鈍感なりに
これは鈍感な来人と、 そんな来人に恋心を持った七瀬のお話。
「おい! 来人もカラオケ来いよ!」
僕は来人だ。 帰りの挨拶が終わり、 友達の斎藤に誘われていた。
「分かった。 行くよ。」
「でも人足りないからさ? 誰か呼んどいてくれない?」
「うん。 分かった。」
「じゃまた!」
誰か呼んどいてって、 なんて人任せなんだ。
さて、 誰を誘うか。 こんな機会だし出来れば話したことない…
あの端の席のあの子なんでどうだろうか。
一回も話したことない。 名前も知らない。 せっかくの機会だ! 誘うぞ。
そうして僕は彼女の方へ向かった。
僕が彼女の元へ着いた時、 彼女は机に伏せていて寝ているようだった。
起こすのは悪いしな……。
また今度にしようかな。
そんな事を考えていると、 彼女が目を覚ました。
そしてこちらを見て、 ただ見ている。
でもちょうどよく起きてくれた!
「なぁ、 えっと、 名前なんてんだ?」
初めて話すから… たどたどしくなってしまったけど、 とにかく名前だ。
名前を知らないと話しづらい!
「私は……
七瀬だよ……」
「俺は来人。
よろしくな」
良かった…… 普通に喋れた。
とりあえず名前は分かった。 よし、次だ。
「今日さ、 暇か?」
「暇だけど……」
「じゃあさ。 カラオケどう?」
「いいね……
行こうかな……」
やったー! これで一人目確保だ! 二人目は……
まあ大丈夫だろう。
こうして、 僕の高校生活初めてのカラオケに行くことになったのだ。
カラオケ屋の前。
「おい来人。 一人しか呼ばなかったのか?」
「ああ、そうだけど。」
その会話を七瀬さんは静かに見ている。
きっと他にも人が来ると思っていたのだろうか。
でも残念。 僕は七瀬さんしか呼んでいなかった。
「しかも女子ってお前、」
友達の斎藤はそう言ったあと、 僕に近づき、
「好きなのか?」 そう小さな声で言ってきた。
好きじゃないさ。 話す機会が無かったから呼んだまで。
「好きなわけ無いだろ? ただ話したこと無かったし、 それで呼んだんだよ。」
すると斎藤は離れてくれた。
「そうか。 んじゃ行くぞ! 君もな!」
「ぁ、 は、 はい。」
そして僕らはカラオケ屋に入った。
中に入り、 受付をする。
「あ いらっしゃいませ。 4名様ですね?」
「はい。 ドリンクバー付きの一時間で。」
斎藤は慣れた口で言った。 僕もカラオケは何回か来たことはあるけど、
受付はいつも斎藤任せだし。 当たり前か。
「ではお会計が……」
僕らはお金を払うと、 部屋番号が書かれた紙を受け取った。
そして僕らは部屋に入ろうとしたとき、
「あの……
私やっぱり帰るよ……」
そう言いながら七瀬さんはソワソワしていた。
「なんでだよ。
帰る理由無いだろ?」
斎藤は言った。 確かにその通りじゃないか。
「そうだよ。 ほら。 とりあえず入ろう?」
「…わかった。」
そして僕らは部屋に足を踏み入れた。
入った瞬間、 部屋の空気が変わった気がした。
「よしっ!歌うぜ!」
「おう!」
斎藤に僕は明るく返事をした。
しかし七瀬さんは何も言わず、 ただ座っていた。
そして曲が流れ始める。
「きーみーがーいたなーつーは!」
斎藤はいつも通り。 普通だ。 でもそれがいい!
