Rank0「現代都会B系企業社畜、異世界地方農家の息子になる」
スランプ=ピンチ=チャンスということで新連載!
バカ爆走でやぁってやるぜぇ!!
関東と北関東の境界線ともいえる街…田舎ではない。都会といえば都会だ。
寒空の下、咥え煙草の高森本義は空になった煙草の箱を握りつぶした。
思えば専門学校を卒業したとき、最初に入った会社が学校で習ったことが
クソの役にも立たないアウトソーシングとか横文字で格好つけただけの
ブラック瀬戸際な派遣企業だったのが始まりだった。
「何故あの時の俺は貯金のあるうちに辞めなかったのだろうか…」
未来に希望を馳せる時ほど、その者の手元には「まだ何とかなる」と
思わせる程度の小金があるものだと本義は考えている。
だからこそ何とかなると思えるうちに転職なり帰郷なりも視野に入れて
行動するべきだったのだ。
「だが、俺は上京…いや南下して関西へ向かってしまった」
黙って親戚のいる東京都荒川区あたりにでも向かっていれば良いものを、
旧友と気楽にやっていけるかもしれないと楽観して
東京を通り過ぎて魔物だらけの大阪なんぞに引っ越してしまったのだ。
そしてバカな自分は引っ越しで貯金を使い果たすだけではなく
上手く借りれたからといってアッサリサラ金を借りてそれを基盤に
大阪での新生活を始めてしまったのだ。
「膨らむ借金…返済への奔走…」
借金返済のために、友人、親、その他思いつく全ての知人との縁が切れた。
ようやく借金をひとまとめにできたが、その返済プランがシビアだった。
よく考えもせずに「たらい回し返済しないで済む!」とまた楽観したが故に、
本義は今勤めている会社から抜け出すことができなかっ…いや、抜けはした。
借金完済を機に辞表と鉄拳をあのクソ上司に叩き込んで
忌々しいブラック企業から抜け出すことはできた…
だが、今度は新しい定職が見つからなかった。
「作り笑顔が何時まで持つかな…」
やっとの思いで雇用してもらったバイト先でも、自分より若くて出来のいい新人が
すぐに入ってきて、正直キツい…ブラック企業時代に培われたのは我慢強さくらいだ。
スキルもクソもあったもんじゃない。人間関係なんて面倒なのでビジネスライクだ。
友情も何もかも一度圧し折ったのだ。何を今更って感じだろう。
「せめて可愛い女の子の新人さんとか居ればなぁ…」
目の保養になる程度で良いのだ。大概可愛い子には似合いの強い彼氏がいる。
空しいかもしれないが、浮いた展開を今更望むべくもない。
「あぁ…もう煙草ないや…給料日まで…ハッ…三週間かよ…」
上を向いて歩くべきじゃない。涙はこぼれないだろうが、前が見えないのだ。
だからこそ、高森本義は自分の体が不意に浮き上がったことに気づいた時には
ほんの一瞬の痛みとともに、目の前が闇に染まるのだ。
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「あうぅ?」
気が付いたとき、懐かしい田舎の土塗の土間の天井みたいなものが見えた。
「おぉ?」
喋れなかった。そして起き上がれなかった。
手足を動かしてみたが、ほとんど力が入らなかった。
「(……落ち着け。そうだ、深呼吸だ…)」
空気は美味しい気がした。鼻が詰まっている気がするが、
喉を抜ける空気がどうにも爽やかに感じる。
「にゃあぁ! ……(無理だ。やはり言葉が出せない…頭の中では
これこの通り饒舌なものなのだが…)」
じっと手を見た瞬間、自分の手の不自然さにようやく気付いた。
「(小っちゃ…? え? 小っちゃい?)」
ぬぃぃ…! とか声に出しながら必死で寝返りを打った。
そして自分が何の上に寝かされているのか、理解した、いや、理解してしまった。
「(めっちゃ手作り感あるけど…これ…赤ちゃん用の…ベッド…マジかよ)」
ふぬぅぅ…! とか声に出しながら柵まで匍匐前進してみた。
首こそ座っているが、まだまだこの体は動くのに適していないようだ。
やがて人の気配がしたかと思えば、駆け寄る何かに抱き上げられる。
そして完全に自分が何者になってしまったのかを、本義は理解した。
「おいミレイユ! 見ろ! ポンギーがハイハイしてたぞ?!」
「まぁ! 首が座るのも早いと思ってたらもうハイハイしてたの?」
自分を抱きかかえて喜びあう見知らぬ異国の男女…
「おーぅ…(マジか…俺…人生やり直しのハイチャンスに遭遇しちゃったよ…!)」
本義はここでも楽観的な気持ちが先に出てしまったようだ。
続く
嘘ですごめんなさい。
まったり頑張らせてもらいます。