第27話★温泉街からはぁビバノンノン
【前回までのあらすじ】
魔法少女交翅宴表彰式。
エンターライズの腐敗を正そうとしていた優勝者のイシュカは、ローザルフを仕留めるチャンスとして牙を剥いたが、それは魔族の末裔だったメロウラインやそれに従う魔法少女達が仕掛けた謀略であった。
イシュカは仲間と思っていたウラノーマの凶刃に倒れ、ローザルフはメロウラインに捕らえられる。会場は大混乱に陥り、多くの人々が逃げまどい、一部は命を奪われた。
はるなはメロウラインに仲間に誘われたが、これを拒否。
その結果絶体絶命の危機に陥るが、アルステリアやハルシロフの助力で何とか逃げ延びることに成功したのだった……
「あぁぁ、もうだめだぁ」
こんにちは~表彰式からの超展開に巻き込まれてしまったはるなです★
何とかほぼ魔王的なものになってしまったメロ姉から命からがら逃げのびたわたしは、他の逃げ延びた魔法少女達と一緒に、岐阜にある三名泉のひとつである下呂温泉のとある旅館をに潜伏をしています★何で下呂温泉すかと申しますと、同じく逃げ延びたぴりんのコネで格安で宿泊できるってのが大きな理由でした★★お代も他の魔法少女が出してくれたり、魔法少女のポイントカード「マジコン」のポイントの仕様で余裕で長期間泊まれる感じです☆☆温泉とメシはさすが温泉旅館と言う感じでサイコー(飛騨牛A5とかはじめて食べたわ)ですが、状況が状況なのでイヤッホゥとはなりません★★岐阜の山間の温泉地の昭和感が残る風景を見てると、しっとりした哲学的な気持ちになるのもあるけどね☆☆
「エメリス! あんた魔法少女でしょ!? 何情けないこと言ってんのよ!」
「だってぇ、エンターライズはもう魔族の手に乗っ取られてるんでしょ? しかも邪教信仰のカルト団体や犯罪集団なんかも合流したっていうじゃない? 終わりだよ終わり!」
「まだ可能性はある! あきらめんの早すぎるのよ! まったくだらしない!」
1回戦で当たった千葉の子は、部屋の端でうずくまって弱音吐いたところをぴりんに喝入れられています。こんな真っ先に逃げた情けない人間に情けなんて言われるなんて本当に情けないですね☆エメリスには「雑魚の極み」の称号を授けよう☆まあ、わたしも逃げたんですけどねあはは★(汗)★
「そうでい! この程度で挫けるなんて魔法少女の名が泣くってもんだ! くよくよしてるヒマがあったら行動を起こすべきだ!」
対して高知県代表のメリオラちゃんはクールな外見の割に江戸っ子気質です。
他の子も、エメリス以外はただ落ち込んでいるわけじゃなく、もろもろ思惑思考を巡らしていそうなので、諦めてはいなさそうです。特に、魔法少女のリーダーであるワクテルさんは、落ち着きもあり冷静で、なかなか頼りになりそうです☆☆
「そうね、情報もまだ不鮮明だし、まだ打開策はあるはずよ。中心部のアルバロス大陸をこのわずか数日で完全に制圧したのだとしたらメロウラインには恐れ入る話だけど、他の大陸はまだ陥落していない可能性がある。今ならまだ間に合かもしれないわ。ただ、はやく戻るべきだけど、心許ない要素が多いわね」
「他の魔法少女は連絡とれないのかい?」
「ええ、今のところ誰も。表彰式のときマジホンなどの連絡端末は持ち込み禁止だったからそれも災いしたわね。エンターライズの各機関もほとんどが機能停止状態。戻る場所を間違えると、敵陣に飛び込む恐れもある」
「みんな無事だといいんだけど」
多分、イシュカちゃん、ハルちゃん、アルステリアさんは生きてないよね★★思い出すと逃げた自分に対する罪悪感が重くのしかかります★★かんぜんに仇とる流れになっとるし★★
コンコンコン
誰かが部屋の扉をノックしました☆☆あれ、夕御飯にはまだ早くね?