「夏は!」
「とおいーむーねーのなかーあー!」
「斎藤!」
そして斎藤は歌い切った。
「どうだった! 来人!」
「すごいうまかった!」
「よし次は誰だ?」
当然。 誰かが歌い終わったら、 次を決める。
僕は斎藤と結構歌ってるから当然。
「そうだ! 七瀬さん歌わない?」
僕は聞いた。
「いいよ……
あんまり歌とか興味無いから……」
「そうなんだ……」
そうなのか。 じゃあまあ僕が歌うか。 無理に歌わせる理由も無いしな。
僕がそう口に出そうと思ったとき、 斎藤は言った。
「一回歌ってみろよ!」
「え……?」
七瀬さんは驚いている。
でもまあ確かに、 カラオケに来たら歌わないとか。
僕がそう思っている間も、 斎藤は続ける。
「来人もこう言ってることだし、 一回やってみたらどうだ?」
すると、 七瀬さんも流石に折れたみたいだ。
「わ、 分かった……」
七瀬さんはゆっくり立って、 マイクを持った。
……意外と身長高いんだな。
「……..ふぅ……」
そして息を吐いて、 七瀬さんの歌声は聞こえてきた。
綺麗で透き通るような声だった。
斎藤も僕も驚き、 聞き入り、 声を出せなかった。
「……..ふう」
七瀬さんは歌った。 とても上手い歌だった。
「すげぇ……
お前よりうまいんじゃないか?」
斎藤は僕にそう言った。 正直僕もそう思う。
「どう? 来人くん……」
七瀬さんは聞いてきた。
「うん。
すごく良かった。」
「そっか……
ありがとう…」
そして七瀬さんはまた席に座った。
「さぁ次は僕の番だ!」
僕は七瀬さんからマイクを受け取って勢いよく立った。
「よ! 来人やっちまえ!」
斎藤も応援してくれる。
僕は思いっきり歌った。
「はぁー楽しかった。」
「そうだな。」
「そうね……」
帰り道、 みんな満足しているようだ。
「じゃ! 俺こっちだから。 またな。」
「またね。」
「うん……」
斎藤は先に帰っていった。 そして僕と七瀬さんは歩いた。
すると七瀬さんは下を向いて、
「誘ってくれて… ありがとう…」
小さく言った。
「あぁ、 こっちこそ。 来てくれてありがとな。」
「うん……
じゃあね」
そう言って七瀬さんは道を曲がっていった。
「ああ、」
こうして今日のカラオケは終わりを迎えたのだ。
次の日。
「おはよう、」
僕はいつも通り、 友達の斎藤に挨拶をした。
「おう、 おはよ」
そして僕の席に向かう途中、 七瀬さんが目に入る。
七瀬さんにも挨拶するか。 七瀬さんは端で静かに本を読んでいた。
よし。 せっかくなら驚かせてやろう。
僕は七瀬さんの席に近づき、 前に座って、 本の後ろで手を組んで、
本をチョンと突いた。
すると七瀬さんはビクッとして本を上げ、 僕を見つけた。
「うわっ!? な、 なに?」
驚いた表情で言った。
「いや〜別に」
「そう……。」
そして七瀬さんは再び読書を始めた。
これで少し話せるかなと思ったんだけど… 挨拶だけしよう。
「おはよう!」
「うわっ!…」
七瀬さんはのけぞり、 本を後ろに投げた。
ちょっと声が大きかったかな?
まあいいか。
「ごめん!そんなに驚くとは思ってなかったよ……」
僕は謝って落ちた本を拾おうとした。
しかし七瀬さんは、
「大丈夫!私が自分で取るから!」
と言ってくれた。
優しいな……
「そうか……
本当に悪かった。」
「いや大丈夫。 だって、」
七瀬さんはそう言いながら本を取って、 こっちに来た。
そして下を向き、
「話しかけてくれたの… 来人くんが初めてだし…」
そう小さく言った。 そして僕が何か言う前に席に戻って読書を再開してしまった。
僕は呆然と立ち尽くした。
初めて……? 僕と話すのが……? なんでだろう……
まあでも悪い意味ではないと思うし、 嬉しいな。
それから、 休み時間ごとに、 七瀬さんと僕は一言二言くらいだけど、 言葉を交わした。
放課後になると七瀬さんはすぐに帰ってしまったけど……
明日も声をかけてみよう。
そう思って僕は眠った。
次の日の朝。
僕は登校した。
「おはよう」
「あぁ」
まず友達の斎藤に挨拶をした。 そして早速、 七瀬さんはこっちを見ている。
僕は七瀬さんの方に歩いていった。
しかし、 「おはよー」 他の人にも声をかけられる。
「おはよう」 挨拶を返してまた向かう。
