第26章 「大団円、肉食ローペン殲滅完了」
まあ、私としてはローペン達の注目を集めている今の状況は大助かりだよ。
何故なら私はあくまでも陽動であり、忍ばせた伏兵こそが本命なのだからね。
そうして機が熟したタイミングで、反対側の座標からもう一つの竜巻が発生したんだ。
「とうっ!スラッシュボウガン・ドリルスピン!」
うん、良い感じ!
回転速度も軌道も申し分なしだよ。
私、覚葉ちゃんなら必ず成し遂げてくれるって信じてたんだ。
何しろ覚葉ちゃんのスラッシュボウガンは私のレーザーライフルと同じく、撃って良し斬って良しの個人兵装だからね。
特に実体刃になっている弓の刃渡りは割と長めだから、高速回転した時にはミキサーの刃みたいに敵をズタズタに引き裂くんだよ。
そしてボス格の大型ローペンが伏兵に気付いた時には、もう遅かったね。
「ギギッ!?」
「凝縮エネルギー弾を食らうと良いよ!ブラストショット!」
そうして巧みに後ろを取った覚葉ちゃんのスラッシュボウガンが火を吹き、蛍光色のエネルギー弾がローペンの胸部を見事にぶち抜いたんだ。
言うまでもない事だけど、あの明滅する発光器官なんか木っ端微塵になっちゃったんだから。
「ブッ、ガハッ…」
「ケケッ?ケエエエ?!」
そうして胸部をぶち抜かれた大型ローペンが血反吐を吐いた次の瞬間、群れの個体達の統制が綺麗さっぱりと失われたの。
幾らボスが巧みに群れを操っていたって、その意志や指令を伝える発光器官が破壊されたら形無しになっちゃうんだよね。
もう見事なまでに浮き足立っちゃったんだから。
「うむ、見事な戦果だ!吹田千里少佐、根来覚葉少佐!頭を潰した以上、これで彼奴等は烏合の衆に成り下がった!」
「はっ!有り難き幸せに存じます、新宮沖美艦長!」
上官殿のお誉めの御言葉は喜ばしいけど、最後の後始末はキッチリつけなくっちゃ。
古人曰く、「終わり良ければ全て良し」だよ。
「良し…仕上げと行こうか、千里ちゃん!」
「任せてよ、覚葉ちゃん!カッコ良く決めてやろうよ!」
新たに出来た戦友に頷きながら、私は改めて気合を入れたんだ。
「忌々しい大型ローペンめ…これが私の大和魂と銃剣突撃だ!人類防衛機構、万歳!」
「これで終わりよ!スラッシュボウガン、弓刃斬!」
そうしてレーザー銃剣が敵の脳天に深々と突き刺さる衝撃が両手に伝わった次の瞬間、スラッシュボウガンの刃が大型ローペンの胴体をザックリと斬り裂いたの。
特定外来生物の身体ってのは常識外れに頑丈だから、こうして徹底的に破壊しなきゃならないんだよね。
「離脱するよ、覚葉ちゃん!」
「よし来た、千里ちゃん!いっせ~ので!」
そうして離脱に要する反動を得る為に蹴飛ばした次の瞬間、大型ローペンの身体はバラバラに引き裂かれて太平洋に没したんだ。
どうやら今の私達の蹴りが、傷付いたローペンの身体を破壊する止めの一撃にになったみたいだね。
「むっ…」
「はっ!」
こうして私達二人が紀ノ国の甲板に降り立った頃には、ボスの統制を失って烏合の衆と化したローペンの残党は粗方撃ち落とされていたの。
これじゃ私と覚葉ちゃんが再出撃した所で、空しくUターンするより他は無いよ。
それに点在する残存勢力にしたって、合体機構の搭載された個人兵装を使う子達によって仕留められちゃった訳だしね。
「準備は良う御座いますわね、葵さん?」
「勿論だよ、フレイアちゃん!神雷!断罪剣!」
相思相愛の思慕の力は、正しく驚嘆の一言だよ。
「一気にケリをつけるよ、弘美!残りの奴等を一網打尽にしてやるんだ!」
「よしきた、海空姉さん!双刃長棍大回転!」
双子の姉妹という血縁の絆も、阿吽の呼吸の裏付けとしてはこれ以上ない説得力だね。
高出力で破壊力抜群の合体兵装というのは、やっぱりダイナミックで浪漫があるよ。
私としては、ちょっと暴れ足りないかな…
まあ、私としてはこれはこれで良い勉強の機会にはなった訳だけどね。
何しろ葵ちゃんとフレイアちゃんが互いの個人兵装を合体させたガンブレードランサーで放つ神雷断罪剣は私も実戦で何度も見かけているけど、高野姉妹のガントンファーと電子三節棍を組み合わせた大技は、実戦だとこれが初見だからね。
他の支局の子達の実戦を間近で見られる機会というのは、大事にしたいもんだよ。