「はいー?」と、率先して開けにいくワクテルさん。
「はやく開けなさいよ!」
「その声は!」
ガチャリとカギを外すと、ドカドカと入ってきたのは3人の女の子でした。全員見たことのある顔です。特にその一人の黒髪の女の子は、あの時はるなを逃がしてくれた命の恩人。
「あんたら、何まったり温泉旅行してんのよ!!」
「は、ハルちゃん!!」
「へっぴり、この前も馴れ馴れしいっていったでしょ!? 図々(ずうずう)しいわね!!」
「じゃあハルちゃん先輩でどうです?」
「……ふん、まあ、いいけど」
いいんや☆
いやー、ちゃんとオチをつくるあたり掛け合いと言うものがようわかってますね☆流石ですわ☆
「生きてて良かったです!!」
「ふん、あんだけのこと言っといて死なずにのこのこやってきたのはすごく恥ずかしいけど、今はそうも言ってられないから」
「ウラノーマは大丈夫だったんですか?」
「よくわかんないけど、見逃されたのよ。イシュカを殺したのに、アイツ、私には勝ち目無いからとっとと逃げろってさ。悔しいけど、妙に真実味があったから従った。何考えてんのかわかんないけど、単純にメロウラインの手下ではないかもしれないわね」
全員私服姿ですが、あと2人はお菓子みたいな子と3位のとんがり帽子の子ですね☆その3人に対し、ワクテルさんがとても嬉しそうな顔をして語りかけます。
「ファリア、ノノマ。あなたたちもよく無事でしたね」
「いやー危なかったよ」と3位の子ノノマちゃん。
「アルステリアがかばってくれなきゃやられてた」
「アルは、どうなったの?」
「メロウラインと一対一で戦うつもりだったみたい。途中でテレポートしたから最後まで見られなかったけど」
「生死は不明なのですね」
「じゃあ、まだ生きてるかも!」と、ぴりん。
「うーん、そうだね」お菓子の子ファリアは口を尖らせます。
「けど、あのメロウラインは極悪非道って感じだから、今ごろどうなっているかなあ」
「あんた、それのんびり言うことじゃないでしょ?」
「まー、焦っても仕方ないしね」
「ほんとマイペースなんだから。緊張感なさすぎ!」
でもな、ぴりんよ。
そんなこの子に魔法少女交翅宴でボロ負けしたんだよなーお前☆☆あの余裕がファリアちゃんの強さだと気付きなさいな☆☆
「それで、ハルシロフ」話をサッと切り替えるワクテルさん。
「事情を話してくれないかしら。あなた達とイシュカはローザルフ様に手を掛けようとした理由を」
「うん、話すよ……」
ハルちゃんは、洗いざらい私たちにぶちまけました。
「魔法少女維新の会」ってのを作って、ジジイ達や魔法少女がエンターライズの国民から集めた税金を不正使用、私的流用をするなどの汚職を止めるため、また格差社会の修正を行うため、密かにジジイを仕留めて(正確には殺さずに拉致って人質にして交渉材料にするつもりだったようですが)国家転覆し新しい世界を作るテロの機会をうかがっていたこと。その絶好の機会が魔法少女交翅宴の表彰式の場であり、上位入賞をすることでジジイの至近距離に迫れるチャンスであったことを。
「でも、全部ウソだった。シーザの口車に乗せられてたのよ。ホント浅はかだったわ」
「でも、あなたは、計画がうまく行かないことをある程度わかっていたんじゃないかしら?」
「なんですって?」
「あなた、見た目はツンケンしているけど。実のところは利口で情に厚いでしょ? 結構良いウワサは聞こえてきてるから」
「っ!」
「イシュカの力になってあげたかったんでしょ? 仮にローザルフ様を捉えたとして、そのあとはどうするつもりだったのかしら。あの強硬策をしたことで、エンターライズのみんながそれを受け入れたかな? 心を動かせた? 正直、共感を得ることは難しい。むしろ、反発が起こるだけだったんじゃないかしら。けれど、あなたやファリアがそれを分かってなかったとは思えないのよ」
