第4章 「プライベートビーチを明け渡して」
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Ainova AI」を使用させて頂きました。
風光明媚な友ヶ島要塞での合宿研修というリゾートムードに開放的な気分になっちゃったのか、或いはビキニ水着という露出度の高い装いにお互い欲情しちゃったのか。
葵ちゃんとフレイアちゃんの二人は、普段にも増してムラムラと昂っていたんだ。
ああも堂々としていると、傍観している私の方が逆に気まずくなっちゃうんだよなぁ…
そんな私に助け舟を出してくれたのは、他ならぬ美鷺ちゃんだったんだ。
「さてと、千の字。ちょっとアタシに面を貸してくれねえかな?この砂浜、今からプライベートビーチになるそうだよ。」
「えっ…あっ、うん!そうだね、美鷺ちゃん!」
この一言は本当に有り難かったね。
何せ私なんか、どのタイミングで切り出そうかと迷っていたんだもん。
「それじゃ、葵ちゃんにフレイアちゃん。私達は宿舎に帰るから、どうぞごゆっくり!」
そうして平静を装いながら駆け出した私だけど、振り向いた瞬間には顔が耳の辺りまで真っ赤になっちゃっていたんだ。
きっと美鷺ちゃんも、私と同じ顔をしていたんだろうね。
「ありがとう、美鷺ちゃん!千里ちゃん!私達、もう暫くの間ゆっくりしてくからね!」
「御二方とも、御心遣い感謝申し上げますわ!」
それに比べて、あの二人と来たら…
仲が良くて御盛んなのは結構だけど、こうして見せつけられる私達の身にもなって欲しいなぁ。
昔から「恋は盲目」とは言うけれども、流石にちょっと勘弁して欲しいよ。
あまりにも開けっぴろげな葵ちゃんとフレイアちゃんから逃れるようにして退散した私と美鷺ちゃんだけど、しばらくの間は毒気に当てられたみたいに口がきけなかったの。
やがて何とか気持ちを切り替えたのか、美鷺ちゃんが吐き捨てるように呟いたんだ。
「全く、昼間からのぼせやがって。あの色ボケ連中と来たら本当にしょうがねぇな…今回の合宿研修を、新婚旅行か何かとでも勘違いしてんのかよ。」
一切の情け容赦も忖度もない辛辣な物言いだけど、美鷺ちゃんの一言には私も大いに共感してしまったの。
何しろ葵ちゃんとフレイアちゃんの二人ときたら、普段の当直シフトもあの調子だからね。
確かに堺県第二支局の宿直室はビジネスホテル並に設備が整ってはいるけど、毎度のように二人で示し合わせて当直シフトに入っているんだからさ。
二人の真意が何処にあるかは一目瞭然だよ。
それも毎回のようにダブルベッドのツインルームを予約しているんだから、支局の宿直室をホテルか何かのように思っているんだろうな。
そうは言っても、合体前提の個人兵装を運用しているなら心も身体も一つに出来る程に親密なのは好都合な訳だし、二人が逢瀬に夢中になって勤務に穴を空けた事は一度もない訳だからね。
明王院ユリカ支局長を始めとする上層部の御歴々や幹部将校の皆様方が何も仰らない以上、同輩である私がとやかく口を挟むなんて差し出がましい事この上ないよ。
しかしながら、多少の私見は述べさせて貰っても罰は当たらないよね。
「それに関しては無きにしも非ずって感じなんだよね、美鷺ちゃん。何しろあの二人と来たら、支局の酒保で水着やら下着やらをアレコレと選んでいたんだよ。本当に気合いが入ってるよね。私なんか、小四の夏に買った水着をそのまま持ってきているってのに。」
「えっ!千の字、それは本当か?」
さっきまでの苦虫を噛み潰したようような渋っ面から一変、美鷺ちゃんは呆気に取られたような顔をして絶句していたの。
まあ、それも無理はないだろうな。
何しろ今こうして私が着ている黒ビキニは、三角形の布を細い紐で繋いでいる割と攻めたデザインだからね。
今年の四月に高二に進級する現在の私が着る分には何て事はないけど、小学四年生が着るには派手過ぎるかも知れないな。
それに小四の時の水着を十六に成長した今もそのまま身に着けられるって点にも、色々と聞きたい事はあるだろうね。
私としても、最初は新しい水着を買う予定もあったんだよ。
通販サイトで見た赤いビキニなんか、割といい感じだったからね。
同じ黒いビキニでもフリルがついているのを新調する事も検討したっけ。
でも、最終的にはあり物で落ち着いたんだよね。
昇級すると部下の子達に奢る機会も自ずと増える訳だから、倹約できる所はしておかなくちゃ。
「その通りだよ、美鷺ちゃん。これでも私、小学生の頃は発育が良くて大人っぽく見えていた方なんだ。この水着を着て浜寺公園のプールや大浜の海水浴場へ行くと、中学生に間違われたものだよ。」
「物持ちが良いというのか、何というか…まあ、千の字がパッと見で中学生に間違われるのは今も同じだけどな。」
それを言っちゃおしまいだよ、美鷺ちゃん。
要するに私は小四の辺りで急成長して、その後は殆ど体型に変化がなかったって事だからね。
事実だから否定出来ないけど。
だけど、今の私がこうなっているのには外因的な要因も大きいと思うんだ。
今でこそこうしてピンピンしている私だけど、一年程前までは病室のベッドに機械で繋がれて昏睡状態の身の上だったからね。
それと言うのも、三年前に参加した「黙示協議会アポカリプス掃討作戦」の時に重傷を負ってしまったからなんだ。
この約三年間の昏睡状態で私は中学生活の大半を棒に振った訳だけど、もしかしたら第二次成長期までも棒に振ってしまったのかも知れないなあ。
とはいえ、今更になって四の五の言っても仕方ないよね。
そもそも私が昏睡状態になる遠因となった邪教集団の黙示協議会アポカリプスは三年前の掃討作戦で壊滅しちゃった訳だから、何処に文句をつけたら良いのやら。
殷周革命で活躍した太公望呂尚曰く、「覆水盆に返らず」。
過ぎた事は綺麗さっぱり、水に流してしまわないとね。