腕輪と槍と少年
この物語は、世界を救わない。ただ、ひとつの腕輪と槍と少年である。遺物は語らず、獣もまた沈黙する。名もなき男ヴォルトが拾ったのは、呪われた腕輪を身に着けた少年リオだった。助けたのではない。取引だった。ただそれだけの始まりが、終わらぬ旅になった。男は槍を携え、言葉を削り、必要なときにだけ動く。少年は最初、荷物だった。やがて動き、盗み、交渉し、肩を並べるようになる。それでも男は語らない。感情を晒すこともない。ただ戦い、守り、火を起こす。その背中を見て、少年は選ぶ。「俺はこの人と行く」と。血も信仰も通わぬこの時代で、語られぬ絆が確かにあった。腕輪は少しずつ少年を蝕み、その力に世界の残滓が蠢き始める。だが彼らは振り返らない。理由も使命も口にしない。ただ、生きるために進む。今日も、何も語らぬまま。
エピローグ
2025/07/10 21:40
(改)
第1話 袋と腕輪
2025/07/11 01:50
(改)
第2話 名も知らぬ夜
2025/07/11 20:00
第3話 名を持たぬ者たち
2025/07/12 20:00
(改)
第4話 焔の跡、歩む者たち
2025/07/13 21:31
第5話 斧の男と森の火
2025/07/15 12:59