「私は、別に」
「あなたはイシュカちゃんの幼馴染みだから、あの子のお母さんのことも知ってる。だから、そばに寄り添ってあげたかったんじゃないかしら?」
「ワクテル、あんたイジワルすぎ……私だって最初はわかってなかったよ。むしろいつも貧乏くさい格好してたからイジメる立場だったし。でも、お母さんのことを馬鹿にしたときイシュカに胸ぐらを掴まれて、怒りと悲しみに満ちた目で睨み付けられて、それから見方が変わりはじめた。それで、そのあとにイシュカのお母さんがあんなことになってさ。どんなにつらかった全部かわからないけど、あたしなんて、本当にぬるま湯に浸かってたんだなって痛感した。自分が何てひどいことをしてきたのかって。だから、イシュカに今までイジメたことを謝った。でも、あの子はあたしを責めなかった。それから、友達になったんだよ…………はー、って言うかこういう昔話とかするの何かムズがゆいんだけど」
「それは、申し訳なかったわね。私はつい昨日調べて知ったけど、あなたはイシュカもつらい思いを間近で見ていたのがよくわかったわ。話してくれてありがとう」
「ふん、でも私たちは悪いことに加担した事に変わりはないし、きっと裁かれるんでしょうね。でも、それは承知の上で言わせてもらう! メロウラインを倒すのに協力して!! あいつやシーザを許すわけには行かないの。あとでどんな沙汰を受けても構わないから、お願い!!」
真剣な目をしてお願いするハルちゃんを見て、ワクテルさんはやさしく微笑みます。
「それはこちらもお願いしたいことですよ。あなた達がいてくれると希望が広がります。是非ともエンターライズのために力を貸してください、ハルシロフ」
「……ありがと……」
「ただし、くれぐれも死に急がないでね。イシュカちゃんはあなたが生きることを望んでいるはずですから」
「わかってるわよ。私だってタダで死ぬつもりはないから」
そう言ってハルちゃんは、視線を斜め上にそらしました。多分照れているんでしょうね☆もう不器用なんだからぁ☆
「それで、あなたたちは他の子とは連絡はとれていないかしら?」
「ああ、その事なんだけどさ」
「ノノマ?」
「ヴィーナスとは話せたよ。〈はなせ草〉を使ってだから短時間だけどね」
「本当ですか!」
「あの子はすでにエンターライズに戻ってるみたい。自分の領地でメロウラインに反撃する準備をしてる。あそこはまだ安全らしいからぜひとも合流してくださいませオーッホッホッって言ってたよ」
※はなせ草は短時間遠くの人と話せる使い捨てのマジックアイテムです。
おお、あのセレブお嬢様生きてたか☆☆
徹底して高笑いするこだわりと言い中々あなどれませんね☆☆
「わかりました。みんな、動くわよ! まず目指すのはラスカイン大陸スピア領! ヴィーナスと合流します」
「合点だ! こちとら温泉で十分英気を養ったからな! 戦いたくてウズウズしてるぜ!」
「頼りにしてるわよ、メリオラ。他のみんなもね!」
ぴりんもやる気はありそうです☆
ワクテルさんの主役面感にはちょっとモヤつきますが、はるなもとりあえず乗っておきます。ただ、あと1人は様子が違う★
「あの」
「エメリス、どうしたの?」
「私は、ここに残っちゃだめかな?」
「ダメです。あなた、自分の立場がわかっていますか? あなたは魔法少女の代表なのですよ?」
「いや、行っても役に立たないって!」
「……」
どんだけ弱気雑魚なんだよコイツ(~_~;)
よくこんなんで千葉県任されたよね★★
このあと、ダメ人間を無理やりひっぱりつつ、はるな達はエンターライズに戻ったのでした☆☆久しぶりの故郷ですが、実は、はるなにとっては特に良い思い出どころか何も記憶かわ無ぇてレベルなんだよね(:^_^)
今回から第3章です~
魔法世界エンターライズを舞台にした魔法少女対魔法少女の戦いにご期待ください!