無くした何かと受けた警告
連れて(抱えて)来られたのは、少し広い公園だった。…いや。空地か?
「…来た。」
辺りを見渡していた俺を一喝するように、蒼夸が耳元で言葉を発した。
「な、何が…?」
「地球外生命体に決まってるじゃない。」
え、その話、まだ続いてたの?
「陸!構えて!」
そういって、彼女は制服に隠れていたホルスターから、銃を抜いた。あれは、エアガンではない…
いや、言い方が悪い。エアガンですらない。ただのモデルガンである。
「せめてエアガンにしろよ!」
「静かにっ!気付かれるでしょ!早く構えなさいっ!」
「何を!?」
「まさか、『殺戮武器』を持ってきてないの!?」
「おいっ、名前物騒だな!?もうちょっとましな名前無かったの!?」
「とりあえず、私のを一個貸してあげるから、それで何とかしなさい!!それに、この名前考えたの、貴方よ!?」
「ちょっ、勝手に巻き込まないでよ!!ていうか、なんで十徳ナイフ!?なんで殺傷能力あるもの渡すかなぁ!?」
「大丈夫!職質受けるのは貴方だけだから!」
「ふざけんなっ!…ていうか、今職質って言ったよね!?自分の行動に自覚あるの!?」
「あら、何言ってるの?私達の闘いは外部からは分からない。『瞳』がないと、認識できない。そうなると、この命がけの闘いも、傍から見たら中二病の電波少女と、刃物持ってる通り魔少年(仮)よ。」
「俺の方が被害大きいじゃん!」
「通報されるレベルね。」
「この歳で前科一犯は嫌だー!!」
幸運にも周りには人はおらず、遠目に見たとしても、ただの口喧嘩している男女にしか見えないだろう。
その後も、ひたすら動き回っては空を撃って(いや、弾すらでていないが…)5分位したところで彼女はホルスターに銃を仕舞った。
「…少しくらい手伝ってくれてもいいんじゃない?」
いや、そんなこと言われてもなぁ…
「ねぇ、もう帰っていい…?」
「構わないわ。どうせ今日はこれで終わりだし。」
それを聞くなり、そそくさと帰った。出来るだけ早足で。
「…やっぱり、覚えてないのかな…。私のこと…。」
哀しみに埋もれた顔を俯かせて呟いた蒼夸の声は、俺の耳には届かなかった。
半刻後
家につく頃には既に息切れしていた。足で帰ったためだろうか。そう思いながら、ソファーの上に落ち着く。
意識が無くなり始めたところで、電話が鳴る。少しいらっとしながらも、しょうがなしに電話に出る。
「…もしもし?」
「おう、陸か?」
「親父か…。」
「どうだ?新しい学校は?」
「転校二日目でそれを聞くか…」
「まぁまぁ。で、学校は?」
「…普通だよ。皆優しいし。」
「そうかそうか。」
「…あ、一人ヤバイのに目つけられた」
ヤバイの、という表現は、多分適切だな、うん。
「何っ!不良か!?」
「いや、なんか蒼い髪の電波系中二病少女に。」
「…何だって?」
なんだ?今の間は…
「いや、だから蒼い髪の…」
「名前は?」
がっついてくるなぁ…
「たしか、百江…」
「蒼夸か?」
「え、あ、うん、そうだけど…」
「…その子とは出来るだけ関わるな。」
「は?意味が…」
「いいから。関わるな。」
「…分かった。」
「分かったならいい。」
「それで、何か話があって電話したんじゃないの?」
「いや?特には。」
「なんでだよ!!」
おもいっきり受話器を叩きつけた。
「何なんだよ…全く…」
「はぁ、陸のやつ…電話壊す気かよ…。」
そういって、陸の父は電話を切った。
「しかし、めんどくさいことに…まさか、蒼夸がいたとは…」
軽くため息をついた。そして、静かに呟いた。
「悪い予感ほど、当たるものだな…」