第25章 「決死の突撃!レーザーライフル・ドリルスピン!」
駆除作戦にケリをつけるべく行われた艦砲射撃は、その威力に違わずローペンの群れに大打撃を与えられたよ。
だけど群れのボスと思わしき大型ローペンは、傷を負いながらも今だに健在なんだよね。
何と驚くなかれ、群れの個体を盾代わりにして凌いだんだ。
ローペンは特定外来生物の中でも知能の高い種族なんだけど、奴はとびきり奸智に秀でているみたいだね。
そうやって今まで生き延び続けては群れを再建し、パプワニューギニアを始めとする各地の漁場を荒らしていたんだろうな。
だけど私達が来たからには、その忌まわしき遍歴にも終止符を打たせて貰うよ。
こうして人類防衛機構極東支部近畿ブロックの管轄地域にノコノコと迷い込んだ事を、地獄の底で後悔させてやろうじゃない。
「よし、だったら!」
意を決した私は手近なローペンを射殺すると、直ちにエアバイクをターンさせたの。
「小職は堺県第二支局所属の吹田千里少佐であります!紀ノ国艦橋、応答願います!」
そうして自機の安全を確保すると、母艦である強襲揚陸艦への通信回線を開いたんだ。
「新宮沖美艦長、ここは小職と根来覚葉少佐の両名が突破口を開かせて頂きます!頼まれてくれるかな、覚葉ちゃん?」
「えっ…?分かった!やってみるよ、千里ちゃん!」
急に話を振られたにも関わらず、戸惑ったのは一瞬だけ。
直ちに話に乗ってくれた対応力は、流石は人類防衛機構の特命遊撃士だよ。
「そうか、よし!しかし深追いは慎めよ、吹田千里少佐。」
「はっ!承知しました、新宮沖美艦長!」
こうして本作戦の指揮官であらせられる新宮沖美艦長のお墨付きも無事に頂けた訳だし、後は自分達の力量と絆を信じて行くだけだよ。
群れのボスと思わしき大型のローペンを速やかに仕留めるべく、私と覚葉ちゃんは直ちに行動に移ったんだ。
「性懲りもなくやって来やがったなぁ…雑魚共に用はないんだよ!」
ボスを守るためにローペン達が陣形を整えたけど、そんなのは私もお見通しなんだよ。
こっちには機銃掃射の用意があるからね。
「二十ミリ機銃、撃ち方始め!」
そうして再び紀伊水道の上空に、機銃掃射の剛烈たる銃声が鳴り響いたんだ。
リズミカルな銃声も硝煙の芳香も、何から何まで先程同様に心地良いね。
だけど今回に関しては酔い痴れる訳にもいかないよ。
何しろこれからが、私と覚葉ちゃんの花道なんだからね。
「吹田千里少佐、突貫します!」
多機能ヘルメットの脳波コントロールが正常である事を改めて確認すると、私はエアバイクの車体を軽く蹴り上げて宙に舞ったんだ。
こうして賽は投げられた以上、失敗は許されないよ。
「いよっと!」
そうして腹這いの姿勢でレーザーライフルを構えたら、後は足首を基点にして時計回りに身体をギリギリと捻るだけだよ。
「レーザーライフル・ドリルスピン!」
回転速度を増していき、切りもみ回転で敵に真っ直ぐ突っ込んでいく。
この荒技こそ、私が得意とする「レーザーライフル・ドリルスピン」だよ。
「うおおおっ!突撃だぁ〜っ!」
「ケケッ?!」
さながら意志を持つ竜巻のように豪速で突っ込んで来る私に、ローペン達も驚いているみたい。
だけど、真に驚くのはこれからだよ。
「お次はコイツだ!レーザーライフル・フルオートモード!」
高速回転を続けながら、私は個人兵装のモードを手早く切り替えたの。
後はもう、やる事は一つだね。
「スパイラル・シューティング!」
フルオートに切り替えたレーザーライフルの銃口から真紅のレーザー光線を乱れ撃ちしながら、私は敵陣へと突っ込んで行ったの。
エアバイクによる機銃掃射にも対処しなければならないローペン達は、すっかり浮き足立っているよ。
「目標捕捉!レーザー銃剣で刺し殺してやる!」
「ケエエエ!」
殺意全開で突っ込んでくる私の気迫に、ローペンの群れも流石に猛り狂っているね。
群れのボスを殺されまいと、必死の抵抗を示しているよ。
こうして高速回転をしていても、鉤爪だの嘴だのが時々掠めてくるんだからね。
ナノマシンで強化した特殊繊維製の遊撃服や多機能ヘルメットがなかったら、私にも相応の生傷が出来ていたかもなぁ。
もっとも特命遊撃士である私達の身体は、静脈投与されたナノマシンや強化薬物なんかで戦闘用に改造されているからね。
耐久力にしても自然治癒力にしても、生身の人間とは比べ物にならないんだ。





