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喀血(セイレン視点)

私の歌声を求めて、連日多くの人々が王城に押し寄せた。

王太子殿下と共にバルコニーへ姿を現すだけで響き渡る歓声にゾクゾクする。


(なんて優越感)


この世界のあらゆる生命エネルギーを取り込む様に肺いっぱい空気を吸い込んだ。


キャンベルよりも1オクターブ高音の祈り歌が大地に轟く。草木が戦ぐ。空が畝る。


(なんて心地いいの!私、いくらでも歌えるわ!)


人々が私へと手を伸べる。

王太子はとろんとした目で私を見た。

歌い切った私にいつまでも止むことのない絶賛の拍手が送られる。


「聖女様!!」「セイレン様!!!」「もう一度お姿をお見せください!!」「聖女様!」


王城の応接間へと通された後も人々の絶叫の声は止まない。


「君は最高だ、セイレン」

「サハリン様…」

そうすることが当たり前の様に、口付けを交わす。


「君の歌声を永遠に聴いていたいよ。平民のキャンベルより、ずっと…魅力的だしな」


(そんなの当たり前じゃない)


外ではまるで嵐の様に人々の声が止まない。

「大変です!王太子殿下!シャンドラ伯爵令様!」

火急の報せに、王太子は明らかにムッとした。

「…なんだ、申せ」

「シャンドラ伯爵令嬢様の歌声を望むあまり、熱狂した者たちが暴徒と化しております!」

「そんなもの、お前たちで何とかしろ。何のための衛兵なのだ」

「し、しかし…あまりにも人数が多く、場は混乱を極めております!!」


王太子はため息をついて、のそっと立ち上がった。

「…君が今一度、バルコニーへ行ったらいいのじゃないか?」

「え?私が、ですか?」

「君がもう一度歌えば、納得して落ち着くんだろ」


(なんなのよ!私を何だと思っているのよ!?)


でも、そんなに私が良いのかと思うと、満更でもない自分がいた。


(仕方ないわね)

((もう少し、もう少しだ))


私の中で誰かが何か呟いている。

このところよく聞こえる。気味が悪いけれど、私の行手を阻むものでなければ捨て置くわ。


「聖女様!!」「もう一度!もう一度!」「聖女様!」


さあ、聴いて。1オクターブ高い、私の祈り歌。


みんな、なんてうっとりした顔で聞いているのかしら。

この場の全員が私の虜になっている。

簡単な旋律。だけれど、心酔するほどの力を秘めた歌。

キャンベルが歌ったのでは、ここまで人々の心を掴むことはない。


最後の一音に最も力を込めて歌い上げた。

ある者は手を振って、ある者は拳を突き上げている。大きな拍手が響き渡った。

その時、喉に違和感を感じた。

「げほっ!けほっ!」


私の手のひらにはべっとりと血がついていた。


「な、んなの…?」

さあっと血の気が引く。

「あ、あ、さ、サハリン様…」


何だという顔で覗き込んだ彼は口を押さえて尻餅をついた。

「お前!それ!伝染病じゃないだろうな!?」

「そんな…!!たすけ…助けて!!!誰か…治せる人を呼んで!!!!」

「馬鹿な。治せるのは聖女しかいない!!!!そして聖女は自らの病を治すことはできぬ!!」


(キャンベル…?)

助けて。

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[一言] 「大変です!王太子殿下!キャンベル様!」 火急の報せに、王太子は明らかにムッとした。 「…なんだ、申せ」 「キャンベル様の歌声を望むあまり、熱狂した者たちが暴徒と化しております!」 …
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