枕元のクリスマスギフト×2
大学生トキは、スーパーの前でクリスマスケーキを売るバイトをしている。
「いかがですか〜」
赤い服に身を包み、白いつけ髭をつける。クオリティ低めの黒髪のサンタクロースだが、子どもたちに人気だ。
「サンタさん、また夜に来てね!」
「あいよ〜 行くよ〜」
(きつねはサンタとか知ってんのかな?)
同居人の少女、きつねは年齢不詳だ。見た目どおりの子どもではないのだろう。トキは妖怪だと思っている。きつねの耳としっぽが本物なら化け狐ということになるのだろうが、あいにくニセモノだ。
きつねは『願いを叶えるおもちゃのスマホ』を持つが、まともに叶った試しがない。
「お金が欲しい」という願いは、最初の頃に言ってみたことがある。子ども銀行のお金が8畳間にブワッと溢れかえっててんてこまいになった。
最初の頃は「願いを正すために願い、また願う」という『願いの悪循環』を経験した。トキは気づいた。願いは口に出さずに心にしまって、自分の手足で叶えるものだ。
だから今日は、バイトだ。
トキは深夜に帰宅する。きつねはぐーすかと眠っていた。ちゃぶ台の上にチーズとハムのサンドイッチが置いてある。きつねが自分で作ったようだ。
(やっぱりきつねは日本の妖怪だから、クリスマスを知らないんだろうな)
翌朝、トキは騒がしさに目を覚ます。
「トキさま、あやしい小包があります! 爆弾かも!」
「おまえにサンタが来たんだろ」
「サンタってなんですか?」
トキは布団に寝転がったままスマホで検索してサンタを教える。
「ふ、不審者じゃないですか!」
「子どもたちの憧れの的だ」
きつねは贈り物の包み紙を開ける。
中には動物のキツネのぬいぐるみのついたキーホルダーが入っていた。
きつねは笑った。
「ありがとう、トキさま!」
(やっぱり子どもじゃないんだろうな……)
「お返ししなきゃいけないですね」
「え、いや、いいよ」
きつねはおもちゃのスマホをとりだす。トキは阻止しようとするが、きつねは自信満々に言い放った。
「トキさま、私、私の願いなら上手く叶える自信があります!」
「ほ、ほんとか〜?」
ピッポッパッ
プルルルル… プルルルル……
ガチャッ
トキの枕元に、赤い服のおじさんが現れる。
でっぷりしたお腹のサンタクロースは、トキに挨拶をする。
「Hyvää joulua!」
「トキさまこれで、なんでもプレゼントがもらえますね!」
屈託なく笑うきつねに、トキは叫ぶ。
「き、きつね〜! お帰りいただきなさいっ!」




