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本心が分からないひと

喉から手が出るほど欲しい。

『イラレン・イランは名探偵』一巻から最新作の五巻まで。

『明日の殺人』

『黒猫ミステリーファイル』上下巻。

『メストリア三番街の殺人鬼』


ずらっと並んだ本たちに思わず声が躍る。

「どうして私がミステリー好きだと分かったのですか?」


つい勢いよく立ち上がったので、ルイスはぽりぽり頭を掻いた。

「だって君の本棚はミステリーばかりじゃないか」

「…しげしげ見たんですか?人の本棚を?」

「そりゃ君、殺人だの猟奇だのなんだかちょっと物騒な背表紙が見えるのだから、目がいくのは仕方がないだろう」

「そんな人、尚更信用できませんね」

「そうか、本選びに大いに役だったと思うが残念だ。ならこれらは自分で集めたら良い」


並べられた本を仕舞おうとしたので、慌てて制する。

ルイスがにやりと笑って「うん?どうしたんだい?」と聞いたので

「……本は置いてってください」

「そういう訳には…いかないなあ」

「子どもじゃないんですから!広げたもの引っ込めないでください!悪趣味です!」

「なら君こそ素直に頷いたらいいんじゃないか?」

ルイスは「うん?」と言って顔を近づける。


「もう!わかりました!!…ひと月に一回は本を買ってくれるなら…」

と目を逸らして言うと、仕舞いかけていた本を私の前に差し出した。

「交渉成立だ」


(こんなに何かが輝いて見えるのは久しぶり)

並べられた本がまるで光を放つかのよう。

「ありがとう、ルイス」

「どういたしまして」

嬉しくて、自然と顔が綻んでしまう。


「あ、あと、寝る時はカーテン一枚仕切らせてくださいね」

「心配しなくても、変なことはしない。断じて」

「…随分はっきり言い切るのですね」

「へえ、誘ってるのかい?」

綺麗な黒髪が西陽できらきらしている。


「冗談はやめてくださいませね。それから!ここで暮らすのなら、外から帰ってきたらまず手を洗って下さい」

「あ…気をつける。何せ遠征があると風呂も入れなかったりするからな…衛生管理、気にするよ」

汚れた手をグーパーして言うので、驚いた。

「…ブラックアーマーは嘘ではないのですか!?」

「それは嘘じゃない。僕はちゃんと騎士だ」

「戦場の悪魔がこんなところで居候していて良いんですか?」

「へえ?意外だね。それはなぜか君は気づいていると思ったけどな。それともわざと言っている?」

金色の瞳孔がぐっと開いた。

「さあ?」

私も負けじと彼に対抗した。


「ぷっ」と吹き出してけらけら笑って「恋人だったら口付けでもしていたかな」などと平気で言った。


(この人はこうやって女性に言い寄る人なんだわ)


「良いから手を洗ってください。あまり冗談がすぎると叩き出しますからそのおつもりで」

「つれないね」

「私は夕餉まで本を読んで過ごします。どうぞお好きにお過ごしください。あ、お風呂に入る時は声をかけてくださいね。お湯を用意します」


それから私はすっかり夜が更けるまで没頭してしまい、ルイスが釣ってきたという魚をカルパッチョにして頂くことになった。

そんなわけで、初日から、ちょっとだけルイスに頭が上がらなくなる。

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