謎めく過去と永久子の証言
翌日。
登校するにはまだ早いが、まあ早く起きてしまったので仕方がない。
教室には誰もいない…と信じていたのに…。
「あら、陸じゃない。早いのね。」
蒼夸が踊っていた。いや、きっと本人にとっては闘っているのかもしれない。親父には関わるなと言われたけど…まあ、いいだろう。
「また地球外生命体?」
「えぇ、前までは頻繁に人形も来たのだけれども。最近はアメーバみたいなのが多いわね。」
「…あ、そう言えばさ、俺の転校初日って学校来てた?」
「?休んでたけど?」
「やっぱ?いや、初日見たとき、蒼い髪の子なんていたかなと思って…ほら、珍しいじゃん?」
「まぁ、そう、ね…」
あれ、歯切れ悪いな…
「…その髪って、やっぱり染めたの?」
「…は?これは地毛よ?」
「…えぇ!?」
「いや、それくらい分かりきってる事じゃない。」
「いやいやいやいや、普通いないよ!?」
「じゃあ、水守はどうなるのよ?」
む…新たな設定が…
「…水守って何?」
突如彼女の目が座った。
まじで怖かった。うん、いや、まじで。
「…本気で言ってるの?」
「本気もなにも…」
そこで彼女は少し考え込んだ。そして、一息つく。
「…そう言えばそうだったわね。いいわ、気にしないで」
何故そんな深刻そうなんだよ…やべぇ、話が読めねぇ。
「それと、今日の放課後も行くからね。」
「何に?」
「決まってるじゃない。地球を守りに、よ。」
「なんでだよ!!」
昼休み
「苫部君、ちょっといいかな?」
ちょうどお弁当を食べ終えたタイミングで鳥羽 永久子が声を掛けてきた。
「…?どうしたの?」
「…ちょっと場所を変えようか。」
そういわれて、俺は永久子に着いていった。
…人気の無いところに。
「あ、あの、何でしょう…?」
「…蒼夸のこと、どう思ってる?」
あ、なんだ。普通の話か。いや、普通でもないな。
「電波系中二病少女?」
「…はぁぁぁ…やっぱりそうなっちゃったか…」
「何が?」
「いやね、蒼夸に相談されちゃって。君が転校してきた日にね。君の写真を休んでたあの子に見せてあげたの。そしたら凄い食いついちゃって…」
「いや、ちょっと待って。幾つか聞きたいことがある。」
「何?」
「何故俺の写真を持ってる…」
「隠し撮りだけど?」
「何故!?」
「いや、蒼夸に見せようかと…」
「…二つ目。何故蒼夸の家に?」
「それは、私、学級委員だし…」
「三つ目。蒼夸って友達いたの?」
「失礼なっ!!」
「だって俺に話し掛けてきたとき、皆揃って帰ったじゃん!!」
「それは皆なりに、気を使ったのよ。それに蒼夸は見た目はああだけど、そもそも地毛だし、普段はあんなふうに、中二病全開でもないしね。」
「嘘ぉ!?」
「うん。だって、あれ私のアドバイスだし。」
「…え?」
「いや、君が蒼夸の思い人だって知ってね。どうすればいいかって聞いてきたから。髪が蒼いのはしょうがないから、いっそそれを生かして、何かすればって…中二病的な何か…」
「…ちょっと待って。俺が?蒼夸の?」
「うん。昔はよく一緒に遊んでたって。」
「昔…?」
思い出せない。
必死に考える。
無い。
小三より前の記憶が全く無い。
「………ん……陸くん?」
声を掛けられていることに気付く。
「大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫。」
「…それって、いつ頃の話…?」
「たしか、小二って言ってたよ。」
小二…
小三で田舎に引っ越したのは覚えてる。
じゃあ、その前は…?
ドコニイタ…?
鐘が鳴る。皆そそくさと教室へ入っていく。戻ろうと声をかける永久子。しかし、俺はその声を無視し、一目散に学校を出た。