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23.白状

「怖い……俺が?体触ったの、そんなに嫌だった?」

「ううん、びっくりはしたけど……」

「え、嫌じゃなかったの?」


 さっきまで肩を落としていたくせに、とたんに目を輝かせて嬉しそうな顔をする。

 なんだかまずい気がして、とりあえずくぎを刺そうと慌てて口を開く。


「で、でも触っちゃだめ!とくに下半身は絶対だめ!!」

「うん、わかった」

「約束ね」


 念押しをすると当然のようにうなずいてくれたのでほっとする。


「うん、触るなら上半身だけにする」


 ――‐って、安堵なんかできるか!!


「上半身ならいいとは言ってない!!」

「そういうことじゃないの?」

「違うぅ~~」

「どこもだめ?」

「うぅ……手とかほっぺたならいいけど……あと頭とかおでことか」

「ほんと?」

「ちょっと!ちょっとだけね!」

「うん」


 うまく丸め込まれてしまった気がする。

 無理な条件を出したあと、譲歩したと見せかけて本当の要望を通す。

 そんな詐欺師みたいな話術に騙された気分だ。


 彼の長い指がそっと私の頬を撫でる。

 ガラス細工を扱うような繊細な手つきが、なんだかこそばゆい気分にさせる。

 細くて長いのに、節くれだった彼の指は私のそれとは全然違う。


「それで?何が怖かったの?」


 あやふやにはさせてくれないらしい。

 唐突に話を戻されて、言葉に詰まる。

 優しい口調なのに、逃さないという圧を醸し出すのはやめてくれないだろうか。


 深い瞳にじっと見据えられて、私は耐えきれずに吐き出した。


「だからっ!あなたを諦められなくなりそうで怖かったの!甘えたくなるし、そばにいたくなるし……でも、依存してから捨てられたら困るもんっ」

「うぐっ!!」


 いきなりセオルがうめき声をあげて、胸を抑えた。

 こっちが勇気を出して真剣な話をしているというのに、どうしたんだこいつ。

 ふざけてんのか?


「ちょっと、あんまりかわいいこと言わないで」


 じとっと睨みつけられる。

 え、なんで私が文句言われてんの?

 おかしくない?


「え、つまり俺のことが好きってことだよね?も~、それなら早く言ってよ」


 いやいや、どういう結論に至ってんだよ。


「俺も好きだよ、愛してる」


 どう繋げてんだよ。


「あ~~、今すぐ結婚してぇ」


 バカじゃないの。


 唖然としながら心の中で罵倒しつつも、どうしようもなくドキドキしてる。

 こんなのダメだってわかってるのに、この人、本当に私のこと好きなんだって思ったら自然と口角が上がりそうになってしまう。


「あのね」


 そう言って、セオルは触れられないのにそっと私の頬に手を添えた。


「俺は今まで君以外の人を好きになったことはないし、これからもなることはない。俺には君しかいないし、正直なところ、君の命と君以外の全人類の命を天秤にかけたら、迷いなく君を選ぶと断言できる」

「ひえ」

「だから、来る可能性が皆無の未来におびえる必要はないし、思う存分甘えてほしい。俺もそのほうが嬉しいし、ご褒美だし」

「ご褒美って言い方がやだ」

「えぇ……ごめん?」


 なんで疑問形?

 ニヤけた頬を引っ張ってやりたい衝動に駆られる。

 触れないから無理だけど。


『でもさ』

「うん」

『現実的に考えるとさ、やっぱりこのまま婚約関係を続けるのは無理があるんじゃないの?』

「えぇ~、まだ言うの?」

『だって……跡取り問題、とかさ、あるでしょ』


 声が先細りになりながらも、ちゃんと言うことができた。

 怖くて視線をそらしてしまったけど、顔が見えないから余計不安が増していく。

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