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47.誤解

「それでその日、不思議なことが起こりまして」

「不思議なこと?」

「下の娘が泣いてしまったとき、花瓶に飾られていた花が宙を舞ったのです。あれはリアの得意だった魔法で……もしかしたら、病床の娘が妹を慰めるためにやってくれたのではないかと」

「そうなの?リアちゃん」


 おじさまに問われて、私は肯定した。

 それを伝え聞いたお父様は、目に涙を滲ませて「そうか、そうか」と何度も呟いた。

 そんなお父様を見て、おじさまも感極まった様子で頷いている。


「こんなに妹想いの優しいリアちゃんを狙うなんて。手がかりも残ってなかったのですか?」

「ええ。よほどうまく痕跡を消したのか、外から侵入した形跡が一切見当たらず」

「あ!もしかしたら、リアちゃんを呪った犯人かも」

「呪い?え、娘が呪い?」

「そう、実はその可能性が高いんじゃないかって話になってて。呪いを扱えるほど魔法に長けた人物であれば、痕跡を残さず屋敷に侵入することも可能かもしれません」

「そ、そんな……」


 あれ、待って。

 これ、どんどん悪い方へ想像が膨らんでいってない?

 取り返しがつかなくなるやつじゃ……


「こうしてはいられない!長官から許可を取って、魔法省からも警備を送るようにしましょう。何かあってからでは遅いですからね」

「あぁ、ありがとうございます……!」

「じゃあ早速……」

『ま、待ってください!!!!』


 思わず叫んでいた。

 急に私が大声を出したから、お父様以外がびっくりしたように固まった。

 お父様は私が視えないし声も聞こえないから、急に固まったおじさまたちを見ておろおろしている。


『やめてください、必要ありません』

「必要ないって……君の命にかかわることだよ?遠慮なんてしなくていい」

「そうだぜ、リア。使えるもんは使って損はない」


 フィリーおじさまに続いて、オスカーまで言い聞かせてくる。

 二人の言うことはわかる。

 わかるけど、でも―――


『誤解です。暴漢なんてどこにもいません』

「え?でも犯人は捕まってないんだよな?」

「もしかしてセオル―――君がすでに処分したなんて言わないよね?いくら犯罪者でも、勝手に処刑なんてしたらいけないってわかってる?」

『いえ、それも誤解で―――って、なんであんたはずっと黙ってるのよ?!一緒に止めてよ!!』


 唯一事情を知っているはずのセオルは、なぜかだんまりを決め込んでいる。

 すべてを知っていて隠していたことに後ろめたさを感じているのかもしれないけど、これ以上話が大きくなったら引き返せなくなってしまう。


「いっぱい喋るリリー可愛い」

『あ、ダメだコイツ』

「辛辣なのもまたいい」

『あほ~~』


 子どもみたいな暴言を吐いてうなだれた。


「えっと……とりあえずゆっくりでいいから説明してくれよ」

「うん。ゆっくりでいいからね。なんかうちの部下がごめんね」


 あからさまに憐みの目をしたオスカーとおじさまにフォローされる。

 こうして並んでいるところを見ると、ふたりってよく似てるなぁ。

 オスカーは母親似だと思ってたけど、こういう表情、そっくり。


『実は、その……』

「うん」

『魔法を使ったのは、私なんです』

「うんうん……うん?!?」


 優しく相槌を打っていたおじさまが目を見開く。


『頭の中で呪文を唱えたら、なぜか発動しちゃって。私魔力が少ないから、あんなに大きな魔法は使えないはずなんですけど』

「え、本当に?」

『こうして肉体を抜け出してうろつけるのも、千里眼っていう魔法で』

「へぇ、興味深いな」

「あの、娘はなんと?」


 私の話を聞いて考え込むように黙ってしまったおじさまに代わって、オスカーが話をお父様に伝えてくれる。

 礼を伝えれば、気にするなと言うようにひらひらと手を振られた。

 でも待って。

 そもそもセオルが説明してくれれば、こんな伝言ゲームしなくて済んだんじゃない?

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