でもまた、 「おはよう!」
「あぁおはよう」
そしてやっと七瀬さんの元へつくと、 七瀬さんはものすごい目をしていた。
まるで睨んでいるかのような目だ。
そして僕の方を向くと、 すぐに目をそらしてしまった。
「あ、あの……?」
僕が戸惑っていると、 七瀬さんは読書を始めてしまった。
なんか嫌われたかな…
僕は黙って自分の席に戻った。
そして、 昼休憩の時間になった。
「来人、 飯食おうぜ」
斎藤が僕にそう言った。
「ああ、 いいよ」
僕は返事をして、 斎藤と一緒に教室を出た。
「どこで食べる?」
「ん〜屋上とかどう?」
僕は提案した。
この時、 僕も斎藤も、 七瀬さんの事なんかもう忘れていた。
僕たちは階段を上がり、 扉を開けた。
するとそこには、 七瀬さんがいた。
「あれ、 七瀬さんもここで食べてるんだ。」
「…………」
七瀬さんは答えない。
ただずっとこっちを見てくる。
「ぁ、 うん。 ごめん俺学食の気分になったから!」
「あ、 ちょ、」
斎藤はそう言って、 僕が振り返るのも待たず戻っていってしまった。
ガチャン 屋上の扉が閉まった。
「………来人くん?」
七瀬さんが聞いてきた。
「え?ああそうだよ。」
僕はなんとか答える。 一体何を言われるのか…
「……私に話しかけてくれたの、 来人くんが初めてだったの… これからも話したい…」
七瀬さんは小さな声で言った。 そして続ける。
「でも、 来人くんには友達がたくさんいる。 だから私と話す時間なんて… ないよね…」
七瀬さんは悲しそうな顔をしている。
「いや、 大丈夫だよ。
全然話していいし。
むしろ大歓迎。」
僕はそう返した。 だって話なんて誰としても楽しいし。
すると、 七瀬さんの顔はパァッと明るくなった。
「本当?… ぁ、 ありがとう…ぁ、」
七瀬さんはまだ小さな声で言った。 それに、 まだなにか言いたそうにした。
「他になにかある?」
気になって聞いた。
「ぁ、 その…… 一緒に食べよぅ……」
七瀬さんは今までで一番小さな声で言った。
「ん? なんだって?」
「ぇ……? ぁ、いやなんでも……」
「あ、いやごめん! 聞こえなかったからさ……」
「いや、やっぱり何でも……」
七瀬さんは下を向いてしまった。
「ごめん!本当にごめん! 何て言ったか教えてくれないか!」
「ぁ、 と…… えっと… お昼、 その!」
キーンコーンカーンコーン
昼終わりのチャイムが響いた。 なんとタイミングの悪い。
「あ、やばっ、 じゃあ、」
僕は急いで戻ろうと扉を開ける。
「待って!」
七瀬さんが呼び止めた。
「なに?」
「あの……
今日、 帰り、 少しだけ、 時間……
作れない……?」
帰りに時間? 勉強会でもするのか? 七瀬さんなんだかんだで真面目そうだしな。
「いいよ」
「…ありがとう。」
そう言って七瀬さんは走って階段を駆け下りた。
あやべ! 戻らないと! 僕はギリギリで自分の席についた。
授業が終わり、 そして放課後。
下駄箱で僕は七瀬さんの方を見た。
七瀬さんもこっちを見ていて、目が合った。
そして僕は鞄を持って七瀬さんの方に歩いた。
「場所はここでいいの?」
「…いや ついてきて。」
そして七瀬さんについていき、 体育館裏に来た。
「ここなら誰もいないから。」
七瀬さんは言う。
「それで、 用件は?」
「あ、うん。 ………月が、 きれいです。 ね……」
七瀬さんはたどたどしくそう言った。 まだ月が出る時間じゃないんだけどな?
「えっと、 まだ明るいけど。」
「そ、そういう意味じゃなくて!」
七瀬さんは慌ててそう言った。 じゃあどうゆう意味だ?
「どういう意味?」
「それは…… す、 す、」
「す?」
「好き……
ってこと……」
七瀬さんは顔を赤くしながらそう言った。
僕は理解するのに数秒かかった。
「へ?」
「私は来人くんが好き。
付き合ってください。」
七瀬さんは真っ直ぐ僕を見つめながらそう言う。
でも付き合ってほしいことって、 やっぱり勉強会かな?
「その、 付き合ってほしいことって何?」
「ぁ、 いや、 そうじゃなく、 て、 私と、 その、」
「ん? どうしたの?」
「だから、 私と、 つ、 つつ、 つきあっ、」
七瀬さんは今にも泣き出しそうだ。 どうしたんだ?
