第42話☆水の星を睨(にら)む壬生狼(ミブロ)
ウラノーマからはるなの過去が語られた。
チート的な能力を持っていながら、それに自ら枷をつけ、来るべき魔王誕生の時のため自らの記憶を破壊し改ざんして地球に潜伏するというとんでもなく回りくどい策をとった。その真意ははるな本人にも解せるものではなかった。
全て話し合った後、ウラノーマは、はるなに耳かきをしてくれと迫る……!
「はにゃー、はるっぴの耳かきやっぱサイコーだにゃー!」
いきなり不肖の妹がネコみたいな声だして大変申し訳ありません★いま耳かきママ状態のはるなです★実は年齢が30代半ばなことも判明したため、実際母親になっていても不思議じゃないよなーって感じでかなりモヤってます★たくさんヤバイ事実か出てきたけど、意外とそういうとこ気になっちゃうんですよね~★
「ほんと、急に甘えんぼさんになりましたね」
「だって~、はるっぴっぴ大好きなんだもん! これからはずっと、仕事終わったらこうしてもらうんだ!」
「あのさー、耳かきってほんとはあんまりしない方がいいんですよ? しかもそんな頻繁にやったら耳の中が炎症をおこしちゃいますよ?」
「おー、知恵袋! でも、すっごく気持ちいいし、はるっぴのテクニックならぜーったいキズとかつかせないし大丈夫だって!」
「はー、まったく」
ベッタベタに信用されてますね☆まあ、こちらも耳かき棒が手にフィットしまくってるし、想像したよりウラノーマがぷにぷにしているのでまんざらイヤってわけでもないですけど、自分より大きい子のひざまくらはちょっと重たい☆☆
☆かきかき☆
☆かきかき☆
☆かきかきかき☆
☆ひゅんひゅんひゅん☆
「ふー、こんなもんで、いいですよね? つーかあんまり耳くそたまって無いですよ?」
「ほんとに?」
「いや、耳くそ付いたティッシュを覗かない! 魔法少女にあるまじきバッちい行為ですよ!?」
「いやー、自分でもやったときも、つい見ちゃうんだよね! どんなのが出たかで一喜一憂するのも耳かきの醍醐味じゃん?」
「まあ、完全には否定できないですけどね。においかぐヤツもいますから」
「あー、岡にぃみたいな」
「誰ですかそれ? まあ、鼻くそほじりそうなあだ名ですけど」
「あはは、あながち間違ってないと思う! さて、お耳のお掃除も終わったし、そろそろみんなのところにいきますか!」
「みんな?」
「そ、【魔法少女新撰組】のメンバーだよ! 細かい事情は自己紹介のあと、みんなのいるとこで話すね!」
「お、おう」
いきなり謎の団体名まで出されてさらにワケわからん状態ですが、ついていくしかあるまい★
たぶん、私達に新撰組の魂使われてるからそんな名前にしたんやろな★
「どう? なかなかリアルでしょ?」
部屋を出て、一本道の渡り廊下を歩いていきます。部屋もそうですが、全体的に和風な造りをしています☆窓の外には砂利道と門みたいなものが見え、普通の家じゃない感じです☆
「もしかして、ここ、お寺ですか?」
「あ、わかる? そーだよ! ここは【NIC本願寺】、京都にある西本願寺をモデルにしてるんだ! 元の新撰組も、あのお寺を拠点としてた事があるんだよね! 豆知識入りましたー!」
「屯所ですか、ところでNICって何の略ですかウラやん」
「Network Interfaceⅾ Center(ネットワーク・インターフェースド・センター)の略だったはず! さてさてみんな本堂のへんにいてくれるといいんだけどね……おー、いたいた!」
阿弥陀如来像などが置いてある、畳敷きのちょっぴり荘厳な部屋にたどり着くと、そこにはろうそくがゆらゆらと赤く燃えているだけで誰もいませんでした☆しかし、そこから見える屋外には、ふたつの人影があります☆
「みんなー! はるっぴが起きたよー!」
爽やかに外に向かって手を振るウラやん。
それに気づくと2人は、それぞれのスピードで私達のところに集まってきました。そして、いかにも新撰組なはっぴを来た金髪の男子が嬉しそうに口を開きます☆
「姉さん! 遂にはるなさんが目覚めたんスね!」
「うん、この通り」
「いやー、良かったっス! 姉さん、はるなさんが眠ってる間ずーっと、はるっぴが死んじゃったらどーしよーどーしよーってそわそわ心配しまくってたっスから」
