第26話★表彰死期(下)
魔法少女交翅宴表彰式は、一気にカオスなムードへ!
大賢者ローザルフを撃とうとした優勝者のイシュカは、ウラノーマに仲間だったはずの阻止され、致命傷を負ってしまう。
そして、そんな中に現れたのは、アルステリアに氷漬けにされていたはずのメロウラインだった。
彼女の正体は如何(第2章)に……
どうも、はるなです!
3億円ロスから衝撃の超展開になって、頭の中は処理がしきれずにフワッフワの状態です。
なっつっても、イシュカが刺されて倒れてる姿にあのメロお姉ちゃんが目が恐ろしくギラつかせて悪魔のような笑みを浮かべているんです★★悪堕ちしたのでしょうか★★いや、何か、操られてる感じがしないのよ★★
「お前が……っ」
「どう? 信じていた仲間に裏切られた気持ちは?」
「ぁ……」
「シーザも上手く騙してくれたものね。ここまで真に受けてくれたのだから。おかげで、獲物を確実に捕らえられる」
後ろにいる、メガネの子がクククと笑っています。うわームカつく……
「シーザが……!? そんな……じゃあ……ローザルフ様は……」
「お陰で、穏便に動くことができたわ。でも、全部が嘘じゃないわよ。一部の魔法少女が税金を使っていたのは本当。私たちが、計画のために使わせてもらっていたから」
「けい、かく……?」
「そう、私たちが、エンターライズに復権するためのね」
「な、に……っ!」
うわ、わっる!!
顔が悪意ですごいことになってるよ!!
「苦しいイシュカ? あなたは、ここで、何も出来ぬまま死ぬのよ!」
「メロウライン!! 黙りなさいよ!!」
怒りの声を出したのはもう一人の子と回復魔法を使っているハルシロフだった。
「イッちゃん、今はこれ以上無理しちゃダメだよ」
「あぁ……私は、苦しんでるみんなを、助けたかった。魔法少女はみんなの幸せを守るのが仕事だから……それなのに……こんなバカなせいで……何も出来なかった……」
「もうしゃべっちゃだめだよ!! これ以上しゃべったら!!」
「……あ、はは、ハルちゃんは、いつも優しいよね。 私は、私は、間違えちゃったの……かな?」
「そんなこと、ないよ! そんなこと!」
「ごめん……ね……巻き込んじゃって……キュベリオス様も結局現れなくて、これじゃあ迷惑をかけただけだよね……こんなことになるのなら、普通に、何にも逆らわずに生きていれば……悔しい……悔しいよ……ハルちゃん……!」
ボロボロの生命が大粒の涙をこぼす。口からは、血が洩れる。
事情がまだはっきりとはしないけど、無念さがひしひしと伝わってきます。
「イッちゃん! わたしは、後悔してないよ! ぜんぜん後悔なんてしてない! だから!!」
「ハルちゃん……ハルちゃんが友達で本当に……よかった……これからも、ずっと友達で……いてね」
「あ、当たり前でしょ!? 長い付き合いじゃないの!!」
「ありがとう……あぁ……でも……もう目が見えないよ……目の前が真っ暗で……ハルちゃんの顔が……」
「だ、だめっ!! 死なないで!!」
「……お母……さん……ごめんなさい……お母さんがくれた大切な命を……私は……許し…………て…………お母……さん……」
そこで、イシュカは事切れました。死にました。南無。
近しい立場の子では無かったけど、この目の前で起こったことに対して、はるなの心にフツフツと何かがわき起こってきました。ジジイも、怒ってます。
「メロウライン。まったく、ひどいことをするわい」
「あらあら、ローザルフ様、お逃げにならないのですか?」
「どうせ逃げられぬのをしっておるのだろう。先ほどのイシュカに魔力を奪われた事もあるが、動いたらドカンなんじゃろ?」
「流石は長く生きているだけはありますね。そう。そこから下手に動いたら、死にますよ」
「しかし、この気配、読めてきたぞ。もはや地上にはおらぬと思っておったが」
アルステリアさんが「どういうことです?」と聞くと、ジジイは目を瞑りました。
「こやつ、メロウラインは人ではない。おそらくは【邪神ベルタバ】の血族、すなわち魔族じゃ!」
「なんですって! マリアージュ様により、倒されたと言われる世界を破滅の危機に陥れた暴虐の邪神!? すべて冥界に封じられたと言う魔族が地上に残っていたと!? メロウライン、それは本当なのか!?」
それを聞いてクロでーすと言わんばかりにニタニタ邪笑するメロお姉ちゃん★★あん時くれたヒマラヤ岩塩は、もしかして嫌がらせのつもりだったのかな★★
「あんなに近くにいたのに気付かないなんて、天才が聞いてあきれるわよね」
「ずっと、私を騙していたのか!?」
「正直さあ、いっつも偉ぶっててムカついてたんだよねー? 名門の家柄ってこともあってもてはやされてるから目が雲って見えてねえんだよなあ!」
