願い
一郎は現在ニート。
当ても無く街を歩いていた。
すると一軒の古美術商が目にとまった。
「こんな店あったかな?」
特に買う気もなく、骨董品に興味があるわけでもなかったが、
「暇つぶしくらいはなるかな」
そんな気持ちで店内へ入る。予想通り古びた置き物や掛け軸が並ぶ。
「やっぱり俺にはわからんなぁ・・・」
もう出ようかと思っていたその時、一際異彩を放つ壷が目に飛び込んできた。
いや、一郎にはそう見えたのかもしれない。何か引きつけられるものがあった。
「これ欲しい」
特に壷に興味があるわけではなったが、その壷は明らかに買ってくれと言っている。
「いくらだろう」
一郎は値札を見た。
「¥1000・・・安い」
財布の中のお金で十分買える。
一郎は迷わずその壷を買って店を出た。
後ろで店の主人がうっすら笑っていることなど気付くはずもなかった。
家に帰った一郎は早速壷を取り出し、しばらく眺めた。
「実に魅力的、何かを秘めているような輝きだ。大切にしよう・・・」
一郎は、少々ほこりがかかったその壷を磨き始めた。
しばらく磨いていると、なにやら煙のようなものが壷の中から立ち昇った。
「えっ・・」
一郎は壷の中を覗き込んだが、何も無い。さらに磨く。
また少し煙が出てきた。しかし中には何もない。一郎は思った。
「これはまさかアラジンのなんとかみたいなものか?」
「はたまた神様が出てきて願いをかなえてくれるとか・・・とんでもない掘り出し物だぞ!」
「出てくるのは魔人かなぁ、神様かなぁ?願い事はいくつ叶えてくれるんだろう・・3つ?1つ?いやその前に願い事を考えとかないと、急かされては困る。」
「うーん・・お金・車・土地・地位・世界制服・・・・やっぱり魔法使いにしてくれ、だな」
一郎は一生懸命壷を磨いた。また少し煙が出てくる。そして消える。
何度も同じようなことが繰り返された。
一郎は壷の中に叫ぶ。
「おーい!神様ぁー!もう出てきていいですよー!まだですかー!・・・」
すると突然壷からものすごい煙が立ち昇った。
「うわっ!」
煙の中に薄っすらと、一人のスーツ姿の男が見えた。
「か、神様だ!」
男は言う。
「君か?私を呼んだのは」
「そ、そうです神様。そ、それで、あの、いくつ願い事をかなえてくれるんですか?とりあえず3つまでは考えてあるんですけど・・・」
男は言う。
「さっきから神様神様って、確かに私は神様の国の者に間違いは無い。」
「やっぱり神様だ!」
一郎は喜んだ。
男は言う。
「ちゃんと話を聞け。私は神様の国の者だ。神様ではない。もしここに神様が現れていれば願い事もかなえてもらったかもしれない。しかし神様の国もこちらの世界同様いろいろな人がいる。私は神の国で普通に教師をしている一般人だ。私に願いをかなえる力などない」
一郎はポカンとしたままたずねる。
「なんでここに・・・?」
男が言う。
「なんでとはこちらの台詞だろ!人を呼んどいてなんでとはなんだ!だいたいお前はなんだ!仕事もせんとぶらぶらするばかり。やる気はあるのか!なにが願い事だ!¥1000で買った壷でそんなおいしい話があるわけないだろ!あのなぁ、人生ってのはなぁ・・・・」
男は2時間余り説教を続け壷の中に消えていった。




