君と僕らの英雄譚その9
緊迫した空気は長くは続かず、大蜘蛛は僕に襲いかかってくる。行動に理性はないようだ。
「もうルーチェは遠くまで行ったか…?」
後ろを気にしながら大蜘蛛の攻撃をかわす。一撃一撃は地面をえぐり木を倒すほど重く、まともに喰らえばもう、捕食されるのみだろうか。
「魔法耐性さえどうにかなればな…」
先程から魔法を打ち込んで入るものの魔法耐性により大きなダメージを与えられない。
「ギギギギギギギギ!!」
大きな前足で僕を切り裂こうとする。とっさに防御をとり、鋭い金属音が響いた。
「あんまりこういうのは好きじゃないんだけど…ね」
剣にしては短く、短剣にしては長い刃物を取り出し、防御した。
「…古巣から持ち出したものがここで役に立つとはね」
黒く細身の刃物。特に目立つ装飾もないが、一つ刃の部分に黄金の模様が入っていた。
「それ!」
大蜘蛛の猛攻をいなし、少しづつダメージを与える。しかし、
「!?」
前足に気を取られ、尻から伸ばされた糸に気づかなかった。糸は僕の足を絡めとり、動きを封じた。
「ぐゥァッ!」
動きが鈍った僕を、大蜘蛛は前足で突き飛ばし、なぎ倒された大木に叩きつけた。
「くっ!土魔法!」
追撃を仕掛ける大蜘蛛の目の前に土の壁を貫き出し、追撃を抑える。木が倒されたことにより月明かりが広がり視界が良くなる。すると、
「…?なんだあの模様は…」
大蜘蛛の人間部分にある不気味な紋様を発見した。
「……あれが魔法耐性の秘密なのか、合成種の秘密なのかは分からないけど、…叩いてみるか」
「風魔法!」
2対の風で出来た鳥が舞い、大蜘蛛へと飛び舞う。風魔法に気が取られた大蜘蛛に刃を立て体を狙う。
「今だッ!」
飛びかかり、回転により勢いつけられた刃は体へと向う。それを防ごうと前足が襲いかかる。
「それを待ってた!」
体をひねり、雷魔法の勢いをつけたまま、黒く光る鋭利な前足を切り裂いた。
「キシヤァァァァォォァァァ!!!」
赤色の液体が飛び出しバランスを保てない大蜘蛛は前のめりに倒れる。
「おー、いてて。体なまったよなぁ…」
打ち付けられた時の痛みが少しまだ痛み、大蜘蛛は動けなくなった。
続く




