蒼い少女と漆黒の瞳
俺の前に、一人の少女が立ち塞がった。肩の高さまで切られた髪は、人間離れしている……ぶっちゃければ、明らかに染められている。それも真っ蒼に。そして鞄に荷物を詰め込んでいる俺を見下ろしている。
何故?
転校二日目だぞ?なんかしたか?俺。
とりあえず、昨日と今日のことを振り返ってみようか。
昨日。
父の転勤で俺は都会へと移り住んだ。高校に入ってからあまり時間が経っていなかったので、別に寂しさとかはなかった。友達とも高校別だし。折角受験終わったのになぁとか思ったが、しょうがない。まぁ、俺は頭よくないし、要領悪いから、そんなにいいとこ行けないけどね。受かったところは結構(校則的に)自由な学校と聞いていた。髪染めても、怒られないとか。にも関わらず、風紀は荒れてない。すごいな、おい。
少し話がずれた。
適当に事務手続きを終えて、クラスへと入る。自己紹介を済ませて、自分の席につく。そこからは転校生の定番、質問責めに遭う。
そんなもの、空想の産物だと思っていたが…実在したのか…
「何かあったらいつでも言ってね。」
クラスの皆に言われた。優しい人多いなー。
その後、授業はまだ受けられないので、一人帰宅。何事もなく、一日終了。
今日。
朝、教師から教科書を受け取る。授業に参加。放課になり、今に至る。
はい、おしまい。
要因発見出来ず。
と、そこであることを思い出した。昨日、蒼い髪の子なんていたか?…
「いま、世界が危ない。電波で人類が洗脳されそうになってる。私に手を貸して。苫部 陸。」
声を掛けられ、はっと我に帰る。この子、電波系だ。生粋の電波系だ。(ちなみに、苫部 陸は、俺の名前である。)
「君は私と同じ『全てを見透す漆黒の瞳』を持っている。だからやつら地球外生命体に対抗できる。」
おっと、中二病か?いまいち違いが分からないんだよな…電波系と中二病違いって…
しかし、このままでは彼女のペースに乗せられてしまう。
…落ち着こう。こういう時こそ、クラスの子に頼ろう。辺りを見渡す。
みんなそそくさと教室から出ていくところだった。
薄情者ぉぉぉぉ!!
昨日の話はどうなったぁぁぁぁ!!
助けの視線を送ると、席が後ろで今は教室の出口にいる鳥羽 永久子が紙飛行機を飛ばしてきた。助け船だー!!
『頑張れ(^o^)』
ひでぇぇぇぇ!!
「いいから、来なさい。」
…うぅ。
「て言うか、俺まだ君の名前聞いてないんだけど。」
「あら、あなたの『漆黒の瞳』を使えば、すぐ分かるじゃない。」
無茶いうなっ!というか、早くも略しやがった!
「…まぁ、いいわ。私は百江 蒼夸。」
「で、なんで俺を?」
そこで蒼夸が少し驚いた様な顔をした。
「何言ってるの?あなたが『瞳』を持っているからに決まってるじゃない。」
どんどん略されていってる!最早ただの瞳じゃん!
「ほら、いくわよ。」
そういって、俺を抱きかかえ…抱きかかえられたっ!女子に!なんかショック!!
そのとたん、蒼夸は窓の鍵を開けた。
…え、窓?
「窓ぉぉぉぉ!?」
普通に飛び降りやがった!!ここ三階なのに!!
転校二日目にして、波乱の予感だ…