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聖女のための感謝祭にて

フカフカの赤いソファがついた馬車に揺られて、国中の人達に手を振る。

わあわあと、たくさんの人が街頭に出て手を振ってくれている。


「キャンベル、見て」

ルイスが指を指したので良く見ると、国民は皆白い花を胸にさしている。

子ども達はその花を、手に持って掲げていた。


「僕も」

と言うルイスの胸にも同じ白い花があった。


「ダリア、ですか?」

「そう。君に内緒でね、昨日までに騎士団や衛兵や、それから神殿の神官や…みんなが国中に配って回ったんだ」

「ええ!?それは大変だったでしょう」

「それくらいみんな君に何か心の籠ったサプライズをしたかったんだよ。国民の反応もなかなか良かったらしいぞ」

「まあ!そうでしたの…ありがたいことです」

「…知ってるかい?白いダリアの花言葉は、『感謝』だ」


思わず泣いてしまいそうになって、顔を伏せた。

(国中に行き渡るほどのダリアを準備したの?)


私のためにここまでやってくださるなんて、この人はなんて純真なのだろう。


「それからこれはキャンベルに」

そう言って私の胸にそっと差し込んだのは勿忘草。

「僕からキャンベルに、勿忘草の花言葉、『真実の愛』を捧げよう」

手の甲に、ちゅっと落とされたくちづけに、触れた部分が熱くなる。


(ルイス、貴方ったら)


聖女が廃止され、医療制度が整おうとしている今、私にこの花をくれるなんて。

勿忘草のもう一つの花言葉は『私を忘れないで』でしょう?

これもきっと、その為の感謝祭なのだ。この国を命懸けで守り抜いた聖女達の。


「いつも、貴方は私を気にかけてくださって、私の方こそルイスに『感謝』ですわ」

コツン、とおでこ同士を触れ合わせた。





馬車を降りると、すごく久しぶりに王城のバルコニーに出た。

何百回と見たこの光景だけれど、今日はなんとも格別な気持ちである。

一際大きな歓声が私とルイスを包んだ。

国王であるルイスが左手を差し出すと、その歓声はピタリと止む。

微笑み、私を見つめたその視線の何と心強いことか。

私は頷いた。


「皆さん、私は今までここで祈り歌を捧げてきました。病める人も、そうでない人も、日々の健康を願い、それを聴いてくれていたと思います。今日も元気でいること、大切な人が毎日笑っていてくれることは当たり前じゃない。けれど、私たちは決して腐らず前を向かなければならない。未来への歩みをやめてはならないのです。これからは医療体制が整い、今までの様に常に健康でいられることが当たり前ではなくなるでしょう。隣人に優しく、自分に優しく、大切な人に大切だと伝える時間を作ってください」


〜♪


私は最後の祈り歌を捧げた。国民は手をあわせてそれを聴いている。目を瞑っている者もいた。


雲の切れ間から、日の光が一筋降りてきて私を照らす。まるで舞台装置のよう。

『忘れるな、お前は聖女なのだ』

世界がそう言っている様に感じた。

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