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ネレイド  作者: 唐笠
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血濡れた服と抱える事情

蒼夸の家は俺の家とは逆方向だった。

結構距離がある。そこまでして、直接会って話したかったのか…


「陸~。」

背中て寝ていた蒼夸が突然声を掛けてきた。(さすがにお姫様抱っこする勇気はなかった。)

「どうした?蒼夸。」

「大好きー…」

「ブハッ!!」

まだ寝ていたようだ。と言うか、どんな寝言だよ…自分の顔が赤くなっていくのが分かる。

少し足を早めた。

愛されてるんだな、俺…

今まで女というものに全くといっていいほど縁がなかった、と言うか、そもそも興味がなかった。何故だかは分からない。(別に『二次元が好き』とか、そういうのもなく、だ。)

そんな中、蒼夸は違った。何故だか優しい気持ちになれた。まるで家族といるように。どうしてだろう…俺と蒼夸の間に、何かあるのだろうか…


「…ここが蒼夸の家か…」

極々普通の一軒家だ。看板に『百江』と書いてあるので、間違いないだろう。

「ほら、蒼夸。家着いたよ。」

「…」

ぐっすりだ。起きる気配が無い。

諦めて、インターホンを押す。

返事はない。

留守なのか…共働きなのか…

だが、このまま放置と言うわけにはいかないな…どうしたものか…

やはり、蒼夸に起きてもらうしかないな。

「蒼夸。起きて。蒼夸。」

体も揺らしてやるが、ピクリともしない。静かな寝息だけが発せられる。

「蒼夸。ほら、家だぞ。」

「…陸~。」

返答はあった。

「今度は何だ?」

「家の鍵はポストの中~…」

「家に入れと!?」

「そしてポストの鍵は私の鞄の底板の下~…」

「鞄あされと!?」

そこで蒼夸の言葉は途切れ、また寝息をて始めた。何と高難易度な要求をしてくるのだ。

少々躊躇したが、どうしようもないので蒼夸の鞄の中を出来る限り動かさずに底板の下に手を入れ、鍵を取り出す。蒼夸を抱えながらなので片手での作業を強いられている。これがなかなか難しい。

ポストを経由し、扉へ向かい何とか鍵を開ける。蒼夸の靴を脱がせつつ、自分の靴も脱いで中へ入っていく。一階は居間、キッチン、和室、浴槽。ということは、二階が個人的スペースだろう。二階に上がり、蒼夸と書かれた扉を見つけ、中に入ろうとして踏みとどまる。

(待て、勝手に女性の部屋に入っても良いものか?)

後々問題になっても困るし、蒼夸も突然自分のプライベートを見られるのは嫌かも知れないしな…

「入ってもいいよ~…」

「ホントに寝てるのか!?蒼夸!?」

「…」

再び寝息が聞こえてくる。

「えぇー…」

しょうがないので、中に入る。

部屋の中は綺麗に整頓されていた。

取り敢えずベットに蒼夸を寝かせる。せめて制服から着替えさせてやりたかったが、そんな勇気は無い。

「…何か食べるもの作って~…」

「はいはい。」

もう、突っ込むのはよそう…人の買い置き使うのは申し訳ないな。自分で買ってこよう。

「冷蔵庫の中身はご自由に~…」

「なんでさっきからこっちの思考読んでるんだよ!?」



…取り敢えず、適当にクラムチャウダーとサラダの盛り合わせを作った。しかし、キッチンを使っていて、少し違和感を思えた。上手く言い表せないけど…何というか…


生活感がない。


まるで空き家だったかのように、物の使った形跡が無い。さらに食材も、賞味期限ギリギリなものが物凄く多い。それに、ゴミ袋の中にはレトルト食品のゴミがたくさん入っている。ゴミも結構貯まっている。

「…今日ゴミの日だったよな…?」

もしかしたら、両親は旅行に行っているのだろうか。そんなことを考えながら、作った料理を蒼夸の部屋に持っていく…


…途中で


見つけた


これは


何だ…?


驚愕のあまり料理を落としそうになった。

そっと料理をおき、ゴミ袋を開けた。その中に入っていたのは


大量の


血塗れの


制服。


血生臭い匂いは無いので、結構前の物と思われるが何故こんなに沢山…

…考えてもしょうがない。そうだ。もしかしたら、赤の絵の具かもしれない。どう考えても筋の通らない理屈だったが、蒼夸を信じたかった俺は、ただひたすら自分にそう言い聞かせた。



「蒼夸。取り敢えず適当に作ったけど…」

「…!?陸!?何で此処に!?」

意識がちゃんと戻ったようだ。と言うか、本当にさっきのは寝言だったのか…

「いや、学校で寝ちゃったから、他の人に家聞いて連れてきて、ご両親いなかったから困ってたら蒼夸が鍵の場所教えてくれて、挙げ句の果てに料理作れっていうから…」

蒼夸は両手を顔にあてていた。

「…ごめん。私寝言はっきり言う方で…」

「あ、うん。何となく分かった。」

はい、と言いつつ机にお盆を置く。

「そう言えば、ご両親旅行にでも行ってるの?」

「…え?何で?」

「いや、家自体があんまり使われてた感がないと言うか、生活感がないと言うか。ご両親、暫く帰ってないのかなーって。」

「あー…うん。そんなとこ。」

そういって、蒼夸は夕食には少し早いご飯を食べ始めた。

「!!上手ぁ!!」

「そんなにか!?」

「うん。凄く美味しい!!」

そこまで言われると少し恥ずかしい…

だが、そこまで嬉しそうにされると、作った俺も嬉しくなる。

「ねぇ、蒼夸。」

「ん?」

レタスを食べながら、蒼夸が返答する。

「また作りに来ようか?」

「えっ、本当に!?」

「うん。俺が暇なときで良いなら。」


ガシッ


突如手を捕まれた。

「シェフ確保。」

「何でやねん。」

目が合い、互いに微笑んだ。

もう制服の事など、すっかり忘れていた。




「課長。」

「ん?」

陸の父が応答した。

「お電話です。」

「誰から?」

「さぁ…名乗りません。」

「切っておいてくれ。」

「それが…これで3回目なんですよ。さすがに重要なことではないかと…」

「うむ。分かった。」


「もしもし?」

「陸くんのお父様?」

「何か用か?と言うか、誰だ?」

「あなたが探っている人よ。」

「蒼夸を裏で操ってる奴か。」

「心外ね。私は種を撒いただけ。それを育てたのは蒼夸よ?」

「結局原因はお前じゃないか。」

「意外と冷静ね。」

「伊達に年食ってる訳じゃないんだよ。」

「それだけじゃないと思うけど。」

「いいから本題に入れ。」

「蒼夸と陸くんが付き合うことになったみたいよ?」

「それがどうした?」

「陸くんが気付くのも時間の問題ってことよ。」

「どうしてそうなる。」

「勿論、根拠なしでいってる訳じゃ無いわ。それに、こうやって貴方に電話しているのも、大きな意味がある。」

「…貴様、何を考えている。」

「うふふ。秘密♪」


プツッ


プープープー…



「…硬直状態なんかで、終わらせない。きちんと決着は着けるべきなのよ。どちらも全滅するって言う、戦争として最悪の終焉として…」

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