「もー、キンタったら! はるっぴの前でそういうこと言わないでよね!」
「それはすいませんでした! とにかく、またはるなさんの勇姿を見られることになるなんて光栄っス!」
「いや、あなたは誰です?」
「え、お忘れですか?」
「あー、コホン」ウラノーマがかわいく咳をします。
「みんなにあらかじめ言っとくけど、はるっぴはいま記憶喪失なの。だからまず自己紹介をお願いします!」
「あ、そうなんスか! わかったっス! まず、オイラは新見=VerΛ(ばーらむだ)=キンタと申します! はるなさんよりは後に生まれたので後輩っス! よろしくお願いします!」そして深々と一礼☆
「君も(煌魔の器)なのですか?」
「はい! 実力的にははるなさんには遠く及びませんが!」
いや、魔法少女新撰組とか言っていきなり男の子なんだけど☆あーいや、今は多様性の時代だからそういう考えはアレだね☆気持ちが大事だよね☆それは置いといて、リアルに「オイラ~ッス」な弟分ってはじめて……いや、あのホストも似たようなもんだったか☆
「私は、武田=VerΛ(ばーらむだ)=サナです。よろしくお願いします」
もう一人の、淡白な感じで定型文みたいなと自己紹介をしてきたのは右側メカクレ系の女の子☆いわゆる感情見せないミステリアス系ですね☆
「サナちんは年下だけど頼りになるからね!」
「姉さん、それじゃあ同世代のオイラは頼りにならないってことっスか!?」
「あはは、そんなことないそんなことない! キンタもここまで頑張ってくれましたよ!」
「ホントにそう思ってるッスか?」
「ほんとほんと!」
「もー、調子が良いんスから」
「ところで大橋くんは?」
「あー、たぶんその辺に」
『はいはい、おりますとも』
お堂の北側から、声がしました☆
そして、キイキイと木製のの床を軋ませて近づいてくる者があります。
「クワックワッ、お目覚めになられましたか。腫れ物退治の赤兎様」
「と、鳥ぃーーーーー!?」
もはや魔法少女のかけらもない☆頭がくちばしの長い掛川花鳥園にいそうな鳥で、体は二足歩行の新撰組の羽織を着た鳥人間です☆46億年物語☆
「驚いた?」
「驚いたもなにも、こやつ、エグザイルビースト(EB)じゃないですか!? なんでここにしれっといるんですか!?」
「安心して、大橋くんは大丈夫だから」
「いや、だって!?」
口ばしをパカーと開ける鳥人間☆
さっき言葉も話してたし、襲ってくる様子はないけれども。
「こんにちは、はるなさん。私は大橋カイムと申します。ウラノーマ様のご配慮でここに置かせてもらっております」
何気にキラキラネーム★いや、頭がオニオオハシみたいだから大橋なんか安直やな★
「大橋の名字はウラノーマ様からいただきました」
いや、頭がオニオオハシみたいだから大橋なんか★ウラやんネーミング安直すぎるやろ★にしても渋いどっかの蛇おじさんみたいなイケボですね☆ニュースキャスターとか声優やれそう☆
「クワックワッカッ! 我々はあなた方にエグザイルビーストなどと呼ばれていますが、実際は固有の名前などはありません。我々は住みかを持たず数多の世界をさすらう旅の概念体なのです。日本の言葉で言えば所謂ホームレスのようなものですね」
「ええ、正直路上生活してる人と似ても似つかないんですけど……」
「いわゆる、本質的なものです。して、そんな私たちにも大きく分けて2種類のタイプがあります。ひとつは【本能体】と言い、ほとんど知能足るものを持たず、意思を持たず、苦しみを持たず打ち消し、ただその場その場、気の赴くままに脈絡もなく絡もなく暴れる者達。色々な世界で迷惑をかけるだけの存在。もうひとつは、私たちのような【観測体】」。高い知性を持ち、【本能体】を管理するものです」
「ああ、知能が高いタイプがいるんですね! あれ、でも、その本能体とかいうの日本でバンバン暴れてるし、管理できてなくないですか?」
「我々はの管理とあなた方の管理とはちがうもの。我々の管理とは【アンフェア・エヴォルト】の抑制です」
「いや、さっぱりわからん固有名詞を次々に出されても困ります。もうちっとわかりやすく説明してくれませんかね?」
「ああ、申し訳ありませんね。【本能体】が普段何をしても、我々はそれに介入しません」
