聖霊ミアライシス
「ボクが助けてあげる!!」
少女は自信満々にそう言い放った。
「助けるって…お前みたいな小娘が勝てる相手じゃないぞ!!早く逃げろ!!」
見た目10歳行くか行かないかの少女に英名持ちが倒せるわけがない。
それどころか低級モンスターすら倒せないはずだ。
「ちっ!!」
「きゃっ!?」
セイルは一度舌打ちをすると、未だ逃げる様子のない少女を抱えて駆け出す。
「ちょ、ちょっと!何するのさ!?」
「逃げるに決まってんだろ!!俺を助ける?ヒーローごっこはもっと安全な場所でやりやがれ!」
セイルは違和感を感じていた。
この少女とは初対面のはずなのに、長い間一緒にいたという感覚がセイルにはあった。
「降ろしてよー!!本当に君を助けてあげられるんだから!!」
「うるせぇ!!耳元で騒ぐなーーー……クソっ!!」
突然セイルは抱えていた少女を横へ放り投げた。
「痛っ!!ちょっと!何するのーーーーー」
少女は目の前の光景に言葉を失った。
「ぐっ………がはっ…!」
セイルの腹からまるで生えているかのように突き出た鋭利な尻尾。
セイルは空中にいるクラウソラスの尾に貫かれていた。
逃げる二人を追ってきたのだ。
「く……そ……」
クラウソラスが尾を抜くと、糸の切れた人形のように地面へ倒れ伏すセイル。
咄嗟に少女を横へ放り投げたおかげで少女まで貫かれるという事態は避けた……が。
「まっ…たく…ついてない……な」
セイル自身もなぜ少女を守ったのか理解出来なかった。
初対面のはずなのになぜかこの少女だけは守らなければならないような気がして、気づけば少女の身代わりとなっていた。
セイルの体からはおびただしいほどの血が流れ、体温がみるみる失われていく。
確かに近づいてくる死を確信していた。
だが次の瞬間、セイルも驚く現象が起きる。
「な、なんだ…?傷が…塞がっていく…?」
セイルの腹部に空いた穴がみるみる塞がっていき、体内で急速に血液が生産されると同時に失われていた体温も急上昇を始める。
すると、空中でセイルの最期を見届けるかのように浮遊していたクラウソラスが突如何者かにより地面へ叩きつけられる。
「ーーーまったく、ヒーローごっこならもっと安全な場所でやってよね?」
「あぁ?お前、調子に乗るな………よ?」
先程少女へ言った皮肉を返され苛立ちを覚えるセイルだったが、少女の姿を見た瞬間そんな苛立ちも吹き飛んでしまう。
少女は地面に叩きつけられたクラウソラスの上に立っていたのだ。
間違いない。クラウソラスを落としたのはあの少女だ。
「まったく情けないよね。ボクの治癒魔法がなければ君、今頃この世にいないよ??」
「治癒……魔法?…お前、一体何者だ?」
セイルがそう問いかけると、少女は胸を張ってこう告げる。
「ボクは聖霊ミアライシス。君の剣になる美少女聖霊だよ♪」