第23章 「紫電の槍、光弾の刃!愛と破壊の二重奏」
こうして二十ミリ機銃の軽快な機銃掃射で火蓋を切られたローペン駆除作戦において、私達は水を得た魚の如く暴れまくったんだ。
「このフレイア・ブリュンヒルデ少佐と相対した事を、末代まで後悔させて差し上げますわ。」
ヘアバンドで整えられた金髪を戦場の風に揺らしながら、フィンランド生まれの公爵令嬢が不敵な微笑を浮かべて立ち上がる。
そうしてエアバイクの上で仁王立ちになったフレイアちゃんの手に握られたのは、彼女の個人兵装であるエネルギーランサーだ。
「エネルギーランサー、起動!推して参りますわよ!」
スイッチの一押しで生成された紫色のエネルギーエッジは、紫色の力強い輝きを帯びていたの。
それはあたかも、少佐階級を持つ少女軍人の闘志を反映するかのようだったよ。
「エネルギーランサー・疾風紫電薙ぎ!」
リーチの長い槍型の個人兵装による一閃は、正しく人為的なソニックブームだったよ。
ローペンの群れは物理的に薙ぎ払われた個体だけではなく、その背後にいた集団にも多大な損傷を受けたみたいだね。
「ケエエエッ!!」
そうして手傷を負わされた事で、一気に逆上してしまったのだろう。
翼や胴体から真新しい鮮血を迸らせて殺到してくる個体が少なからずいたのには、私も驚いたね。
ああして痛い思いをしたってのに、自ら命を縮めるような真似をするだなんて。
昔から「短期は損気」って言うけど、あれは本当だね。
「あら、まあ…それ程までに死に急ぎたいのでしたら、御望み通りにさせて頂きますわよ!」
しかしながら、フィンランド生まれの公爵令嬢は全く動じない。
紫色の輝きを放つエネルギーランサーを両手で携え、エアバイクに跨りながらサッと左前半身構えの姿勢を取ったんだ。
「参りますわよ!エネルギーランサー、流星千本突き!」
そうして繰り出される突きの連撃は、正しく凄絶の一言だよ。
きっと常人の目には、余りにも速すぎて残像が見えちゃっているんじゃないかな。
「ホホホ!さあ…冥土の土産に、とくと御覧あれ!」
風切音と合わせて焦げ臭い匂いが漂っているけど、もう摩擦熱で空気まで燃え上がっているじゃない。
流星千本突きの名前は、伊達じゃないね。
そうして発光器官ごと胸部を抉られたローペン達は、物言わぬ肉塊と化して落ちていくしかなかったんだよ。
後は太平洋の藻屑と消えて、朽ち果てて自然に返るだけだね。
「ホホホ、ざっとこんな物ですわ。いかがで御座いまして、葵さん?」
「やっる〜っ、フレイアちゃん!それでこそ、私が身も心も捧げるに相応しい愛しい人だよ!」
パートナーの華々しい戦果に黄色い声を上げているのは、フレイアちゃんの想い人である神楽岡葵少佐だった。
フレイアちゃんと同様に御子柴高校の赤いブレザーを纏った姿でエアバイクの上にすっくと立ち上がり、多機能ヘルメットからはみ出たピンク色のストレートロングヘアーを戦場の風に揺らしながら、個人兵装である可変式ガンブレードを両手に携えて。
ううむ、こうして改めて見るとなかなか珍妙なスタイルだなぁ。
この様子だと、どうやら葵ちゃんもエアバイクの操縦を脳波コントロールに切り替えて本格的な白兵戦に移るつもりだね。
私達が被っている多機能ヘルメットはエアバイクの操縦システムと同期されているから、個人兵装を取り扱いながらの操縦もお手の物だよ。
「それだったら私も、カッコイイ所を見せなくちゃね!これは惚れ直す事必至だよ、フレイアちゃん!」
そんな葵ちゃんの意気込みに応えるかのように、彼女を乗せたエアバイクは一気に敵陣目掛けて加速したんだ。
「神楽岡葵少佐、突貫します!撃ち方、始め!」
リズミカルな銃声を轟かせる二十ミリ機銃に負けじと、シューティングモードに変形されたガンブレードからは破壊光線が間断なく発射されているね。
この二種類の銃撃には、さしもの肉食ローペンも度肝を抜かれているよ。
しかも命中弾の尽くが、ローペンの腹部を的確に撃ち抜いているじゃないの。
ローペンの胸部で明滅する発光器官は、群れや仲間に意志を伝える信号のような役割も果たしているから、極力優先して破壊するよう推奨されているんだよ。
とはいえ高速移動しているローペンの発光器官をピンポイントに撃ち抜くのも相応の難易度がある訳だから、今回の作戦では致命傷を負わせられるなら何処を狙っても良いんだけどね。
「そ〜れっ!コイツラまとめて膾斬りだぁ〜っ!」
それで射ち漏らした標的はエアバイクで撥ね飛ばし、速やかにスラッシュモード変形させたガンブレードの刃でぶった斬るんだね。
撃って良しにして斬って良しの可変式ガンブレードを個人兵装に選んだ、いかにも葵ちゃんらしい戦法だよ。
私のレーザーライフルや覚葉ちゃんのスラッシュボウガンでも出来なくはないけど、射撃武器の有効射程距離やら斬撃装備の刃渡りやらで色々と差は出てくるからね。
昔から「餅は餅屋」とは言うけれども、やっぱり各々の個人兵装や特技に合った戦法を取るのが一番だよ。





