決戦:白刃龍クラウソラス
「聖霊ミアライシス……」
何故かその名を聞いた途端、懐かしいような不思議な感覚に陥るセイル。
聖霊とは、人間と共に戦場を歩く頼れるパートナーを指す。
戦士のほとんどの人間が相棒として側に置いていると言われている。
相棒となった聖霊は守護聖霊と称され、パートナーである人間が命尽きるまで支え続ける。
だが、その正体などは未だ判明されておらず、詳しいことをわかる者はこの世界に存在しないとされている。
時には隣を歩く相棒として、時には人間を助ける武器として活躍する姿から、武神などとも呼ばれる。
「俺の剣になるって?」
ミアライシスはセイルの前にやってくると、満面の笑みを見せる。
「うん!ボクは君の守護聖霊になるためにここに来たんだからね!」
その笑顔に偽りはなかった。
「…どうやら本当みたいだな。さっきの治癒魔法といい、クラウソラスを叩き落とした時といい、ただの小娘ではないみたいだ」
その言葉に頬を膨らますミアライシス。
「だから聖霊だって言ってるじゃん!…いい?聖霊は人間とペアになって初めて本領が発揮出来るんだ。この場を切り抜けるためには、ボクの力を使って」
真剣な目でセイルへそう告げた。
ミアライシスの後方では体勢を立て直したクラウソラスが仕返しと言わんばかりにミアライシスへその鋭利な尾を突き刺そうとしていた。
このままだと今度こそ二人仲良く貫かれてお終いだ。
それに、不本意ながら命を助けられた恩もある。
セイルは覚悟を決め、ミアライシスへ告げる。
「聖霊ミアライシス。俺の守護聖霊になってくれ」
「ボクの魂、君と共に」
するとミアライシスの体が光に包まれ、やがて一振りの剣へと変化した。
『この剣ならあんな尻尾簡単に斬れちゃうよ!』
「本当だな?信じるからな!」
『こんな時に嘘なんてつかないよ!!』
セイルは、こちらへ伸びてくる尾を睨み付ける。
「さっきはやってくれたな…俺と同じくらいの痛みを味わわせてやる…!!」
そして尾が再びセイルを貫くと思われた瞬間、1つの剣閃が閃く。
すると次の瞬間、尾に亀裂が走り鋭利な尻尾は胴体と離れてしまう。
クラウソラスはあまりの痛みに咆哮する。
そしてどこかへと飛び去ってしまうのだった。
クラウソラスの去った後に残ったのは疲弊した少年と少女の姿だった。