51.適材適所
「それで?」
『え?は?な、なに』
急に問いかけられて、しどろもどろに返事をする。
「外に出た理由。教えてくれないの?」
あ、それか。
急に話が戻ったな。
そんなことを考えつつ、ロザリーが不審な動きをしていたこと、そして裏門の警備に当たっていた騎士のレイドと怪しい会話をしていたことを話した。
セオルは最後まで黙って聞いてくれたけど、話し終えると深々とため息をついた。
「大事件じゃん。なんですぐ言わなかったの」
『いろいろ衝撃的で忘れてた』
「えぇ~~」
『久々にセオル以外の人と話せた感動が大きくて』
「俺だけでよかったのに」
『よくないでしょ』
「リリーはね」
そう言って、またひとつセオルがため息をつく。
あからさまに拗ねてますって顔だ。
いちいちこうして子どもっぽい仕草をするのは、狙ってやっているのだろうか?
確かにこういう可愛い仕草に弱いのは認めるけど。
「リリー?」
『な、なんでもない!』
黙りこくった私を見て、セオルが首を傾げる。
慌てて誤魔化したけど、それも可愛いからやめてほしい。
成人男性が似合っていい仕草じゃないでしょ。
「とりあえずそのロザリーとレイド?魔法省で詳しく調べるよう手配しとくから。それでロザリーはリリーの担当から外してもらおう。何かあってからじゃ遅い」
『でもよくしてもらってるし』
「は?演技かもしれないでしょ」
セオルの言うことはわかる。
わかっていながらも、献身的に支えてくれているロザリーを手放すのが惜しいと感じてしまう。
『怪しまれたと知ったら強硬手段に出るかも?』
「んぁ~、それはめんどいな。かといって証拠もなくクビにするわけにはいかないだろーし」
『このまま近くにいてくれたほうが、尻尾を掴めるかも』
押したらいけそうな気がする。
そう思いながら続けると、セオルは不快そうに眉を寄せて、首を横に振った。
「言ったでしょ。リリーを危険にさらすのは絶対嫌。囮になんてしないからね」
『でも』
「……そんなにその子を信じたいの?」
しつこく食い下がる私の真意を察してくれたらしいセオルが、困ったような顔をした。
正直に頷いてみせる。
だって孤独で寂しくてたまらなかったあの日々で、私を支えてくれたのは確かにマリアとロザリーのふたりだったのだから。
いっそ裏切られていたとしても、できることなら最後まで信じていたい。
「ほんと人がいいっていうか、素直っていうか」
『バカだって言いたいんでしょ、わかってるわよ』
「違うよ。そんなとこが可愛いって言ってんの」
『は?』
てっきり呆れられているとばかり思っていたのに、セオルの瞳に非難の色はなかった。
そうっと頬に手を伸ばして、優しく続ける。
「疑うのは嫌なんでしょ?大丈夫、それは俺がするから。リリーはそのままでいいよ」
なんて甘い言葉だろう。
でも、それに甘えてはいけないと頭を振る。
『そんなの無責任じゃん、嫌なことを人に押し付けてるだけ』
「そう?俺は適材適所だと思うけど。リリーのそれは美点だよ、間違いなく。俺は疑うことばっかりだから。家族含め、リリー以外、無条件に信じられる相手はいないし」
『なんでそんなに』
無条件で私のことなんか信じるんだろう。
嘘はついていない様子だからこそ、疑問が募る。
「リリーは俺の天使だから。役割分担。リリーはその子がシロだって証拠を探して。ふたりでいっしょに真実を見つけよう?」
ズルい言い方だ。
わかっていながら、甘えて頷いてしまう。
セオルはそんな私を見て、満足そうに微笑んだ。
それはそうと、天使ってなんなんだろう。
突っ込むと怖い返事が返ってきそうだから、あえてスルーすることに決めた。




