんだけど、うちは魔法使いの名門家庭だからそれくらいよゆーで払えたんだよねー」
めぎゃめぎゃぎゃぎゃぎゃ!?
「それで、家は広くないから雅人の部屋にお邪魔させてもらってるんだけど、たまにドキドキするんだよねーお風呂上がりとかたまに上半身裸のまま部屋に入ってきたりしてさ」
プッギャーー! なんて骨体そんなバナナこんばんワインおはヨーグルトヒーコラヒーコラバヒンバヒン併せてブグバクミブクバブガラピーガラピーやぶら工事可児小路パーイポパイホのグーリンタイグーリンタイのペンヘロピーペンペロナーの
「長距離列車ギャラクシーエクスプレスぶはっ!!」
「あー、なんだか憤死しちゃいそうって顔だねー」
「ウーッキン!」
「ごめんねーすごいリア充なのよ私。貧乏性ちびすけには刺激が強すぎたかなー」
くっそー言いたい放題言いやがってくぉのクソヴァカ野郎がぁマジ殺……って、羅刹神様がお怒りの様子です。だんじて私が思ったんじゃないですよ今のはあらくれ者の羅刹神ギュラバ様の言葉なんです……ああギュラバ様、目の前のふとどきサイテー魔法少女に天罰をあたえてくださいませっ!
ピシャーン!!
うわ、まじで雷が落ちました!! ギリギリよけられたけど、願いって叶うものなんだね。こんなの初めてですブイ☆
「今のは〈雷魔法〉……誰っ!?」
「わたしじゃないですよー決してはるなの仕業じゃありません!」
「重ねて否定するあたり胡散臭いけど、あんたじゃなさそうね……魔力残跡からして、そっちか!!」
ぴりんが上空を見たので私も一緒に見ます! いましたいました!! 神様……じゃなくて、あれはエグザイルビースト略して〈EB〉ですね! 真っ黒な体、背中には大きな羽、クチバシ。いわゆるカラスみたいな魔物です。見た目はいろんなタイプがいるんだけど、かならず体のどこかに♭があるんだよ。それが他のモンスターと違うところ。こいつらは次元を移動していろんなとこで悪さするんだ。理由は今のところわかってません★魔法少女がこの世界にくる理由のひとつが、実はこのEBを退治して世の中の平和を守ることなんだよね! はるなはビンボーだからそれどころじゃないけど☆
「よくもやってくれたわね! マジカルチェンジ!! オルタナティブモード!!」
おきまりの合い言葉でぴりんは変身します。光に包まれるからどーやって着替えるのかは他の人には見えないんですけど、とりあえずいっぺん服を全部脱がされて丸裸になります☆見えてないのはわかってるけどちょっと恥ずかしいよ(ヤガイロシュツが大好きな変態さんはむしろこの瞬間がたまらないそうです)☆彡
光が収まると、ちょっとお姫様感漂う衣装に身を包み、髪の毛が少し割増しした水色ツインテールリア充女はビシッと両手をクロスさせてどっかのバッタ改造人間みたいなポーズをを決めます。一瞬ちょっとかっこいいとか思ってしまった自分が悔しいったらないよ★
「EB、お前の悪さもここまでよ! あの世でぐーぐーおネンネしなさい!!」
その決めゼリフはちょっとイモいなと思いました。ぐーぐーっていうフレーズが似合うのは、このはるなくらいのものです☆
「クワークワー」
敵は見た目だけじゃなく、鳴き声までカラスっぽいです。もうそれだけで負けフラグがたっている気がするけど、このリア充アバズレ女には是非とも負けてほしいから、こっそりあのカラスを応援することにするよ☆ガンバれ鳥さん☆
「たああ!」
リア充は、空高くピシューと煙を立てて飛び上がりました。魔法少女にも色々いて、ホウキとか道具が無いと飛べない子と何も使わなくても飛べるタイプの子がいるのですが、どうやら後者のようです。通り過ぎたトコにはひこうき雲みたいなのが跡として残り、キラキラ星みたいな粒子が輝いているのがやたらカッコよくて腹立たしいです☆ちなみに、はるなは前者でも後者でもなく空を飛ぶことがまったくできません★だから3.0はある自慢の視力と猫並みの聴力で戦いを実況するくらいしかできることがありません。なまら悔しいです☆彡
空中でリア充が悪い鳥さんの至近距離まで近づくと、リア充は標的めがけて思いっきりパンチとキックを連発します。はるなの分析「ハルナリサーチ」によると、どうもこの子は接近戦を得意とするスピードタイプの魔法少女のようですねー動きと手数で圧倒して敵に反撃のスキを与えない、押しの強さはあるけど、押し切れなかった場合が問題ですね。
「クワー!」
「しぶといわね!!」
こんな感じで、相手がタフだったりするとバワー不足が露呈します☆鳥さん流石です☆
「こんのー!! とっととくたばれ、<シューティングスター・キック>!!」
もう必殺技をだすなんて節操ないですね。よほどヨユーないとみえます。ただ、光を纏った三角げりは格好良いです畜生☆
「クワギャー!」
「どう? これぞ私の十八番!!」
「クワー!!」
「え、うそ!? これを食らって倒れないですって!!」
鳥さんザコ臭がただよっつてる割にタフです! プロボクサーでこんなタフな人いるよね。殴られても殴られても12ラウンドまで持っていくタイプの……ところで、ここでリア厨が負けるとどうなるのかな? EBは魔力を持つ者、魔法少女を優先的に狙う性質があるから……つまり、次ははるなが狙われますね! 前言撤回、頑張れ負けるなぴーりん! 正義のヒロインらしくとっちめてください!
