第43話☆局長
はるながウラノーマに連れてこられたのは、秘密の魔法電脳空間「京都バース」だった。
ウラノーマ達はここで「魔法少女新撰組」として活動。
元々は仲間だったが離反したものが組織した「壬生狼新選組」の地球の神「キュベリオス」をその座から引きずり降ろさんとする野望を止めるために動いてた。
そして、はるなにも協力を求めたのだった。
「いやー、はるぴが遂に復活か! めでたいめでたい! 」
夏の空のような色をした髪を片方でっかいヘアピンで止めた高額ブルーダイヤダイヤモンドのような瞳を持つ端正な顔のやや大柄でむちむちした少女は、静かにしていればいいものを、酔っぱらいみたいなくだけた姿勢で座り込んでガハハとがさつに口を開けて笑います。
「はぐらかすなよな原田? どうせまた見回りサボってゲーセンでチャリンチャリンしてたんだろ?」
「えーやんか少しくらい。仕事の合間には息抜きも必要なんやで? キンちゃんがお堅すぎんねん」
「なーにが少しだよ。見回りのほうが息抜きになってるくせに!」
「おー、今の返しええやん! 座布団1枚!」
新見と毎度な感じのかけあいをする、このエセ大阪弁野郎の名前はユーシス=VERΛ(バーラムダ)=原田。多分新撰組の十番隊組長だった原田佐之助の魂を使った「煌魔の器」ですね☆だいぶん固有名詞に慣れてきました☆はるなね順応力を見よ☆
「もーハラっちとキンはマンザイ芸人にでもなったら良くね? エムワの1回戦くらいはいけるっしょ?」
「やだね。ウチはお笑いは見る専やねん。大体1回戦突破したかてゼニは出んやろ? 優勝するまでネタ考えんのしんどいねん。あ、キンちゃんにやらせればいいんやけど」
「ビミョーに出る気あんのマジ3くさ~やっぱ人任せとか流石だし! あーし、そのツラヌキ感好きだわ!」
こっちの左右で赤水色のド派手なロングヘアのパリピギャルみたいなしゃべり方するのが、ふたば=VERΚ(バーカッパー)=斎藤さんだぞ☆
「つーか、あーし見まわりまくってチョーペコハラったしー! はるはるパイセンも激ペコっしょ? 」
「そうですね」
「やっぱ、そっしょ! コンセコンセ!」
こいつゥゼェ★とか言うわたしも似たようなことを言っていたようないないような★★いくらなんでも、こんなんじゃないよ、ね? ね?? はるなはウザくないよね?★★ね★★
「おまたせー! 今日ははるぴっぴが目覚めた記念で豪華にしてみました!」
おおぉ!! 絶妙な大きさで黄金色のめっちゃうまそうなエビフライが、この和室の食卓に運ばれてきました☆☆
「やったー! エビフライにマツタケごはんとか最高やん!!」
「遊んでたのに良く言えるよな! 少しは手伝ったらどうなんだよ?」
「いやいや、ウチみたいな料理ベタが手伝ったって足手まといになるだけで余計な時間がかかるだけやて! 素直にサナと副局長に任せとくのが一番! 食べるのがウチの仕事やねん!」
原田の言ってる子とはある意味正論のような気がしないでもない★こいつ自分に正直なヤツだなあ★
その後、昭和のレトロアイテムのような食卓には、プリン、お吸い物、マグロのカルパッチョなど、料理人が作ったようなラインナップが全員分並べられました。
「ウラやんって、こんなの作れるんだ。スゴいですね!」
「はるっぴもじいじも、魔法はすごいのに料理はさっぱりだったからね。炊事は私がやってたんだよ? あの頃も褒めてはくれてたけど、久しぶりに言われるとちょっと照れるなあ。あ、私だけじゃなくてサナも料理プロ級なんだよ!魚さばけるし、山菜やキノコの知識もすごいから食べられるものとかすぐわかるんだ!」
「へー、サバイバル能力高そうですね!」
「……お褒めにあずかり、ありがとうございます。さあさあ、遠慮しないで食べて食べて~」
「じゃあ遠慮無く、いただきまーす!」
気絶してる間はなに食べてたかわからないですが、腹ペコグーなので本能のままに割りばしをパカッと割り、一目散にエビフライをつまんでかぷりつきます☆☆
ジュワー
う、うぉぉ。なんやこの絶妙な油加減は!? 喉が潤わんばかりや!! しかもなんやこのサクサク軽快ながらも上品に揚がらはった崑崙山に積もる雪のような衣は!? そして、このプリっプリの海老は伊勢の神様のくださり物のように見事に調和して、しかし懐かしさまで感じる!! このエビフライと比べたら、山岡はんの鮎はカスや!!
