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お姫様と王子様



なんだと……!?


乙女化がアリスの趣味?

国王は衝撃を隠せないでいた。

この国の王子が女装癖があって人見知りでドMで並み一通りでない変態……


「どどどどうすれば良いのだ!?」


ウィルフィールに助けを求めたが、返ってくるのは可哀想な子を見つめるような視線だけ。


「国王様、はっきり申し上げます。どうしようもないでしょう!」


「のわあぁぁーーー!!!」


国王は叫んだ。

妃が亡くなってから11年。

天国の妃に恥ずかしくないように三人の息子を育ててきた筈なのに……

女装で人見知りでドMで並み一通りでない変態――!?


「我は一体どうすれば良いのだあぁぁーー!!!」


だが、国王の絶叫の更に上を行く悲鳴が聞こえた。





「いやあぁぁーーー!! お兄様のばかあぁぁぁーー!!!!」


ウィルは悲鳴と共に、凄まじい魔力量を感じた。


慌てて部屋を出てみると、コアとライドが倒れていた。

可愛らしいぬいぐるみに包まれて……いや、可愛らしいぬいぐるみに捕縛されて。


「えっ……と……王子様? 状況を説明して下さいませんか……?」


困惑しながらも尋ねる。

ウィルにはこの状況を理解できない。

コアとライドは呼吸を確保しながら順番に説明し始めた。



事の発端は五分前。

いつも通り(?)アリスで遊んでいた兄二人は遂にアリスと一線越えようとした。


「え……それって近親相か――むぐっ……」


国王の魔法で口を閉じられた。


「ふむ。続けてくれ、息子達よ」


国王は話を続けさせた。


兄らに捕縛されたアリスは当然嫌がり、だが、それでもキスをしようとしたら……

いきなり巨大熊のぬいぐるみに包囲されてしまった。

しかもこのぬいぐるみはコアより強かった。

一瞬で動きを封じられた。


「へぇ。アリスは何処に行ったんですか?」


分からない、と王子二人の瞳が語っていた。


「フッ……役立たずが……」


すみません、と王子は頭を垂れる。

ウィルはまた深いため息をつき、国王に告げた。


「アリスを連れてきます。国王様、ご命令を!」


国王はその言葉を聞いて、頷いた。


「ウィルフィール、アリスを……第三王子を我の前に連れてきてくれ。話がある」






ウィルは棘の道を進んでいた。

焼き払ってしまうことも出来るのだが、城を燃やすことになってしまう。

城を破壊するのは流石にまずい。

それにしても、凄い魔力だ。

棘の侵食は進み、城の4分の1くらいが包まれている。


惜しい才能だ。


これだけの魔力があれば一人で一国を治められる。

何故、ウィルが棘の道を掻き分けているのかというと……


10分前。

兄にセクハラされかけたアリスが自分の部屋に閉じ籠もり、一部の人以外を近づけないようにした為である。


「恐らく……アリス様は『眠り姫』の世界を体験してみたいのでは……」


ルドの想像だが、多分当たっているとウィルは思った。

昔からおとぎ話が大好きな奴だった。

アリスの部屋の前まで来た。

案外楽だった。

ハイディッヒ家領土の『森』よりは。

『森』とはその名の通り。

ハイディッヒ家の所有する深い森のことである。

そこで行われるのは実戦の為のサバイバル。

今まで行方不明になった者が数多いるという拷問所。


まあ、それはいいとして。

魔力を飛ばしてアリスの部屋の中を確認する。

いる。

ベットで寝ている。

ノックすると独りでにドアが開いた。

アリスの魔力か……

アリスは童話の中のお姫様のように胸の辺りで手を合わせて、寝息をたてていた。


…………。

恐らく、キスをすれば目が覚めるとか、そういうのを狙っているのだろう。

ウィルは少し考えた後、フッと笑った。


「お姫様、王子が迎えに来ましたよ。早く目を開けて下さい」


アリスは目を覚まさない。

キスをされるまで起きないつもりらしい。


なんかイライラしてきた。


「切りつけてみたら起きるかな……?」


ウィル呟いたが、まだ動かない。

ふぅ、と軽く息を吐いて、剣を抜く。


アリスの右腕に突きつける。


「大丈夫。これくらいじゃ死なない」


アリスは若干表情がひきつっているが、瞳を開けない。

やっぱり狸寝入りか、と認識した。

アリスの思い通りに事がはこぶのは何か癪だったのだ。


……と、ここでアリスが瞳を開けた。

ウィルは何となく勝った気になった。


「……ウィル……冗談、ですよね?」


涙目である。


「おはよう。今まで狸寝入りしやがってたアリス王子♪」


明らかに怒っていた。

口調の端端に苛立ちが表れている。

だが、アリスの乙女モードは止まらない。


「でも私……ウィルになら何をされてもいいの……いいえ!何でもしてほし――」


ウィルは無言でアリスを縛り、身動きを封じた。


直ぐに国王の前に移動した。





国王が主座に鎮座している。

半ば罪人のように連れてこられたアリスは膨れっ面で隣にいるウィルを眺める。


「アリス、お前はウィルフィールの事が好きか?」


国王が真剣な瞳で尋ねた。


「はい! 大好きです!!」


瞬時に答える。

国王は更に問う。


「どのくらい?」


アリスは恋する乙女のような恥じらいの中にも芯の通った表情をしている。


「世界中の誰よりも、何よりも大好きです!!」


ウィルは片手で頭を抱えながら苦笑いしていた。


「父よりも兄よりもルドよりも?」


「はい!」


「綺麗なドレスや可愛らしいぬいぐるみや美しい宝石よりも?」


「はいっ!! 私、ウィルの事愛してま――」


叫びかけたアリスの口を封じたのは青ざめたウィルだった。


「ウィル……放してっ!! 私はまだ貴女への愛を叫びきれて無いの!!」


じたばたと暴れるアリス。


「公衆の面前でそんな事を叫ぶな!!」


アリスを取り押さえるウィル。

そんな二人の様子を見て、国王は命じた。


「静かにせよ!」


ウィルが急に大人しくなる。

それに吊られるようにアリスも暴れるのを止めた。


「ウィルフィール=ハイディッヒ、お前に頼みたい」


「はい、何なりと!」


つい、ウィルはそう答えてしまったのだ。

いつもの癖で。

国王がニヤリと不敵な笑みを見せた。


「我が息子……アリス第三王子の教育係になってくれ」

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