あれ、なんか言葉遣いが悪うなってきてるぞ★★まあ、人の事言えないですけどテヘッ★★
「嘘だ! 君は正気を失ってる! 操られているんだ」
「バーカ、オメーのアタマはホントお花畑かぁ? こっちはバリバリにシラフなんだよぉ! ああ、ついでだから教えておいてあげましょうかね」
「っ!?」
「私は、土属性じゃない。私、本当は、土と火、そして邪の三重属性なんだよ!」
「バカな……3つの属性を持つなんてエンターライズでも伝説でしか聞いたことがない! しかも、魔界の者しか使えぬと言う邪属性だって!?」
属性はたくさんあるほど魔法力の総量が高くなります。しかも、ただ2倍3倍じゃなく、おおよそ10倍100倍くらいに比例して上がるので、簡単に言えば今のメロお姉ちゃんはとんでもなく強いってことになります。
「あんたが二重属性ってだけで周りからもてはやされて自信満々(じしんまんまん)だったのは、マジで滑稽だったぜ!」
「メロウ!」
「そろそろ目ぇ覚まさせてやるよ!!」
ビリビリビリ
バサァ
メロお姉ちゃんの背中から、悪魔の翼が二枚生えてきました★★はい真っ黒確定★★デビルメロお姉ちゃんの完成です★★
「アルステリア、落ち着け! そやつはもは、お前の知るメロウラインではない!」
「つっ! ローザルフ様!! 私達に構わずお逃げ下さい!!」
「無理じゃよ。さきほどのイシュカの攻撃で魔力を奪われてしもうた。それに、さっきも言ったが、今へタに動くと、ワシの周囲に仕掛けられたワナでポックリ死ねからのお」
マジか、ジジイさすがだな☆☆クソだけど☆☆
自分の周りがこっそりヤバくなってたのわかってんだ☆☆さすがは大賢者☆☆くやしいが、少し感心してしまった☆☆クソなのに☆☆
「しかし、こんな老いぼれを捕まえてどうしようと言うのじゃ?」
「あらあら、ご冗談を。自分の存在価値くらいわかっているでしょうに」
「ほっほっ。まあ、どうせアレが狙いなのじゃろうな? 【魔杖オルフディカス】が」
「ご名答! あれの帰還こそが、我らが悲願の成就に必要なもの! 魔の世界への鍵となるもの!!」
うわー、なんかゲームっぽい展開ですわ★★ちょっと既視感ある★★
とか思ってたら、うわ、メロお姉ちゃんが急にこっちに熱視線を向けてきたぞ★★こっち見んな★★
「ねえ、はるなちゃぁん。お姉ちゃんこれからエンターライズと地球の人間や動物を根絶やしにして、全部魔界しちゃおうと思うんだけど。はるなちゃんは素晴らしい力を持っているから、お姉ちゃんの味方になったら、他のこちらについてくれた魔法少女以上に手厚くもてなすわ。どう、あらためて、私の妹にならない?」
「え……」優しい笑顔が今は怖いっす★お姉ちゃんキャラ起こると危険ってお約束パターン★
「そうねえ、世界征服が終わったら、地球の七割はあなたにあげるわ。もう、お金や住むところに困ることはないわよ」
うわー、魔王とか某ネオスペース国家の総統の血縁者が言いそうな言葉だわ★★
破格の待遇だけど、亡くなったイシュカをチラリと見て、はるなの答えはすぐに出ました★
「すいません、お断りです」
「あら? どうして? あなたに損はないはずだけど」
「わたしは腐っても魔法少女なんですよ! みんなの幸せをおびやかす悪いことには手を貸せるわけないです! メロお姉ちゃんには、確かにいろいろお世話になりました。でも、罪もない人を犠牲にしてビンボー生活を脱したって、そんなのは全然幸せじゃないですよ!」
魔界になったら絶対楽しくなさそうだし、今のメロお姉ちゃんの信用度はゼロだし約束守るか怪しいしな★★それよりなによりもやはり、イシュカちゃんを騙した上に殺したのがフツーに許せません! 全然知り合いじゃないけど、あの子は私の体を気づかってくれたし、すぐにお金を分けてくれようとした。正義感が強くて優しい子だったのが分かった。
『悔しい……悔しいよ……』
死に際に放った無念の言葉が脳内再生されます。
なにも出来ずに、仲間に裏切られて死ぬなんてひどすぎる。
もう少しで三億円もらえたのにあんまりだ。
わたしは、真っ当な人間でもないけど、こんな惨いことはゼッテーしないぞ! そう思いながら、私はギュッと手を握りしめました☆
「そう、残念ねえ。来てくれると、思ったのに」
「悪いこと許せません! それに倒れたあの子の気持ちを考えないような薄情者はとても信用なんかできないです!」
「ふふっ、意外や意外、こんな正義感強いなんて思わなかったわ! 泥棒して追放された子とは思えないわ! 今更善人面する気なの?」
「盗みも犯罪ですが、比にならないくらいやってることがワルいです! 」
「ふぅん、なら、この場で死ね!! 《エビルスマッシャー》!!」
「!?」
うわ、不気味な波動が飛んできた!!
