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私は特別(セイレン視点)

((結局この身体も耐えられなかったわね。欲望の気は人一倍強いのに、残念。キャンベルを追放しなければ、まだまだ保ったのにね))


(うるさい。うるさいうるさいうるさい)


「げほっ…げほっ…うっ…」

シーツに染みた鮮血がまだらな模様を描いている。


私は完全に隔離されてしまった。父からも母からも拒絶されている。


この国には医者など存在しない。治癒する者は聖女だからだ。

毎日聖女の祈り歌を聴いていれば寿命や天命でない限り、病や怪我はたちどころに治る。

私が聖女の真似事をするということは即ち、国民の健康は保証されないということ。

国民がいくら死のうが私には関係ない。「それが天命、寿命である」ただそれだけのこと。

でも私が苦しむのは別だ。

まだ若い私が突然こんなことになるなんて大きな誤算だ。

治すにはキャンベルに祈り歌を歌ってもらうより他にないんだろう。

冗談じゃあない。あの女に頭を下げて歌ってもらうなど、プライドが許さない。


(怖くなんか…怖くなんかない。大丈夫…)


王太子からは三日ほど続けて手紙が届いたが、今ではぱったりと音沙汰がない。


コンコンコンと三回のノックが鳴らされた。

口元を布で覆った衛兵たちが入室してくる。

「女性の寝室に大勢の男性が入ってくるなんて、無礼じゃなくて?」

ザザッと横一列に両手の数ほどの衛兵が並ぶ。

「セイレン・シャンドラ伯爵令嬢。王命を預かりました。至急登城せよ、とのことです」

「見て分からない?私は今…」

「王命です。セイレン・シャンドラ伯爵令嬢」

皆一様に感情を表に出すことはない。死んだ目は一生合いそうにもなかった。





✳︎ ✳︎ ✳︎





城に着くなり、私はバルコニーへ押し出された。

「聖女様!」「早く!早く!」「祈り歌を歌ってください!」「なぜ毎日歌ってくれないのですか!」


「げほっ!…」

後ろを見ると王太子が「早く歌うんだ」と言った。

「私が毎日血を吐いているというのに…心配するどころか…げほっ!げほっ!」

咳き込むと、袖で口元を覆ってあからさまに侮蔑の目で見られた。

「王命だ。早く歌え。あいつらを黙らせろ!」


ならば、私の歌でどこまでも((おかしくしてやろうよ))

聴け、1オクターブ高い私の祈り歌を。


「聖女様!」「セイレン様!」「この子を助けてください!!」

高く高く持ち上げられた赤子を無感情に見た。

あの子もその内死ぬんだろう。


雲を突き抜けるように、地が浮き上がるように、私の歌が響き渡る。

一音ごとに喉の奥から血の味がした。

私の様子に嫌悪した王太子も、この歌だけはうっとりと聴いている。

「心地いい」そう口元が動いた気がした。


((今こそ完成された))


最後の一音を歌い上げ、歓声と共に私は倒れた。

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