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17.強気交渉

「でもさ」

『なに?』

「実際に原因を探るには時間がかかるだろうし、こうして通うにも限度があると思うんだよね。……そうだ」


 セオルが何か思いついたように手を叩いた。

 無性に嫌な予感がする。


「俺がここで暮らせばいいんだ」

『は?』

「じゃ、さっそく家主に許可とってくる。ちょっと待っててね」

『ちょっ』


 引き止める間もなく、俊敏な動きでセオルが部屋を飛び出していった。

 慌てて後を追いかけるが、異様に素早い。

 驚く使用人たちの間をすり抜け、あっという間にお父様の書斎前にたどり着いていた。


『ちょっと待ってってば!話が早すぎるって!』


 そう必死に叫ぶ私に微笑みかけて、セオルは扉をノックした。

 その微笑みは制止を受け入れたってことじゃないのかよ!


 書斎に通されたセオルは、スクロールの存在を伏せつつ、呪いの可能性について説明した。

 お父様は目を見張りながらも黙って話を聞き、時折考え込むように目を伏せている。

 しかしセオルが原因究明のため屋敷に滞在したいと言ったら、眉間を押さえて深いため息をついた。


「そこまでして頂くわけにはいきません」

「愛する婚約者のためですので」

「いや、ですから婚約は」

「破棄は絶対にしないとお伝えしたはずですが?」


 言葉を遮るように言い放つセオルは、やっぱり圧が強い。

 迫力に怯んだのか、お父様はごくりと喉を鳴らした。


「それについては、またお父君も交えてお話しましょう。ただ滞在については、ご遠慮したく」

「なぜです?娘の不調の原因がわかるかもしれないのに?」


 お父様はセオルの言葉に眉を寄せた。

 今更元気になられても困るのだろうと、皮肉めいた笑みが浮かんだ。


「それに、俺はまだ怒っているんですよ?」


 追い打ちをかけるようにセオルが続ける。


「昨日の侵入者の件、何か進捗はありましたか?」

「それは……」

「そんな危険な場所に婚約者を放置するなど、不快極まりない。犯人が見つからないうちは、警備面からも滞在を要望します」


 しれっとした顔してるな……。

 もっともらしいことを言ってるけど、そもそも犯人は私だし、セオルはそれを知っているくせに白々しい。


「屋敷の警備は強化済みです」

「信用ならない」

「……これは家の問題であり」

「ならば俺は無関係ではありませんよね?」 


 絶対にひかないという強い意志を感じる。

 こうして次々言いくるめるような言葉が出るのは、まるで詐欺師みたいだ。

 お父様はしばらく押し問答を続けたけれど、セオルが絶対に折れないことを察したのか、苦虫を嚙みつぶしたような顔でうなずいた。


「……わかりました。客室を準備させます」

「いや、アメリア嬢と同室でも」

「それはなりません!」


 さすがにそこだけは譲れないらしく、父が血走った目でセオルを睨みつける。

 セオルは不満げな顔をしつつも「……わかりました」と渋々了承した。


 そりゃあ、妹の婚約者を姉と同室で過ごさせるわけにはいかないよなぁ。

 セオルがどんなに否定しても、あちらの家も了承済みのことだろうし。

 こんな体になったとはいえ、嫁入り前の身だ。

 変な噂にでもなったら、両家の関係に亀裂が生じてしまう。


 それにしても、婚約者だったとしても婚姻前に寝所をともにするなんてありえない。

 常識がないのは私に対してだけかと思っていたのに、まさかお父様にまでこんなことを言うとは思わなかった。

 あらためてヤバい奴なんだと再認識してしまい、頭が痛い。


「せめて近くの部屋にしてくださいね」


 妥協した風に言っているが、無理を言っている自覚はないのだろうか。

 父が諦めたようにうなだれているのを見て、さすがに同情してしまった。

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