38.監視
『素直に話したら、半分で済むかもね』
「……何が半分?」
『怒られるの』
「怒らないって選択肢は……」
『十中八九ないかな』
「うぅ」
「早めに白状した方が身のためじゃね?」
「……わかったよ」
オスカーにも促され、セオルは観念したように重い口を開く。
「実は」
『うん』
「かるーく?ほんと軽く」
『うん』
「監視魔法を」
『はぁ?!』
「もー、怒んないでよー」
聞き捨てならないワードに思わず声を上げると、セオルが困ったように眉を下げた。
オスカーも「一旦最後まで聞こうぜ」と宥めてくるから、私は頷いて口をつぐんだ。
セオルの自白によると、屋敷の何ヶ所かに監視魔法を設置しているらしい。
ほとんどは固定型で、特定の画角の映像を遠隔設置の映像石に記録するのだという。
ちなみにこれは魔法省が捜査なんかに使うやつで、市販されていない魔道具だ。
超小型で、設置されていることがわかっていても発見は難しいのだそう。
『ちなみに許可は?』
「ちゃんととったから大丈夫」
『……脅して?』
「交渉と言ってほしいかな」
スクロールのときと同じパターンかと呆れる。
職権乱用甚だしすぎない?
「それで、2つばかり追尾魔法も」
追尾魔法は視認できない魔法で、魔力探知に長けたものでなければ存在に気づくことすらできないという。
その分魔力消費は多いけど、安全のためならそんなのは取るに足らないことだとセオルは言う。
監視対象は、生身の私と精神体の私。
『便利な魔法があるのね』
「でしょ」
『……待って?それって、毎日?』
「ハイ」
『24時間?』
「……ハイ」
『同意は?取られた覚えがないけど?』
「許可されないと思ってつい。……反省してマス」
『じゃあ、今すぐやめれる?』
無言で目をそらされた。
やめる気もないのに謝るな、バカ。
『で、追尾ってなに?』
「監視する対象を追って動かせるっていうか」
『あぁ、移動してもついてこれるってことね』
「あと好きな画角を狙えるっていうか」
『さっきから画角ってなんなの?映像?とかいうのも、よくわかんないんだけど』
「あ~~~~」
あからさまに目が泳いでいる。
なんならさっきより泳いでいる。
よくわからない言葉を織り交ぜて話せば、深くは突っ込まれないとでも思っていたのだろう。
姑息なやり方だが、そう思い通りにはさせない。
「あぁ……っと、リア?」
『何?今はコイツを問い詰めてる最中なんだけど、庇い立てする気じゃ』
「や、そうじゃねぇけど」
気まずそうに声をかけてきたオスカーを軽く睨むと、即座に否定された。
どういうことかと首を傾げると、しばらく口をもごもごさせたあと「気をしっかり持てよ」と忠告された。
『は?本気で怖いんだけど。何、そんなにヤバいこと?』
「俺さ、実は魔法省に内定が決まっててさ」
『そうなの?おめでと』
「あぁ、ありがと。……まぁ、まだ内々で今は入省のための勉強を頑張ってる段階なんだけど」
『うん』
「その、映像っていうのは」
『うん』
「ま、待って!!自分で言う!」
『うるさい。黙っとけ』
途端に慌てだしたセオルを制して、オスカーの説明を待つ。
絶対オスカーの方が正確な情報を提供してくれるはずだから。
「簡単に言うと、人の視界みたいなもんだな。画角っていうのは、目で見える範囲ってこと」
『うん?じゃあ、えっと』
「お前の私生活はすべて覗かれたうえで、記録にまで残ってるってことだ」
『……?……はぁぁぁああああ?!?!』
ちょっと待って……ちょっと待って!!!
毎日?24時間?ずっと見られていたということは―――‐あんなこんなお世話の瞬間も監視されてたってこと?
セオルを見ると、完全に悪事がバレた子どもみたいな顔をしている。
そんな可愛い顔をしたって、絶対に許さない!
記憶なくなるまでボコボコにしてやる!!
感覚なんてないはずなのに、羞恥で頬が燃え上がるように熱い。
オスカーはあからさまな同情の眼差しを向けてくるが、同情するならコイツの記憶とその映像とやらを処分するのに協力してほしい。




