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外伝(ハイドレンジア視点)

五百年経ったか、千年経ったか。

私は相変わらずここで一人、スコーンを焼いている。


時折池に一瞥をくれるけれど、眺めるほどの勇気はなく、ましてや、人間が聞こえるかもわからないメッセージをくれてやる気分にもならなかった。

だから、自分の国がどうなっているか等、知る由もなかった。


『よし、今日は上手くできたな』

ナッツのスコーンをカゴに詰めて木の下でお茶を飲もうとしたら、スコーンが手から滑り落ちた。

ぽちゃん、と池に飛び込んでしまったので

『あーあ、せっかく作ったのに』

思わずそんな言葉が出た時


「だあれ?誰かいるの?」


少女か成人女性か、私は人間の年齢がよくわからないけれど、とにかく人間の女が辺りをキョロキョロ見渡した。


『…私の声が聞こえるのか?』

「やっぱりなんか聞こえる!!なにこれなにこれぇ…ねえ、誰なの!?」

耳を押さえながら辺りを見回している。


『…私の名前はハイドレンジア。この国の神だよ。君の名前はなんて言うんだい?』

「えっと…?私の名前は、ミンミだけど…。神様…って本当?」

『そうだよ、この国を作ったんだから。敬って』

「随分偉そうねえ」

『ふふ、久しぶりに人と話したから、もう頬っぺたが疲れてきたよ』

「なにそれ。……あれ?泣いてるの?」

『え?そうかな…ぐずっ…はーっ』

「やっぱり泣いてる。どこか痛いの?神様のくせに?」

『神のくせには余計だ。ぐすっ』

「痛い痛いのおまじない、してあげるね」

『え?』


〜♪


音程が所々違うし、歌詞も意味不明だけど、これは…

『聖女の、祈り歌…』

「…?なにそれ。怪我したり風邪引いたりしたら、みんな歌うでしょ、普通。神様何も知らないじゃん」

『とことん無礼だ…』

「お祭りで歌ったりするよ。"セイジョのカンシャサイ"とか言うやつ。出店も出るし、キャンベルぶどうのジュースが配られるよ!国で一番盛り上がるの。確か、来月じゃなかったかなあ。ハイドレンジアも一緒に行こうよ」

『……君…その祭りの由来を知っているかい?』

「んー?考えたことないや。じいちゃんも知らないんじゃないかなぁ。」


それにしても、地面が見えない。

何に覆われているんだろう。

木よりも高く聳え立っている石の様な建物はなんなのだ。

千年ほっとくとこれだ。

この国は、一度作り直した方が良さそうである。

(壊すか)


「ねえ、ハイドレンジア!!白いダリアが咲いた!」

『……』

「私が育てたんだよ!感謝祭までに育てて、お祭りで持って歩くと幸運が訪れるんだよ。まだまだ咲きそうだから、これハイドレンジアにあげるよ!あれ?どうやってあげればいいんだろう?ねえ、どうやってあげれば良いの?」


ふっと笑いが漏れる。久しぶりに笑ったので、口端が切れた。

『…ああ、頂こうかな。神殿にでも供えてくれ』

「はぁーい」


ミンミが駆けて行く。

もう少しだけ、この国の行末を見守ろうと思う。

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