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処刑せよ

『!?』


悪魔が吐血した。

見れば、ルイスが悪魔の脇腹を刀で突き刺している。

『…痛いじゃないか。しょうがないなあ、人間は脆いからなぁ。一旦退散するよ』


しゅうしゅうと黒い靄に包まれる。

『いいか、この女を殺したら、この国に(わざわ)いをもたらすぞ。私はまた現れる。それまでにちゃあんと治しておけよ』


私とルイスとそれからセイレンが床に倒れた。


サハリン王太子は絶叫のような声を出した。

「早くその女を燃やしてしまえ!!今のうちに!!」


国王は呆けた顔でルイスをじっと見つめていたが、やがて重い口を開いた。

「その女がいる限り、また悪魔は現れるだろう。…殺してしまえ」


(聖女だなんだと持て囃しておきながら…)

セイレンが哀れに思える。

足を掴まれた。

ぎゅう、と引っ張られる。

セイレンだ。

「…助けて…助けてよ…痛い……ゴボッ」

口から脇腹から、血が溢れている。


ザクッと、私の足を掴むその手を剣が貫く。

「!?ぎゃあああああ!!!」


サハリン王太子だった。痛みに悶えるセイレンを冷ややかな目で見下している。


()()に触れるなよ、悪魔に身を落としたお前なんかが」


絶句するしかない。

(私に偽聖女の汚名を着せて魔塔に追放しておきながら、今度は聖女ですって?どこまでも頭がおかしいみたいね)


剣で貫いた手を、ぐりぐりと踵で踏みつけている。

まるで虫を殺しているみたいだ。

セイレンが何度絶叫を上げても、サハリンにはちっとも響かない。

ついこの前までセイレンと愛し合っていたのが嘘みたいに思えてくる。


「ぐっ……助けて…サハリン…」

「気安く呼ぶな。悪魔め」

「わ、わた、私は…悪魔など、身に覚えがありません…」

ひゅうひゅうという呼吸音が、このままでは彼女は絶命を待つばかりだと教えている。


「おい、連れて行け」

衛兵がしっかりとセイレンの両脇を抱えて引き摺られていく。

「鉄の杭を両手足に打ちつけておけ、眉唾だがやらんよりましだろう」

サハリンは恐ろしいことを平然と言ってのける。

悪魔は鉄を嫌がるという古の言い伝えである。

これがこの国の王太子だ。


「すぐに処刑せよ、首を落とせ、心臓に杭を打て、やれることはなんでもやれ!」

国王は初めて見る乱れようでそう叫んだ。


セイレンは泣きながら引き摺られて行った。

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