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聖女記

杭で打ち付けられたセイレンが泣き叫んでいる。

「許して!ねえ!キャンベル!ごめんなさい!私、嘘をつきました!平民の貴方が王太子妃になるのが許せなくて!ごめんなさい!!許して!ねぇ!助けてよ!!」


興奮しているのか、血を流しながらも懇願をやめない。


私は正直この人がどうなろうと知ったこっちゃないのだけれど、悪魔が最後に言った『この女を殺せばこの国に禍いを齎す』という言葉が気になってルイスに問うてみた。


「セイレンを殺して齎される禍いとはなんでしょう?」

「見当もつかないが…うーん…。母が持っていた文献を漁れば分かるかもしれないな」

「お母様の?」

「ああ、母方の曽祖母は悪魔封じした五人の聖女の内の一人だからな」


それで、王城の図書室にあるはずだというその文献を探すこととなった。

「お母様はルカの人では?」

「母方の先祖は代々ルカだ。曽祖母は聖女の力が目覚めたので、子どもをルカに残して王都に骨を埋めたらしいが」


本棚越しに会話しながら二手に分かれて上から下へと目線を移動させる。

「子どもを残して?」

「ああ。酷い話だろう?王族は聖女と婚姻関係を結びたがるが、既に夫も子供もいる曽祖母はそうならなかっただけ、良かったといえるかもしれないけど」


王族の神格化を図る、大変滑稽な伝統である。

だが、王族の中から未だ聖女が現れたことはない。

聖女の力に目覚めるのは、貴族女性にその傾向が強いと言われていた。平民の私は例外中の例外なのである。

セイレンが言うように、いくら聖女とはいえ平民が敬われるというのは、貴族女性にとって気持ちの良い話ではないのだろう。


窓の外は日暮れ。

処刑まで時間がない。

「あっ」


一冊の和綴の本に目が止まり手を伸ばすと、ルイスの手と重なった。

思わず二人とも手を引っ込めた。

「ご無礼を…」

ぼそりと「無礼なもんか」という言葉が聞こえてきて、顔が赤くなってしまった。今はそれどころではないというのに。


すぐにその本を取り出して机の上で開いてみる。

「聖女記 祈り歌は意図して音階を外して歌ってはならない、酷く心邪なる者がそうすれば悪魔がその身に宿るだろう。故に口外してはならない。 ……なんだか悪魔は存外簡単に人間に宿るのですのね…」

「続きがあるぞ。 人間とは簡単に悪魔を宿す。しかし悪魔宿れど、聖女が歌う真の祈り歌が響けば身体が乗っ取られることはない云々。 ……君を魔塔にやったのは完全なる過ちだということだ」


続きはこうだ。


王歴1215年、悪魔が王都に降臨す。きっかけは単純だ。隣国との争いに於いて、まずは聖女が囚われ殺されてしまったことにある。

リーレン・マルキュース子爵令嬢が悪魔に身を売った。経緯は不明。

五人の聖女が新たに目覚める。内一人は私である。

五人で共に悪魔を封じた。以下にその方法を記す。

必ず悪魔から悪魔自身の名前を聞き出し、その名前を呼び、魔王に連れ帰るよう、聖女の力によって命ずるのである。

以後同悪魔は百年間、魔王の監視下に置かれることとなる。


私たちが封じた悪魔は「エストリエ」男も女も関係なく惑わし、犯し、精気を吸う。

リーレン・マルキュース子爵令嬢ごと火炙りにする計画も持ち上がったが、

吸った精気がこの世界を覆い尽くし、生きとし生けるもの全てが魔族と化すだろうと「エストリエ」は言った。





読み終わるとすぐにルイスと共に駆け出した。

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