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触るな(前半、サハリン王太子視点、後半、セイレン視点)

正直言って、セイレンにはがっかりした。

どこでうつったのか知らないが、結核だなんて冗談じゃあない。

セイレンが隔離されている間は大分遊ばせてもらったので、悪い時間ではなかったが。


セイレンがいないのを良いことに、王宮に何人もの女たちを呼び寄せた。

侍らせた女たちの中にキャンベルという名前の者がいた。

顔立ちは全然違う。けれども髪の毛の色が同じだ。

四つ這いを見下ろすのは、なんという優越感だろうか。

一番いじめてやった。

草臥れても、失神しても、構わずに。

他の女たちが目を背ける。逃げ出す者もいた。

それでも構わずに"それ"だけをいじめぬいてやった。

何時間過ぎただろうか、"それ"が泣いて喚いたので、急激に冷める。

「次泣いたら、お前が嫌がることを選りすぐる。分かったらさっさと続けろ」


すると今度は無表情になったので、それはそれでつまらなくなった。

「明日も励め」と言い、その日は休んだ。


次の日キャンベルは来なかった。

女たちに問いただすと、自殺したと聞いた。

本当につまらない。



セイレンが回復したので、口止め料を含む賃金を握らせて女たちを帰した。

セイレンは病に伏した数週間で信じられないくらいに痩せた。

豊満な胸はしぼみ、全体がガリガリだし、十歳は老け込んだように見える。


(あんなの抱けるかよ)


それでもセイレンは完治してからというもの、毎日私に擦り寄って来るのだ。

今の自分を鏡で見てみろと言いたくなる。

どう見ても婆だ。

まだ自分が綺麗なままのつもりなのだろう。

或いは現実が受け止められないのかもしれない。

高いヒールでふらふらと歩く姿は信じられないくらい不気味である。

それでも市民たちの「聖女様」を求める声は日増しに大きくなっていった。

バルコニーで祈り歌を歌い終えると、すかさず私の腕に絡まる。

「サハリン様ぁ。最近どうして口付けもしなくなったのですか?」

腕にまな板の胸を擦り付けて来たので、思わず振り払った。

「やめろ!穢らわしい」

音もなく床に転がる。

「どうして…」

「…どうして!?鏡で自分の姿を見てみろよ!」

チッと舌打ちして、わざと大きな靴音を立てて去った。





✳︎ ✳︎ ✳︎





鏡の前、美しい私がいる。

「ねえ、私の中にいる誰か、聞こえているんでしょう?」

((もちろん。やっとセイレンから話しかけてくれたね!ワタシのことはエストと呼んでよ))

「エスト、サハリン様がね、私のことを穢らわしいというのよ。鏡で自分の姿を見てみろとも言った。あんなに愛し合って婚約したのに、なぜだと思う?」

((…可哀想なセイレン。病気で痩せてしまったからね、仕方がないよ。ワタシが力を貸してあげようか?))

「まあ!本当に!?」

((もちろんだよ。みんなが振り返る昔のセイレンに戻してあげる))

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