「悪さしてるのに? けっこう人とか襲ってますよ?」
「人間の理屈ならそうですが、我々にとって彼らの動き自体は制御る対象ではないのです。彼らのあの行動は、鳥が飛ぶがごとくの【自然】なのですから。我々にとってはそれが【不自然】な状態になることこそが管理の対象です」
「それがアンフェアなんとかなわけですね」
「左様にございます。まず無いこどではありますが、外部からの力による【ほんのうたい】の変性は、我々に望まれざる結果をもたらしますからね。見つけたら即座に抹殺します。それが、掟なのです」
「うわー、良くわからんルールですけど容赦ないですね! 他にも色々ありそうですけど、これ以上は長くなりそうなのでこの場では詮索しませんよ」
「ありがとうございます。流石はウラノーマ様が敬愛し一目置かれるお方だ」
「それ、褒めてます?」
「クワッカッ、勿論ですよ」
うわー、こいつ絶対ヤベーヤツだ★宇宙の真理とか理解してるレベルの高次元の存在だよ★ジジイよりはるかに賢者みがスゴイ★
「はるっぴ、大橋くんは頼りになる参謀なんだよ! いつも落ち着きがあってアドバイスも的確なの!」
「いえいえ、私などが口を挟まずともウラノーマ様は聡いお方ですよ? それゆえに、普段は人に介入しない私も興味を持ったのです」
「にしてもよく得体も知れないのを仲間にしようなんて思いましたね。そこに関しては、ウラやんのグローバルさに感心します」
「クワックワッ、かく言うはるな様もかつて【ヴァイリイ◎ジェルバル】を目指した王の残影を宿しておりますよ」
あー、もう言動がおおよそワケワカメクロワッサンスープですわ☆もう追求すんのも面倒なのでとりあえずニッコリ微笑んでごまかそ☆
「ウラやん、これで全員ですか?」
「いや、あとはハラちゃんとフタバがいるんだけど、いま巡回中だなら留守なんだ」
「いや、原田先輩はちがうんじゃないっスかね~」
そういって、目を細めて口笛を吹く仕草をするキンタ君☆そして苦笑いするウラやんから察するに、原田はなかなかの問題児のようですね☆記憶にはないけど、多分顔見知りなんやろなはらだ☆
「まあ、それはさておき」
「おいちゃいますか」
「そろそろ、この場所のことを話さないとね!」
「ほんへ」
「ここは、京都を模してして作られた電脳魔法! その名を『キョウトバース』と言います!」
「一文字もネーミングひねらんのな。まー、たしかに向こうに京都タワーっぽいのあるしコピーして作ったと言われても納得いきますね。んで、このでんのうまほうくうかんとやらはフツーのメタバースと何がちがうのですか?」
「全然ちがうよ! だってあれはコンピューターの中だけで存在するだけでしょ? この『キョウトバース』はコンピューターで一部操作できるけど本体は魔法世界なの! だから、私たちはアバターじゃなくて生身の人間のまま、建物とかも質量を持ったまま、ふつうの世界と同じようにこうしてここに存在していられるわけ」
「ほー、それはなかなかすごい技術ですね! 何かガン○ラファイトも作れそうなレベルです。こんなすごい世界、だれが作ったんですか?」
「あの有名な荒槌財閥社長、荒槌佐氏とエンターライズの密老院が秘密裏に共同開発したのです!」
「何の目的で?」
「表向きは、エンターテイメント施設みたいな感じだけど、もしものためのノアの方舟みたいなものだよ」
「あー、ようは地球やエンターライズが何らかの原因でボカンしたときにここに逃げ込むんですね」
「そ。実際地球もエンターライズも『ラグナロク』が起こる可能性あるからね。実際、そのリスクを引き上げようとしてる連中がいるわけだし」
「ん、そんなヤバいヤツがいるの?」
「うん、その名は「壬生狼新選組」。地球の神の座を奪おうと企てる者達。私達『魔法少女新撰組』が対峙してる存在だよ」
「しんせんぐみとしんせんぐみなの? ふたつあって紛らわしいですね~」
「漢字で書くと違うんだけどね。まーだいたい向こうのことは『ミブロ』って呼んでるけど」
「んで、神を殺すってどう言うこと」
「はるっぴ、地球の神様が誰だか覚えてる?」
「いや、覚えてません」
「キュベリオス様だよ、マリアージュ様の愛弟子で、伝説のエンシェント▽ハイマスターの一人だね!」