すさまじい邪気と瘴気だし、当たったら死にそう★★
「危ない!!」
とっさに、アルステリアさんがわたしの前に氷の壁を作って防いでくれました☆☆でも、完全には止められなさそう★★
「うわっ!?」
かばってくれたアルステリアさんだけ、吹き飛ばされました★★マジすまねえ★★
「ぐっ、逃げろ、はるな!!」
「でも!」
「メロウは、私がくい止める!! 君はひとまずここから離れるんだ」
アルステリアさんだけじゃなく、ジジイもこちらに向かってなんか言ってます。
「逃げるのじゃ!! 今のお前では、こやつには勝てん!!」
うるせえよ★★
だけど、そこまで声を揃えて言われると、逃げんといかんような(汗)
周りでもなんか魔法少女と魔法少女が戦いはじめてるし、逃げんといかんかな★★いかんかな★★
「あらあら、逃がさないわよ? はるなちゃんみたいなのは、ここで死んでもらわないとこまるんでなあ!!」
キャラがブレブレなお姉ちゃんと、ウラノーマやメガネ野郎。少なくともうち2人はヤバい★★マジ何とかして逃げないと★★よし、わしゃ逃げるっ★★
「背中を向けるとは愚かな」
「きゃーっ!」
アルステリアさんたちをおいて、わたしはダッシュ、ひたすらダッシュして会場の出口を目指します★★悲しいくらいのチキンムーブ★★すまねえみんな、はるなは自分の命を守るので精一杯じゃ★★
ところで、うしろに追ってきてるやつはいないかしら★★
ギャー!! ウラノーマが修羅の形相で迫ってきてる!! しかも、すでに至近距離!! 斬られる!! 斬られちゃうぅ!!
「《ウィンドショット》!!」
え、ウラノーマに風属性の攻撃!?
誰、誰ですか?
「なにボサッしてんのよ、屁っぴり小娘!!」
あれは、イシュカに涙を流したハルちゃんじゃないか☆☆
「ハルシロフ」
「ウラノーマ、あんたの相手はあたしだ! よくもイシュカを!! 絶対に許さない!!」
笛を構えて威勢よく啖呵を切るハルちゃん。とても勇敢です。
「ハルちゃんっ!」
「いきなりなれなれしいわね!? 言っとくけど、あんたのためじゃないからね!! この状況は私にも責任があるから、自分のおしりは自分で拭くってだけ!! ほら、早く行きなさい! ここは私が食い止める!」
アルステリアさんと言い、現実世界に俺がおとりになる系の正義マンがいるなんて思わんかった☆☆世の中まだ捨てたもんじゃねえ☆☆なんか自分自身が情けなく感じます。
「ローザルフ様も言ってたでしょ!? あんたは生き延びて、あたしたちの敵をうつのよ!! きっと、それができる可能性があるはずなんだから!!」
「っ……!! わかりました!!」
「たのんだわよ! 私達の分も生きなさい!!」
「ハルちゃん!! ご武運を!!」
「だから、馴れ馴れしく呼ぶな! はよ行け!!」
「は、はい!」
「ふん! ……あんたがあの時メロウラインの誘いを断ったのは、ちょっと見直したよ……とにかく、もう振りかえるんじゃないわよ!! 早く行きなさい!!」
ち、ちっくしょーちくしょぉぉぉぉ!! 背中越しに優しいこと言うなぁ!!
ウラノーマにあんな横笛でたちうちできるかよぉ、絶対死ぬやつだよ!! 自分で死亡フラグおっ立てやがって!! うわああああぁ!!!
わたしは走ります★★
流石に自分がふがいなくて、辛くて、悔しくて涙がポロポロ出ます★★でも止まるわけにはいきません★★逃げることしかできないのです★★
イシュカちゃん、ハルちゃん、アルステリアさん、ごめんよ★
この屈辱はいつか必ず返してやるからな★★
覚えてろよメロねえのクソ野郎★★
絶許だかんな★★魔法少女の矜持にかけて、オメーはぜってーこの手でブッ倒す!!(グッ)
第2章は今回で終了! 次回からは第3章「約七人の悪魔法少女編(仮)」がはじまります!
メロウラインの野望をはるなは止めることができるのか!? こうご期待!!