表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネレイド  作者: 唐笠
5/35

解せぬ気持ちと誤魔化す親子

その日、蒼夸は俺をおいてすぐに帰路についていた。まぁ、本来俺は電車通学だから、歩いて帰らされるよりかはずっといいが。


「ちょっと待ってー。」

駅に向かっている俺を永久子が走って追いかけていた。

「話があって…」

「蒼夸のこと?」

なんとなく予想がついた。

「いや、ちょっと違うよ。」

「違うだと!?」

予想外デス。

「なんで蒼夸に言っちゃうかなー。」

あぁ、そのことか。ほぼ蒼夸のことだし。

「いや、はっきりさせときたくて…」

「で、返事は?」

期待する目で俺を見ている。

「いや、蒼夸が、違うからー!!って叫びながら走り去っていった。」

「あ、うん。一緒に帰ってないあたりから、なんとなく予想はついてたけどね。」

「別に俺が思い人って訳では無さそうだけど。」

(こいつ、鈍い!!蒼夸…お気の毒に…)

永久子が、少し残念そうな顔をする。

「あっ、ごめんね?引き止めちゃって。」

「うん。というか、俺も聞きたいことあるんだけど。」

「何?」

「なんで永久子は、そんなに蒼夸に協力してるの?」

「あ、うん。まあ…いろいろとね。」

「言いづらいこと?」

「まぁ、ね。」

「ならいっか。」

別にそれほど知りたかったわけでもないし。

「じゃあ。」

「うん。また明日。」

別れの挨拶を済ませた後で、永久子が耳元でそっと呟いた。

「早くなさい。蒼夸が死ぬわよ。」

「は?」

「じゃあねー。」

謎の台詞を残し、二度目の挨拶を言い残し去っていった、訳あり少女の背中をただ見ることしか出来なかった。



家に帰るとすぐに永久子の言葉を思い出す。


蒼夸が死ぬわよ。


死ぬってどういうことだ?それはあれか?社会的にってことか?いや、でもそれだったらあんな深刻そうには言わないだろう。そう言えば、蒼夸に協力する理由を聞いたときに、なんか渋ってたな…

永久子は、蒼夸の何かを知っている?


まあ、なに考えても、答えが出るわけもないので、諦めて寝ることにした。と、その時。

「ただいまー。陸ー、飯作れー。」

「飯くらい、自分で作れよ!!親父!!」

「しょうがないだろー。母さんが居なくなるまで自炊なんてしたこと無かったし。」


そう。俺の母さんはもうすでに亡き人になっている。とはいっても、あまり母さんの記憶はない。なんたって、小二の頃の記憶を覚えていないのだから、もっと幼い頃に死んだ母さんの記憶などない。


仕方なく料理を始める。そう言えば、母さんはどんな人だったのだろう。優しいとか、可愛いとかは、やたらと親父に聞かされたが、姿を知らない。

「なぁ、親父ー。」

興味本意で聞いてみることにした。

「なんだー?」

すでに酒を飲んで、だいぶ酔いが回っているようだ。

「そう言えば、母さんの写真とかないのー?話は聞かされたことは沢山有るけど、見たことないからさー…」


「ない。」


即答だった。酔いが回っているとは思えない早さだった。

「まぁ、無いなら無いでいいけどねー。」

「また蒼夸か?」


え?

いや、その質問は意味がわからない!!

どこから蒼夸が出てきたんだよ…

「いや、全く関係ないけど…」

「ん?そうか…」

そういって、再び酒を飲み始めた。

「何で蒼夸が出てきた?」

「いや、気にするな。」


「いつまで誤魔化すつもりだ?」


「…どういうことだ?」

「親父、何か俺に隠してるだろ。」

「何か証拠があるのか?」

「いや、ないが…でも…」

「だったら、余計なことに首を突っ込むな。」

「余計なことって何だよ!?家庭内の問題に首突っ込んで、何が悪いって言うんだよ!!」

「いいから黙ってろ!!これは家庭内だけの問題だけじゃないんだよ!!」

「…」

「…早く寝ろ。」

完全に押しきられた。

だが、何かを隠していることは確かなようだ。

正直な所、この事に関しては、完全に興味本意で調べている。実際、今のままでなにか悪いことが起こるっていうことは無さそうだ。本当に首を突っ込まない方が良いのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