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ホームレス魔法少女☆はるなのドン底貧乏ライフ☆  作者: 束間由一
Ⅲ:大体7人の悪魔法少女篇
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第34話☆双子殺しのお菓子の城

はるな達がシーザと戦っていた頃、ワクテル達もまた第2の関門に差し掛かっていた。


立ちふさがるのは双子の魔法少女姉妹……



挿絵(By みてみん)


 私はオーライト=メナス。

 オーレフトの双子(ふたご)の姉だ。


 私の一族は双子が非常に生まれやすい。かつ、その双子は互いに魔力を共有する力を生まれつき持っており、お互い脳内で会話ができる等、人間の双子とは比べ物にならないシンクロ性を持っているのだ。人々は私たちの事を「共存の双魔(そうま)」と呼ぶ。


 だが、その呼び名は皮肉(ひにく)の側面が強い。双子であることはメリットでもあるが「呪い」でもある。私たちは「ニ人力を合わせることで真の力を発揮できる」が、「ニ人でないと真の力を発揮できない」のだ。


 近くにオーレフトがいれば、魔力の大半を片方に注いでもらえば飛躍的に能力を向上させられる。しかし、そのパスが機能する範囲は広くなくて、かなり至近距離にいないといけない。それゆえ先の魔法少女交翅宴(まほうしょうじょこうしえん)では全くそのメリットを活かすことはできなかった。単独(たんどく)での私たちは、いくら頑張ってもアルステリアのような天才はおろか他の魔法少女にも見劣りする。これは先人(せんじん)の双子魔法使いにも言えたことであり、それがあだになって無念のままに枕を()らし死んだ者もいたと言う。


 そんな私たちにメロウラインは力を分け与えてくれた。おかげで能力は飛躍的に向上した。だが、それでもまだ足りない。だから、ここに現れたワクテル達魔法少女を皆殺(みなごろ)しにして、更なる力をもらうのだ。この呪いを払拭するために。


 「悪いがここで!」


 「死んでもらうぞ!」


 さすが魔法少女のリーダー。私たちが殺意を向けても動揺する様子がない。だが、お前のような分かりやすい奴はそこまで(こわ)くない。メリオラもそうだ。エメリスはすぐに()れる。警戒すべきは、ヤツだろう。


挿絵(By みてみん)


 ファリア=エルス。

 あいつは、おっとりしていて闘志(とうし)が感じられず、見た目もメルヘンだから一見すれば強そうには見えない。しかし、そのスタイルは非常に特殊(とくしゅ)で他に(るい)を見ないものだ。


 お菓子を際限(さいげん)なく錬成(れんせい)し、それを武器にする冗談(ギャグ)みたいな能力。召喚魔法(しょうかんまほう)なのか錬金術(れんきんじゅつ)(たぐい)なのか定かではなく、ヤツが地属性(ちぞくせい)であることは知っているのだが、それを(もち)いた芸当(げいとう)なのかも釈然(しゃくぜん)としないのだ。


 魔法少女交翅宴では早めに敗退してしまったが。そもそも、優勝の名誉(めいよ)とか金とかそんなものに無頓着(むとんちゃく)な感じのの(やつ)だから、本気を出していたかも怪しい。適当に負けるつもりだったんじゃないだろうか。しかも、そんな()わついた感じなのに、岐阜代表を倒している。今のところアイツは魔法少女の中では中の下の扱いを受けているが、それでもあんな会場楽しませるパフォーマンスショーのような戦いかたで勝ってしまうのは(あなど)りがたいものがある。こういう未知(みち)の部分がある存在は真っ先に倒した方が良いだろう。ならば、

 

 『オーライト』精神と精神をリンクさせて話しかける。私達だけにしか聞こえない会話だ。


 『ファリアを狙うのね、姉さん』


 『そうだ、一撃で仕留める』


 『いきなりあれを使う気つもり?』


 『あいつを倒せばあとは上手く行く』


 『けれど』


 『いまさら(まよ)うな妹よ。私たちは呪いの連鎖(れんさ)を絶ちきらねばならんのだ』


 『わかりました。姉さんに魔力を転送(てんそう)補填(ほてん)を行います! 魔力パス接続(せつぞく)!』


 どっとオーレフトの魔力が体の中に流し込まれて駆け巡る。邪属性(じゃぞくせい)を取り入れたため、かつて無いほどの力が沸き起こり、(たぎ)る。やれる。これなら、あんな魔法少女の1人やふたり(ちり)にしてやるさ。

 


 「食らえ!! 合体魔法!! 《ジェミナス・イグニシッョン》!!」

挿絵(By みてみん)


 強力な魔力瘴気(まりょくしょうき)をまとい、ファリアに向け突撃する。今の私は流星(りゅうせい)にして触れたものを焼け焦がす凶星(まがつぼし)に等しい。些細(ささい)なる障害(しょうがい)よ消え去るが良い!!

 


 「あぶなーい」



 なに?

 何なんだそのゆとりは。お菓子を目の前に、あの棒状の顔のような模様があるあれはなんだ?



 激突。衝撃(しょうげき)は無い。

 私の纏った魔力でその棒は簡単に溶ける。しかし、溶かされても伸びてくる。溶けても溶けても同じところまで伸びて私を足止めする。何だこれは。


 「マジカル金太郎(きんたろう)アメちゃん頑張って~!」


 (あめ)だと?