「きゃあっ!?」
あわわ、鳥さんが翼をばたつかせて起こした竜巻で、吹き飛ばされ、ドシャン地面に叩きつけられちゃいました……応援虚しく押されてます★ただ、これくらいでは死なないのが魔法少女、なのです☆
「くうっ!?」
魔力の力で衝撃を吸収したんだね。フツーの人間ならあの世行きですけど、割と軽傷ですんだようです。とりあえず、心配してるような感じを出してみるよ☆
「ぴりん!!」
「さっき会ったばっかなのに名前で呼ばないでよね……」
「大丈夫!?」
「なわけないでしょ。今まで戦ったなかでは最強かな……あんた、名前は?」
「はるな、だよ!」
「そ、ダサい名前ね。じゃ、とっととどこかに逃げなさいよ」
「はに!?」
もしかしてこいつ、ピンチになるとスゲー良い奴になるタイプの子なのかな☆マンガアニメによくいるよねこーいうの☆
「ほら、あんたみたいな足手まといがいたら戦いにくいでしょ? さっさとどっか行け!」
足手まといとは図星感があってプチ腹立ちますが、もはや絶対本心じゃないこと間違いナシのナショナルです☆いいトコ持ってかれそうです☆こうなると、私だって意地を見せなきゃなりません。仲間のピンチを助けるのが魔法少女です☆流石にここで逃げるとリア充にいいとこ全部持ってかれちゃうのは悔しすぎるって言うのも無いといえばあるけどね☆彡
「何してんのよ、ドンガメ!」
「わたしは、かめさんじゃないです! 魔法少女ですよっ!」
「あんた……」
わたしは悪い鳥さんに向けて右手の人差し指と中指と薬指を突き出します。そして、
「火の精霊よ! その力を我が元に集わせ炎弾となりて眼前の敵を焼き尽くせ! フレイムトーチ・トリプラー!」
3つのメラメラした火の玉が、とりさん目がけてビューとミサイルみたいに飛んでいきます。まともに当たれば焼き鳥になるかもしれません。今日の夕ごはん決定です☆
シュボッ
……あ、とりさんの羽バサバサして起こした風で火の玉全部消えちゃった★
「弱っ!! なによそのクソヘボい魔法!? 見た目同様ダメチビね!! もーさっさと家にかえんなさい!!」
「ここが私の家だもん!」
「あーそうだったわねめんどくさいがきんちょ!!」
「そっちだってまだ厨学生じゃん!! ちゅーぼーちゅうぼー!!」
年相応の喧嘩になりました☆ま、子供なんてこんなものですよ。問題は、
「クワー!!」
敵さんをまるっと無視してたことです★どうやらリアル挑発になっちゃったみたいで、鳥さんはこっち目がけて飛行機みたいな格好で滑降突撃してきました!! うわーカッコーじゃなくてケッコーじゃなくてスゴく怖いですーー!!
「こんのー<スターライト・ナックル>!!」
ぴりんはやっぱり近接攻撃、光りまとったグーパンチをとりさんに向けて放ちますが、やっぱりパワー不足なのかひるむことなくむしろカウンターの蹴りをかましてぴりんを弾き飛ばしました。
「つぁっ!?」
魔法少女の頑丈な服がちょっと破れました。ただの攻撃でこれほどとは、相当な強さです……飢え死によりはましかもしれないけどこのままだとホントこのとりさんにつつき殺されますね★なんとかしないと★
「あんた……もういい加減にげなさいって……このままだと両方あの世いきだよ?」
この期に及んで、そのヒロインセリフ言われるの悔しいでんすけど★
「やです」
「バカ!!」
「こうなれば、奥の手を使うまでです!」
「おくのて?」
「うん……スティーマ・ラータ!」
私は異次元から魔法の杖を呼び出します☆
「あんた、服は着替えないけど杖は隠してんのね……」
「普段は邪魔だもん」
「何をする気?」
「直感詠唱を使います」
「えっ!?」
説明するよ☆直感詠唱は、私みたいな杖使いタイプの魔法少女及び魔法使いだけが使えるもので、魔法の杖に大概封じられている古の記憶に直接意識をリンクさせてシンクロ状態にし、普段は使えない魔法を発動させるんだ! どんな魔法が飛び出すかはまさに神のみぞ知るものつまりほぼランダムで、発動した魔法によっては自爆して最悪の場合死にます★リンクに失敗して魔力が暴発して死ぬパターンもあるよ★とにかくとんでもなく超危険ハイリスクなんだ★
「あんた……ホントに、やるつもりなの」
「うん!」
「命知らずね。どーなっても知らないわよ?」
「覚悟の上です!」
「……ふん、ほんの少しだけど、あんたのこと見なおしたわ」
うわ、ついにわたしカッコいい発言しちゃいました☆ピースピース☆よーし、やっちゃうぞー!