「山岡はんの鮎はカスや!」同じことを口で言う原田☆
「いーや、マジホン土方っちとサナサナのメシバリクソうまいよね! 普段のごはんもクソウマーベラスンゴデリだし!」
「2人とも、悪のりしすぎ! ですよね、 局長 !」
キンタが私の方を向いてやれやれと言う顔をしました☆
局長。
そう、はるなは先程魔法少女新撰組のリーダーである「局長」に、半ば強引に就任させられたのでした。
あんな風にみんなに歓迎されて(大橋はわからんけど)、事情説明されてその上ウラノーマにお願いされたから(殺されるかもしれないので)断れないんですよね★おまけにこんな料理まで作ってもてなされたら、もう後には引けないんよ(-_-;)
「ぷはー、オレンジジュースうめー!」
「原田っちが飲むと何でも酒みたいになるよね」
「そりゃ、上機嫌にもなるでしょー? 今度の局長は近藤さんみたいなパワハラ鬼上司じゃないし」
「そだね! あーしも、あの元局長には激オコインプレバズーカモロシコだし!」
斎藤が怒ってるのも無理はありません☆
セレナ=VERα(バルファ)=近藤
魔法少女新撰組の初代局長にして、最古の「煌魔の器」。わたしに次ぐマリアージュ様の依代としての適正を持ち、非常に高い戦闘力を持つ最強の土属性魔法少女……だそうです★
彼女は、何を思ったのか、一部の「煌魔の器」を引き連れて離反。「壬生狼新選組」を設立。荒槌財閥のヒミツのわるーい計画「星王攘夷」ってのに加担するようになったそうです。まあ、あくまでもウラノーマから聞いたことなので全部その通りかはわからないですが☆つーか、このカルパッチョも美味しすぎるぞパクパク☆
「近藤さんは努力努力でストイックな人ですからね」
「唯一名前で呼ぶ権利があったはるぴ局長やキンちゃんは好かれてたからいいよ? ウチはもーもーバカ原田バカ原田て、まー怖い怖いおっかない人やったわ!」
「あの人は原田とは真逆だからな。訓練サボりまくってグータラしてた超怠け者は嫌われて当然だよ!」
「いやー、努力ってもんは人に見せるもんや無い。草葉の陰でやるもんやで? あんな堂々と見せびらかしたら、みんなビビって萎縮してまうやん。それにあんなふうにみんな同じような事ばっかりしとったら個性が伸びひん」
「ったく、いちいち言い訳がましいよなー余計な事を言わないサナさんをちょっとは見習いなよ?」
サナさんはキンタに視線を向けられても表情変えず、淡々と小さな口で五月豆を食べています★この感情の起伏の無さは、ある種人造人間みがあるともいう★ただ、戦いになるとすごく頼りになりそうですね☆
「いや、考えてみ? みんな静かになったらせっかくの豪華なごはんに添えるトークのドレッシング、スパイスが足らんくなるやろ? ガヤガヤやるからより食べもんは美味しくなるんや!」
「いやなんかうまく言ったかんじになってるけどさ、あーしやキンキンまで静かになる前提とかそれ詭弁じゃね?」
「まーとにかく、ウチはキャラ変しません! 以上!」
「うわ、ゴイマった! 開き直ったし!」
「まあまあ、ハラちゃんはムードメーカーだし、ここぞって時にやってくれるタイプだから!」
「副局長は、お優しいなあ」
ホント、あの冷酷非情な人斬りさんと同一人物とは思えないBラン高校の優等生みたいなキャラになりましたね~なんか修学旅行の夕飯のシーンみたいな和気あいあいだわ☆修学旅行に行ったことないみぞじホムンクルスが言うのもなんだけど☆
「にしても、これでやっとメナさんを助けに行けるんやな!」
「え、どなたですか?」
「え、局長メナさんのことも全く覚えてないんか!? あんな大切な人まで忘れるなんて、これは重症やな」
「一体、その人とはどのようなご関係で? ウラやんも知ってますよね?」
「まー、わかりやすく言えば、はるぴっぴのお母さんみたいな感じかな」
【超朗報】はるなママ存在した☆☆☆
「メナさんは、初期の煌魔の器で大先輩の魔法少女なんだけど、とっても優しくてかっこ良くて強いの! 私の剣術のお師匠さんでもあるんだ! セレナさんにすら怖じ気づかない強気なはるぴっびだったけど、メナさんにだけはデレデレでいつも甘えてたんだよ?」
「へー! それは、是非ともあってみたいです!」
「そうだね! だから、早く助けないとね!」
「あの、その、助けるってことは、メナさんは捕まっちゃってるんですか?」
「うん、近藤……セレナさんに誘拐されちゃったの」
「ウラやんの剣の先生っだけでスゴく強そうなのに? さらえちゃうもんなの?」
「セレナさんはむちゃくちゃ強いからね。しかも他の煌魔の器も引き連れてたから、流石のメナさんでもきびしかったんだ」
「でも、なんでメナさんだけ?」
「それはね、さっきも話した究極の魔法生命体【ハイパー・マン】を生み出すための素材にするにするためなんだ」
「えと、それは、ようは人体実験かなんかに使われちゃうって感じですか!?」
「そうだよ。ハイパー・マンの完成には、潜在能力の高い魔法少女の肉体が必要。だからメナさんは最適だったんだ」
【悲報】はるなママ超大ピンチ★★
「それは早く助けなきゃだめじゃないですか!!」
「そーだよね。もっと早くに助けに行きたかったけど、戦力的にはミブロの方が上だったから、はるっぴがいないと返り討ちになるのがオチだったんだよね」
「でも、ウラやんわたしより強くね?」
「そんなことないよ。それに、はるっぴの罪属性魔法は他に真似できない個性だから」
「うーん、そりゃそうですけど」
「あわてると事を仕損じるって、はるっぴ自身も言ってたし」
「わたしがか! んなら、仕方ありませんね」
「準備もあるから、作戦の決行は明後日にします。まず、今はたくさん食べて英気を養おうよ!」
「せやせや、話してばっかだとごはんが冷めちゃうからな!」
「お前は話しながらガツガツ食べてたろ」
「ははは! どーやウチマルチタスクはがっ!?」
サクッ
原田の頭に、大橋のクチバシがクリーンヒット!