「あー」
なんかハルちゃん先輩が話してたな☆イシュカが探していたけど見つからなかったって。痔ぼ神とか呼ばれてるんだっけ☆
「キュベリオス様は、かつて第二次『ラグナロク』で地球の神が死んで崩壊しそうだった地球を、自らが星とリンクし新たな守護神となることで防いだ。それ以降、地球の神はキュベリオス様となったの」
「へーっ、いやそれより前に第一次あったん?」
「うん、マリアージュ様が生まれるよりもずーっと前にあったらしいよ。昔すぎて資料はあんまないらしいけど、地層調査とかでわかったそうです」
「考古学的にわかるんだそれ。まー、ウラやんもそんな詳しそうじゃないから、気になるけど追求しないでおきます」
「察してくれてありがとー! その件はマジであんまり知らないんだよね! で、話を戻すけど、キュベリス様が地球の神様になったことで、それ以降地球に生きる生物の大半は 水属性 になった。これは、キュベリオス様がもっとも適正のあった属性の加護が地球全体に適用されためなの。つまり、地球は水の星って呼ばれることがあるけど、『水属性が付与した星』って意味もあるんだよね」
『なんかうまいこと言ったような言ってないような。でも、それって別に悪いことじゃなさそうですけど? 水属性になっても魔法使いじゃなきゃ、生活の上で何も変わらん気がする』
「確かに普通に生きる分には。ただ、単独の属性をほとんどの生き物に適用させてるのはある意味『庇護』であり『支配』であるともいえる。キュベリオス様が一手に生殺与奪の権限を持っているようなものなのよ」
「言い方が堅苦しいけど、要は、生かすも殺すもキュベリオス様次第ってことか。まあ、神なんだからそんな不思議でもないような気がします」
「そうだね。だけど、もし、そのキュベリオス様の立場を他の誰かが奪ったらどうなると思う?」
「うーん、今までの流れからシンプルに考えればほぼ地球を征服できそうな感じですね」
「そ。地球の生き物はキュベリオス様の眷属みないなものだから、用意に操れる事になる」
「けど、なんか詭弁にも聞こえますね。絶対にそれが目的とは断言できなくないですか?」
「確かに、地球をただ我が物にするって言う目的とは言いきれないよね。実際地球を滅ぼす可能性とかも考えられるし。けど、どんな結果を求めるにしろ共通して言えるのは、ミブロが荒槌財閥の一部の人間と結託してキュベリオス様を消そう、殺そうとしてるってことなのです」
「荒槌も関わってんの? 結構ブラック企業ですね! にしても、相手は神様だよ? そんな簡単に始末できます? 大体、どこにいるかわかってます?」
「確かに居場所すら分からないのが現状だよ。でも、あれが完成したらそれが可能になる」
「アレ?」
「『ハイパー・マン』。ミブロが産み出そうとしている究極の生命体だよ」
「なんかアメコミに出てきそうなちょいダサネーミング」
「そー言うのとは似ても似つかない、いや、絶対そうともいえないかな。超常的、恐るべき力を持たせようとしてるかならね! 例えば、キュベリオス様を探し出せる絶大な範囲の神通力のようなものや、水属性を確実に皆殺しに出来るメタマジック、不老不死など恐るべき力を得るらしいの。だから、それが完成する前に、ミブロの野望を止めなきゃいけない。それが、いまの私達の役目なんだ!」
「あの、もしかして、私もそれ手伝うの?」
「うん! この目的を達成するには、どーしてもはるっぴの協力が必要なんだ」
「ウラやんは、今のわたしよりもだいぶん強いように見えますけどね?」
「属性破壊とか、はるっぴにしかできないことがあるからね! なにせ、向こうにも「煌魔の器」がいる。そして、あの人がいるからね」
「あの人、とは?」
「はるっぴに次ぐマリアージュ様の受肉適正を持つ最強の土属性魔法少女、セレナ=Verα(ばるふぁ)=近藤。かつて、この魔法少女新撰組の前局長だよ」
☆☆続く☆☆
西本願寺は私もなじみ深いお寺です。宗派の関係から、バス旅行とかでも来ましたし、大学時代にも訪れました。普段は非公開なのですが、お寺の脇に綺麗な庭園があるんですよ!
※ちなみに京都バースの画像は、実際に京都で撮った写真を加工したものです。