杖を両手で持ちその先端をとりさんに向けるとぎゅっと目を閉じます。 まわりの雑踏から意識を断絶させて……この際中にとりさんに突かれないことを祈りつつ、感覚の潮流、脈打つ生命の鼓動を杖に集中します。からだじゅうに微電流のようなものがピリピリ走りだします。これが、杖に封じられし記憶との対話が始まった証。
聞こえてきます。
深遠なる古の声が。私にこう叫べと響きわたります……この魔法を使役しろと!!
「きましたっ!」
私は目をカッと開きます!! そして!!
「冥府の焔よ……その執怨を燃やし、現世の愚を引き摺り落とせ!! 灼熱地獄っ!!!」
「クワッ!?」
とりさんが、なんですかそれみたいな声を上げて間もなく、その足元から真っ黒な火柱が立ち上がりました☆ゴーッと言う音とともに、それは天を貫きます☆何か、魔法少女には似つかわしくない禍禍しい邪悪な感じがプンプンするけど、威力は申し分なさそうなのでよしとします☆ギャアアアアと言うとりさんの断末魔の声が聞こえるけど気にしない気にしない☆
シュウゥゥゥ
炎が竜のごとく天に昇り去ると、とりさんは焼き鳥どころか灰も残さず消え去り、いたところは真っ黒になって、凹んでいました。コンクリートも焦がすって我ながらとんでもない魔法を使ったと思いますテヘッ☆
「あんた今の……!」
と、いいながら、リア充なぴりんはわたしに近づいてきます。それにたいして腰に手を当ててどうだいスゴいだろ的に鼻を鳴らしてえらそうにしてみます☆実際それくらいの結果出したし。
「いくら直感詠唱だからって、伝説の禁断魔法を使うなんて思わなんて……あんた何なの?」
「え、きんだんまほう?」
「そう! あまりにも壮絶な威力と、使用者への多大なリスクを持つためエンターライズでは遥か昔に使用を禁じられた魔法……そのひとつが今の《プロミネンス・タルタロス》よ。使いこなせたのなんて伝説の暗黒魔術師ガウディ様くらいしかいなのに……」
うはー、なんか凄いことしちゃったみたいだね! もっと褒めてくださいっ☆称賛しろ☆
「ちょー、何二ヤニヤしてんのよ? 気持ち悪!!」
「えへへ〜」
直感詠唱で一度使った魔法は基本的にそれを使うだけの魔力ポテンシャルを持っていれば今後も使えます☆一度つかって、何ともなかったから、多分大丈夫ですね。いにしえの究極魔法をいきなり覚えるなんて流石わたし☆ピーク時のハンカチ王子さん並のもってる感です☆彡
「……まあ、助かったけどさあ」
「?」
「……言っとくけど、その魔法2度と使わない方がいいわよ!!」
「……ほぇ?」
うわ、なんですかその不吉な言い方は☆いやな予感がするよ☆
「その魔法、一時的に地獄の悪魔と契約して発動するヤツなんだけど、代償として一回使うごとに寿命が5年縮むらしいよ」
ぎゃっわーーーーーーー!!! なんですかそのハイリスクっぷりは!? 仮に100歳まで生きるとしてもたった20回弱使うだけではるなの人生全部無くなっちゃうよ★さっきは使わなきゃブッ殺されてたからそれよりはマシだけど、わたしの5年はもう帰ってきませんっていうかせめて1年くらいにまけてくれないかな悪魔さん★燃費悪すぎ★
このあと凹みまくったわたしを不憫に思ったのかお詫びのつもりなのかはわからないけど、ぴりんはコンビニのおにぎりを3つおごってくれました☆うれしいことはうれしいけど、よーく考えると私の5年分の人生が500円相当の価値しかないみたいと言ってるようにも見えるので何だかとっても複雑です★
……
……
……オボエ・テロヨ・オマエ・イツカ・地獄ニ・落トシテヤルカラナシャァァァァァァァ…………