5 後日談
父親から殺人が許されるのは、上司の命令か、正当防衛の時だけだ。自分の判断で人を殺してはいけないと言われ、肝に命じますと応えた。
5 後日談
その後は、王都の各伯爵邸宅まで転移で戻り王城の警察庁の玄関まで、領の馬車が各領の関係者迎えに行く事になった。富豪の娘とは話す機会も無かったが、何でもこの秋から貴族学院に入学するそうなので会う機会があるらしい。シルビアから礼を言われた。
「マリエール、今日は本当にありがとう。今日の礼は必ずさせて貰う。」
マリエールは、お役立てて光栄です。と応えておいた。ルシアからは、
「今日ぐらい、きみとの実力差を感じたのは始めてだったよ。もっと頑張らないと取り残されるな。」
と言われたので偶々感知魔法は私に相性がいいだけ。と応えた。
夕食の時父親に聞かれたので正直に応え、呆れられた。父親は、
「お前に言っても仕方ない事かも知れないが、いかに必要な事かも知れないが、魔法は人を殺める道具ではないと信じる。いかに危険が有ろうと人が人の命を奪う事は上の者の命令か正当な防衛の時のみだ。お前のやった事は警官を守るためだったのだろう。しかし、同様な効果は殺さずとも得られたのではないか。」
父親の言葉は、マリエールの心に染み込んだ。火事場現場から救った命の様に、誘拐犯にも生きる権利が有ったかも知れない。少なくともマリエールが裁いていい筈が無い。マリエールは、
「肝に命じます。」
と応えた。父親はマリエールを注意した事で食事の雰囲気を暗くしたのに気付いてマリエールを褒め始めた。
「国王陛下も今回のお前の活躍を褒めてみえた。今度は国王陛下の感謝状を頂けるかも知れないな。」
話題を変えられてもマリエールの心の傷は癒される事はない。人はたとえ悪人だとしても自分が殺す判断をしてはいけない。マリエールは強く思った。そのせいで自分が死ぬとしても。
父親の言った通り、シルビアは警察庁長官と国王陛下の連名で感謝状と金一封が渡された。今回の第1殊勲者はマリエールだと書かれいる。成人ならば就爵させていいほどの殊勲だが未成年であるため呼んで賞する事も叶わないが、いずれの日にか直接礼がいいたいと国王陛下が言ってみえたとシルビアに言われた。この人国王陛下とそんな話出来るのかな、と思った。父が咳こんで、
「そういう話をシルビア殿がお聞きになったという話ですよね。」
シルビアは頷いた。警察庁長官か誰かに聞いた話をしてくれたようだ。ちなみにシルビアの話では誘拐犯の一味の供述からアジトが判り、多くの盗賊達と金品が見つかったらしい。また富豪から娘を助けてくれたお礼として大金貨10が寄贈されたが国王はマリエールに渡すべきだというけどマリエールも渡されても困るだろうと国が預かる事になったそうだ。
私はシルビアに、人を殺してしまった事を悔いていると話た。シルビアは、
「本来、あんな危険な場にはきみを巻き込むつもりは無かった。しかし私のミスで敵方より少ない警官しかいなかった。仕方なくきみに参戦をお願いした。本来私ときみに上下関係はないが、臨時的に私が上司になりきみに命令した。私にとっても痛恨のミスだ。恨むなら私を恨め。決して自分を攻めるな。」
シルビアは涙ぐんでいた。
シルビアに、人を殺した事を後悔していると告げた。シルビアはシルビアのミスでマリエールを巻き込んでしまった。命令したのは私だ。恨むなら私を恨め。自分を攻めるなと言った。