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君と僕らの英雄譚   作者: ぱぶろん
2/10

君と僕らの英雄譚 その2

一ヶ月前、僕が最寄りの街から帰路についている所、一人の、鎧を身にまとった女性が道に迷っていた。


「どうしました?どこかへ行かれるのですか?」


「っ!?い、いえそういうわけでは…、そ、それじゃ!」


慌てたように、顔を隠しながらそそくさと急足でその場を去る。


「そっちに行っても森しかないんだけどなぁ…」


馬車を走らせ、村へといそぐ。周りがだんだん暗くなり始め、星が光り始める。


「暗くなる前に帰らなくちゃなぁ…」


そうすると先程出会った女性に出会った。


「あの、大丈夫…ですか?」


「!?き、君は先程の!」


「…どこまで行かれるんですか?」


「…」


顔を赤く、そして隠しながら、持っていた地図を僕に見せある場所を指さす。


「ここって……」


「ら、ラぺの村…だ」


ああ、なんだここか。


「…ここ、僕の村なんだけど…」


「…村の方、ここの村まで連れていってくれないか…」


「もちろんです。大丈夫ですよ。さぁ馬車の荷台に乗ってください」


「すまない…」


しばらくの間、2人と売れ残った商品を乗せ馬車が走る。もう太陽は半分以上見えない。


「どうして、そんな鎧の格好をした人が、村まで?」


僕は聞く。


「私はこう見えても王立騎士団の一員なんだ。名前ぐらい聞いたことがあるだろう?」


王立騎士団。確か王都とその周辺の地域を警備したり、治安を守ったりする団体だったはずだ。


「王立騎士団っていえば、あの精鋭集いの?」


「流石だな。そ、そこのな三番隊隊長の名前、知ってるか?」


あいにく僕は時事には弱いから、王都のことは分からない。


「うーん…、誰だろう。分からないなぁ…。団長ならわかるんだけど」


「フッ…。フフフ!そんな君には教えてやろう!誇り高き王立騎士団、三番隊隊長!そう!私こそ!ルーチェ・グローリア!」


自慢げに語り、勢い良く荷台で立ち上がって天井に頭をぶつける。その振動で馬車が揺れ、馬が驚いてしまった。


「あっ!もう、いきなり立ち上がらないでくださいよ」


「あっ…すまん…」


「それで、どうしてそんな騎士様が、こんな辺境な村へ?」


「聞いてみれば、ラペの村は護衛を雇っていないどころか、近くに騎士団の詰所もないそうじゃないか。しかも境界線に近い位置にあるときた。これは騎士である私が悪しき魔族から村を守ろうと、団長へ直々に赴任願いを出して来たというわけだ」


「…そうですか」


僕はその時少し悲しかった。


「そんなこと話してるうちに、村に着いてしまったな。ありがとう村の方。ついでと言っては何なのだが、村長のところまで案内してくれないだろうか」


馬車を村の正門の近くに置き、馬を引っ張ってルーチェの元へと行く。


「村長なら紹介する必要は無いかな」


「え?」


「ほら、ここ」


僕の胸を自分の人差し指で指す。


「え、えええええええ!?あ、貴方が村長!!??」


「失礼だなぁ君。こう見えてもこの村を作ったのは僕だよ。まぁ作って10年ぐらいしか経ってないけど」


「その若さで村を作るとは、す、凄いな…」


「というわけで、よろしくね、ルーチェ。もし泊まる宛がなければ、僕の屋敷の空き部屋を貸してあげるよ。さぁ、ついておいで」


唖然としている気抜けな騎士を、ちっぽけな村の村長が手を引っ張ってゆく。全てがここから始まり、そして終わってゆく英雄譚のプロローグとなるのはまだ誰も知らなかった。


続く

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