 あの切っても切っても同じ顔が出てくるあの日本に昔からある駄菓子だと? そんなふざけたものに、攻撃が止められるだと!?


 ふざけるな

 ふざけるな

 ふざけるな


 こんなものに、こんなものに私達が負けると思うな。

 押し潰してやる。正面から押し潰してやる! 


 「うおおおおおぉぉぉ!! 私を、私達を、馬鹿(ばか)にするなぁぁぁぁぁ!!」


 「!?」


 その一瞬見せたピキリとひきつるような表情。心の(ひずみ)、濁り。どうやらその無限(むげん)に湧いてくるわけではないようだ。つまりは、押し切れる。


 「死ねぇっ!! ふざけた奴っ!!」


 「きゃあっ!?」


 飴を溶かしきり、ファリアに迫る。

 だが、しぶとい。間一髪、横飛びでかわされた。だか、私はそれを高速で追尾する。


 「チッ!! ゴキブリのような奴めが!!」


 「まっ、失礼(しちゅれい)な! ゴキブリちゃんにあやまってください!!」


 「そっちかよ!! 虫に謝ってられるか!!」


 「悪い子ですね! ぷんぷんぷん! そんな子には、おしおきしちゃうわよ~!!」

 

 ザワッ


 空間が急に(さわ)ぎはじめた。

 何かが発動した。何か建物のようなものがファリアの背後から蜃気楼(しんきろう)のごとく現れる。これは領域魔法(りょういきまほう)か?


 「(そび)え立つそれは、御伽(おとぎ)なる甘き障壁(しょうへき)。可愛い子供達はあなたの(うち)暖炉(だんろ)の中……《双子殺(ふたごごろ)しのお菓子(かし)(しろ)》……」


挿絵(By みてみん)


 城がその門を明ける。

 その光る入り口が、凄まじい吸引力で私達をその中に入れようとしてきた! まずい、逃げなくては!! しかし、こちらの速度を持ってしても、耐えきれない!! 


 『姉さん!』


 オーライトが心のうちで叫んでも、時既(ときすで)に遅し。

 私達はその城の中に吸い込まれていく。このままどこへ流されていくのかも分からない。まるでブラックホールだ。


 

 まさか、あの名前は、そんなことが!!

 これは、メタマジック!! 完全に私達、双子だけに特効(とっこう)の、私たち双子だけを狩ることだけに特化した魔法!! バカな!! そんなピンポイントな魔法があるというのか!? 


 全部わかっていた!?

 それともただの不運!? そうだとしたら、私たちはどれほど神に見放されているのか!!


 そんなまさかまさかまさか!!

 そんなまさかァァァァァァァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ


 ……


 私達は流された。

 流されて流されて、行き着いたのは謎のファンシーな小部屋だった。



 「―-くっ!! 何だここは脱出(だっしゅつ)する方法は!?」


 「姉さん、まずいよ!」


 「何が?」


 「ここ、魔法が使えない!! 魔力が発生させられない!!」


 扉はある。

 しかしノブを引っ張っても開かない。


 『安心して、命はとらないから~』


 「ファリア、どうする気だ」


 『これから、あなた達にお菓子をごちそうするわね』


 「は?」


 『ねずみさん、おねが~い』


 「なに!?」


 言ったのも束の間、何体もの二足歩行のメイド服を着たネズミが何体も現れて私達を取り囲む。そして、うち二匹が、私達の背後に回り羽交い締めにした。


 「ぐっ!! 放せ!!」


 ネズミ達の力は強く完全にロックされてしまった。

 もはやこれまで。


 「チュウ」


 「な、何をする気だ!? むぐっ!!」


 「チュウチュウ」


 ネズミは、シュークリームを私の口にねじ込ませた。

 甘味が口のなかに広がる。このままだと窒息するから飲みこんだ。しかし、ネズミは今度はエクレアを私の口に突っ込んできた。


 「むぐー!!」


 『たーくさんたべてね! これからずーっと、絶え間なくあなた達はお菓子を食べ続けるの。ハッピーなお仕置きでしょ?』


 いや、それは拷問だ。


 『安心して、いくら食べても死なないから。そのかわりカロリー高いからどんどん太っちゃうけど、それはしかたないわよね~』


 「むぐーー!?」


 恐怖。それは死ぬより恐ろしい行為ではないだろうか。

 ずっと、ずっとこれが続くなんて精神が耐えきれない。ファリアがここまで恐ろしいヤツだったとは。想定が甘かった。


 メロウライン、気を付けろ!

 こいつらは、お前の想定より確実に上を行っている! お前がいくら魔王に近き力を得ていても、こいつらはそれを()らいかねないぞ!


 「むぐぎーーー!!」


 「チュウチュウ」


 あまーい!! 

 もう食べたくない!!

 もうだべたぐない!!

 タスケテタスケテーーーゴメンナザイーー!!




 そしていつしか、私達は考えることをやめた。

 ただ、甘味(かんみ)身体(からだ)(うず)め、ただの脂肪のかたまりと成り果てたのだった。



 双子に

 双子になんか生まれなければこんなことには


 あんまりだ

 あんまりだぁぁぁぁぁぁぁァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ――――――

 

 



 

 

 


 


 

 

 


 


 

 

 


ファリアの魔法が挿絵だけルビがあるのは敢えてです。

実際は文章の方を言っているようですが、同時に言葉ならざる魔法言語を発していつ模様です。

やっぱりオーライトの思った通り実力はかなり高い……?

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