君と僕らの英雄譚その4
光陽が僕らの村を照らしていく中、騒がしい声が二つに増えた。先程屋敷へやってきたマリアとルーチェがいい争っているようだ。
「なんでお前は毎日来るんだ!邪魔だ!」
「貴女こそ後からアモール様のところへ来た癖に図々しいですのよ!」
「なんだと!」
「なんですの!」
大きな声を出しているものだから、牛や羊は二人の元からどんどん離れていき、とうとう広い牧場の中に二人だけが残されているのを、遠くから僕は見ていた。
「おーい。2人とも。手伝って欲しいことがあるんだけど」
ふたりにきこえるよう、若干大きな声でふたりを呼ぶ。聞こえてるかな。
「アモール様~今すぐ向かいますわ~!」
いち早く反応してくれたのはマリアだ。
「おい!待て!」
ふたりが駆け足で駆けてくる。ルーチェは騎士なだけあって走るのが早い。これはルーチェの方が早く着くだろうか、とそう思っているとやさしい風が吹いたのを感じた。
「風魔法」
そうマリアが魔法を唱えると、マリアの体がふわっと浮き、風に任せて、ルーチェをすっと追い抜いていく。
「!?お前!」
「お先ですわ」
そう言って僕の元へ先にマリアがたどり着いた。
「アモール様。おはようございます。貴方のマリアでございます」
「あ、あはは。おはよう、マリア」
「魔法なんてずるいぞ!」
「使えない貴女が悪いのですわ」
「なんだと!」
「はいはい、喧嘩はやめてね。明日の出店の準備をしなくちゃいけないからそっち、手伝ってくれないかな。もう夕方には出なくちゃいけないんだ」
理由を付けて喧嘩を止める。
「アモール様が言うのなら」
「仕方ない」
良かった。収まったようだ。
「それで、出店て、なんだ?私がこの村に来てから初めてだよな?」
「そうだね。出店って言っても、最寄りの街にここで作った乳製品やら、釣った魚を売りに行くだけなんだけどね。保存するために地下室に冷凍してるんだ。それを馬車に積むのを手伝って欲しいんだよ。僕は力仕事が苦手だから…」
「なんだか楽しそうだな。地下室なんて初めて行くし、手伝わせてくれ」
「ありがとう。マリアは残った動物のみんなの様子を見ててくれるかな」
「むう、アモール様がそういうのなら仕方ないですわ。今だけはアモール様の手伝いを許可しますわ」
「お前の許可なんてしらん」
「はいはい、喧嘩しないで。さぁ行こうかルーチェ」
そう言ってやしきのちかくにある地下倉庫へ歩いていった。
続く