明らかにワザとつついたよね☆☆ナイスおしおき☆☆
「いったー!? 今の大丈夫!? ウチのあたまに穴空いとらん? 当たったとこハゲとらん!?」
「クワッカッペッ」
「何すんねん大橋ぃ!!」
「カッカッツ」とほんわかした目をして笑う(?)と、エグザイルビーストはこちらに語り掛けます★
「さて、はるな様」
「なにか?」
「局長となられ、後の日に戦いにいよいよ参じますあなたに、ひとつ問いをいたしますが、よろしいでしょうか」
「ほ? なんのために? 」
「まあ、あなたの人となりを見る、心理テストのようなものですよ」
「はぁ、よくわかりませんがわかりました。どうぞ」
「はい。では問いましょう」無表情でこっちを見る大橋★こーいうとこ鳥です★
「あなたは、パンパンに水の入ったビニール袋を持ち運んでいます」
「ほへ?」
「もし、そのビニール袋に、跳ね返った石が当り穴が空いたとします。その時、はるな様、あなたならどうしますか? 水がこぼれないように、その穴を手で押さえますか? それとも、水をあきらめてこぼれるのを見守りますか?」
いや、急に哲学的禅問答とかやめてけれ★今の時点で考える事多くてパンクしそうなのにめんどくせー(-_-;)
「……うーん、その水が必要かにもよりますかね。ビニール袋の水を入れて持ってた理由がまずわからないので」
「クワッカッなるほど」
「どうなんです? 今の答え」
「クワックワッ」
おい、自分で振っといたくせに何で答えんのや大橋ぃ!!
「原田様は、どうでしょうか?」しかも他に振りやがった!
「ウチ、クイズ苦手やねん。考えるのめんどくさいやん? パス」
「クワッカッ、素直でよろしい。では、あなた方魔法少女新選組のこの先に幸のあらんことを」
「いや、他人事みたいにいってるけど、大橋もついてくるんやろ?」
「はい、勿論です」
「あの、ところで大橋くん」
「どうしましたか、はるなさん」
「今気づいたんですけど、そのクチバシだとご飯食べにくくないですか? 」
「クォコッ、心配してくださるのですか。ご安心ください。この通り」
「わ! はしを使わずににエビフライをクチバシついばんだ!」
「ちょ!? それ、ウチのごはんやん!! 何勝手に最後のなけなしの一尾を食べとんねん!!」
「原田さんは運動量の割りにカロリーを摂取すぎです。なのでこうして減らして差し上げたのです」
「いやいや! 思いっきり口つけたんが問題や! 何か唾液みたいなのがから揚げにかかってるんやけど!? きちゃなくない!?」
「クワワッ、ご安心ください。我々のような概念体は一種のスピリチュアルあるいはエクトプラズマーのようなものですので非常に衛生的なのです」
「へー、なら大丈夫……ってなるかー!!」
と、キレイにツッコミをいれた原田☆まったくこの鳥野郎は奇想天外で何を考えてるのかはわかりませんが、今日はこれ以上深く考えたくないので、ごはんの続きを食べましょう☆すまんな原田、鳥に食い散らかされた皿はいさぎよくあきらめて鳥の唐揚げは鳥に譲るがよい☆わたしのエビフライはもちろん差し上あげません☆☆
ところで、さっきから部屋に設置された大型テレビで放送禁止になって円盤化もサブスクにもなってない、よーつべでもすぐ消されて見られないまぼろしのアニメ「ひゅんひょい」がやってるんだけど、この京都バースのTVチャンネル事情はどうなってるんでしょうか? これは見逃せませんの☆ママの事はすっごく心配だけど、今は落ち着かねば☆落ち着かねば☆うわ! あの、伝説の「食べられるザメ」のシーンキタコレ☆☆あー、見れてよかったーこれは眼福だわ☆☆
~続く~
※※ふたばのギャル語通訳※※
ゴイマ→ゴーイングマイウェイの略
オコインプレバズーカモロシコ→超ムカつく
クソマーベラスンゴデリ→とてもおいしいデリシャス!
3くさ➝www