お前は誰だ(サハリン王太子視点)
以前のセイレンが戻って来た。
いや、以前よりももっと女性らしい体つきになっている。
匂い立つようなフェロモンとだらしない唇にくらくらする。
もう、ひとときの我慢もできない。キャンベルもどきをいじめた時以上に脳がパチパチした。
勿論セイレンをいじめるつもりはない。それでも丁寧に時間をかけたい気持ちは崩壊したので、セイレンからすればやや乱暴ではあったように思う。
けれど、それはそれで良かったのだ。彼女はそういうのが好きなんだと思う。
今まで聞いたことのないほどの嬌声。
(へえ)
と思うと、支配欲が湧く。
番った瞬間、目の前が暗転した。
チカチカパチパチ
チカチカパチパチ
どれくらいか分からないけれど、すごく時が経っている気がした。
いつの間にかセイレンが私に跨って腰を振り続けている。
だらだらと涎を垂らし、小さく嬌声をあげていた。
長い爪が私の腹部に食い込んでいる。
どう考えても長すぎる爪だ。
「セイレン…」
『おまえ、魔族の血が入ってるなあ』
顔はセイレンなのに、知らない声がする。
「だれ…だ……」
『セイレンだよぉ』
「違う、お前はセイレンじゃない」
『チッ…』
私から降りると、裸のままベッドを降りた。
ベッドの下から唸り声が聞こえたので見ると、そこにはたくさんの男たちが転がっていた。
「聖女さま…」「セイレンさま…」「ああ…」
彼女は、起きあがろうとした男をその細い腕で床に押し付けると、そのまま跨り、誰ともしれぬそいつと番っている。
『お前の父親はすぐに気絶したよ、オウジサマ』
「なん…だって?」
頭がくらくらして、動けない。
(逃げなければ)
『オウジサマは二番目くらいかな。一番精気を吸えたのは、ほらそこに転がってる牧師』
聖なる光のマークがついた帽子で牧師と分かる。干からびてミイラのようだ。
「精気…お前は…」
『あ、気づいちゃった?でも名前は教えなぁい』「……エスト…」
一瞬セイレンの声が戻る。
『うるさいよ!お前!』
自分で自分を殴りつけている。異様な光景だ。
すっかり歯が折れた顔をこちらに向けてニタニタ笑っている。
「悪魔め…セイレンは悪魔に自分を売ったのか…聖女のくせに!」
『セイレンは聖女じゃないよぉ?本当は知ってたんでしょお?』
「嘘だ!!!!!!!セイレンの歌声はキャンベルの祈り歌よりも民衆の心を掴んだ!!!」
『それはそうだよぉ。ワタシが力を貸してたんだからさぁ。悪魔はいつだって人間に魅力的に映るようにしてるんだよ。くすくす』
「セイレンは本物だ!!!」
『ばかだねぇ。本物ならワタシは乗っ取れないからぁ…』
セイレンの身体が弓形にのけ反った。
身体に黒く模様が浮き上がる。
目の全ての部分が黒い。
羊のような角が、めりめりと音を鳴らして頭から突き出てくる。
すぅはぁ、と深呼吸して地の底のような声を上げた。
『久しぶりの人間界だぁ。100年振りぐらいかなぁ』
「…なにを…するつもり…だ」
『ワタシはフタナリだからさ、これで女も犯せるの。うーん、そうかあ。オウジサマさぁ、もしかしたら君は100年前に犯した女が産んだ子孫かなぁ。魔族の匂いがするんだよねぇ』
「私は王族だぞ!無礼者め!」
エストとかいうその悪魔は、けたけたと笑い出す。
『悪魔に無礼も何もないでしょお。ああ、100年前はさ、聖女に追っ払われたんだけど、本物の聖女職ってヤツは追放してくれたんでしょお??ありがとうねぇ』
(キャンベルを…キャンベルを連れてこなければ)




