第15章 「友ヶ島要塞、波乱の夜」
挿絵の画像を作成する際には、「Gemini AI」を使用させて頂きました。
こうしてすっかり仲良しになった私と覚葉ちゃんだけど、意気投合出来たのは私達だけじゃなかったんだ。
「私と弘美のガントンファーとの電子三節棍にも合体機構が搭載されているけど、葵さんとフレイアさんのガンブレードランサーの合体技も凄いよね。特に演習で見せてくれた『神雷断罪剣』の破壊力たるや見事だったよ。」
「おっ!そう言ってくれて有り難いよ、海空ちゃん。だけど海空ちゃん達の個人兵装に搭載された合体機構も、それは見事な物じゃない。双刃の長棍に仕立て上げて一気にリーチを伸ばし、双子ならではの阿吽の呼吸で周囲の敵を一網打尽!これはなかなか出来る事じゃないね!」
一卵性双生児である高野姉妹の姉の方にお酌して貰いながらピンク色のロングヘアーを照れ臭そうに掻いているのは、御子柴高校一年A組のクラスメイトでもある神楽岡葵ちゃんだったの。
穏やかで明るい性格の葵ちゃんは、私にとっても良い友達だよ。
そもそも葵ちゃんの個人兵装であるガンブレードは、私のレーザーライフルとも相性が良いからね。
去年に堺電気館の帰り道で暴走タクシーに出会した時には、二人でタイヤを撃って止めたもんだよ。
だけど葵ちゃんと友達以上の親密さになるのだけは、私も遠慮しているの。
何故なら葵ちゃんの側に立つべき人は、もう決まっているのだからね。
「私と海空お姉ちゃんは双子ってアドバンテージがあるけど、葵ちゃんとフレイアちゃんのコンビネーションも見事な物だよね。個人兵装をバラで使う時だって、フレイアちゃんがランサーで突き崩した敵のガードに葵ちゃんがガンブレードで立て続けに乱射していたじゃない。日本人とフィンランド人という具合に国籍も違う二人が、ここまで見事なコンビネーションを発揮出来る…その秘訣には否応なしに興味が湧いて来ちゃうな。」
「ホホホ…あらまあ、御誉めに与り光栄で御座いますわ!しかし、そう仰る程に難しくは御座いません事よ。」
ロックにしたモルトウイスキーのグラスを掌で玩びながら笑ったのは、やはり御子柴高のクラスメイトであるフレイア・ブリュンヒルデ少佐だったの。
と言っても、葵ちゃんと同様に御子柴高の制服である赤いブレザーとダークブラウンのプリーツミニを着ている訳だから一目瞭然だけどね。
幾らお互いの連帯感を強調したいからって、遊撃服と全く同じ素材で御子柴高の制服を特注しちゃってさ。
申請だって手間もかかるだろうに、よくやるよ。
西洋人形のように整った色白の美貌と白いヘアバンドで美しく束ねたブロンドの上品さは、フィンランドの名門貴族であるブリュンヒルデ公爵家の長女という高貴な出自と見事に合致しており、口元を隠して笑う仕草もとっても上品だったの。
こうして澄ましている分には、フレイアちゃんは紛れも無く華族の御嬢様だね。
だけど葵ちゃんと一緒にいる時に関しては、フレイアちゃんを「上品な公爵令嬢」という属性で呼ぶ気にはあんまりなれないんだよね。
それと言うのも…
「その秘訣は何を隠そう、私と葵さんを固く結んだ愛の力ですわ。」
「あ…愛?」
「う?」
自信満々で言い切るフレイアちゃんとは対照的に、和歌山支局の高野姉妹は呆気に取られた顔をしていたの。
「そう、愛の力で御座いますわ。お互いを慈しむ相思相愛の心があれば、如何なる敵であろうと百戦危うからずで御座いましてよ。そうではなくて、葵さん?」
「もう…参っちゃうなぁ、フレイアちゃんったら。こんな所でそんな事をしちゃったら和歌山支局の子達だけじゃなく、大阪支局や堺県第一支局の子達にも私達の仲が一目瞭然じゃない。」
参っちゃうのはこっちの方だよ、葵ちゃん。
幾ら口でそんな事を言ったって、抱き寄せられて赤いブレザーの襟元から手を突っ込まれても全く抵抗しなかったなら説得力も何もないじゃない。
それどころか、フレイアちゃんの肩に積極的にしなだれかかっていっちゃっているし。
「まあ…何を仰るのかしら、葵さん。私達の仲にやましい点がない事は、葵さんが何方よりもよく御存知ではなくって?」
「それはそうなんだけどさ。二人っきりの方がもっと大胆で凄い事が出来るとは思わない?誰もいないタイミングで入った露天風呂なんか、開放的で最高だったじゃない。」
ああ、やっぱりこの二人だったんだ。
締めの一風呂と洒落込んで缶ビール片手に大浴場に行ったら、露天風呂の方から艶めかしい嬌声が聞こえて来たんで慌てて回れ右で帰ったけど。
「あっ、ああ…そうなんだ…」
「それはちょっと私達じゃ真似出来ないよね、海空お姉ちゃん…」
あーあ、高野姉妹も完全に引いちゃったよ。
本当に仕方ないなぁ。
「言った通りだろ、丹の字?うちって割と変わり者が多いって。あそこで板わさをやってる千の字だって、少し前までは選民思想と狂信の気があってさ。佐官になった今は、多少は全うになったがよ…」
「いやいや、そういうのは忠誠心の厚い軍人なら誰でも罹る、謂わば麻疹みたいな物ですよ。」
そんな私達の遣り取りを傍観するような感じでウツボの揚げ煮を肴に南高梅製の梅酒をやっていたのは、蓮っ葉なスケバン口調の手苅丘美鷺ちゃんと、和歌山支局の丹生桂子少佐の二人だったんだ。
西洋式サーベルと軍刀という具合に得物の種類は違うけど、すっかり剣士として意気投合出来たみたいだね。
美鷺ちゃんの余計なアウティングだけは、ちょっと頂けないけど。
ここは後で、キッチリと釘を差して置かないとなぁ…
まあ、和歌山産の板わさの美味しさに関しては否定できないけど。