「だ、 大丈夫? 七瀬さん。」
「ヒグっ、 つきあ、 グスっ、 つきあーってぐだ! グスっ、 さい!」
七瀬さんはとうとう泣いてしまった。
「ちょっと落ち着こう?深呼吸しよう。」
僕はそう言って七瀬さんをなだめようとする。
しかし、
「うわぁぁぁぁん!」
七瀬さんは号泣してしまった。
「ほら、 ハンカチ使って!」
僕はポケットからハンカチを取り出し渡した。
七瀬さんは受け取ったが、
「ヒッグッ、 ありがとぅ……」
と言ってそのまま涙を流す。
「よし、 よし、 大丈夫だからね。」
僕は七瀬さんを抱き寄せて背中をさすった。
「ぁ、 ごめん、なさい、」
「大丈夫だから、 深呼吸して。」
「は、 はい、 スー、 ハー、 グスっ スーー、 ハー、 ぅ、」
七瀬さんは僕の胸に顔を埋めたままなんとか深呼吸をした。
「もう落ち着いた?」
「はい……
その、ありがとう……」
七瀬さんは少し恥ずかしそうに答えた。
「で、結局付き合うってなんのこと?」
僕は本題に入った。
「だ、 大丈夫… その、 話聞いてくれてありがとうね…」
「え、 だから付き合うって」
「さよなら」
七瀬さんはそう言って帰ってしまった。
「え、ちょ! 待って!」
僕は七瀬さんを追いかけようとしたが、 すぐに見失ってしまった。
「なんだったんだよ……?」
次の日、
「おはよう、来人くん。」
「おはよ……って七瀬さん!?」
そう七瀬さんが家の前にいるのだ。
「なんでいるの?」
「……一緒に登校したいから。」
七瀬さんは当たり前のようにそう言った。
まあいいか。
断る理由もないし。
「わかったよ。」
「!…」グッ
七瀬さんは小さくガッツポーズをした。
そして二人で歩き始めた。
「なぁ、 昨日の付き合うってさ? 結局なんのことだったの?」
僕は気になって聞いた。
「……」シーン 七瀬さんは黙っている。
もしかして、 聞かない方がよかったのか?
「あの、ごめん……」
「……」スタスタ 七瀬さんは歩くペースを上げた。
まずい!怒らせたか! 僕は急いで追いかけた。
「七瀬さん! ごめんって!」
「なら気づいてよ!!」
七瀬さんは急に振り返ってそう叫んだ。
「え、 気づくって何を?」
「……もういい!」
七瀬さんは再び前を向いて歩き出した。
一体何なんだ?………………
学校に着いた。
「じゃあまた。」
僕は教室の前で別れようとした。
「……」グッ 七瀬さんが僕の腕を掴んできた。
「…もう少し。」
七瀬さんはそう言った。
仕方ないな。
「はいはい。」
そして僕は七瀬さんと一緒に教室に入り自分の席についた。
すると斎藤が駆け寄ってきた。
「お前もしかして、 七瀬に好かれんじゃ」
小さな声で言われた。
「ん? 好かれてるからなんだよ?」
「お前なぁ、 ほんとそうゆうとこ鈍感だよな!」
「は?どうゆうこと?」
「はぁ……
もう知らん。」
「え? どうゆうこと?」
「精々頑張れよ?」 そう言って斎藤は席に帰ってしまった。
どうゆうこと?………………
それから休み時間ごと七瀬さんに声をかけてみたものの、
全て無視された。
どうなってんだ?……
昼になった。
「七瀬さん、ご飯食べよう。」
僕はそう言った。
「……」 無視された。 そして七瀬さんは引き続き本を読んでいる。
「ねぇ、七瀬さん?」
「……」 七瀬さんの手に力が入った気がした。 やばいかこれ… 七瀬さん本格的に怒って、
いや嫌われてるのか?………… いやでも…
「七瀬さん!」
そしたら七瀬さんは本をゆっくり閉じた。
「……いい加減気づいて。」
七瀬さんは小さい声でそう言うと立ち上がり、 そのままどこかに行ってしまった。
「え、ちょっと! どこ行くの!?」
僕は慌てて七瀬さんを追いかけた。……七瀬さんが向かった先は屋上だった。
ガチャッ
「……」
そこには誰もいなかった。 七瀬さんと僕以外は。
すると七瀬さんは僕に近寄ってきて、
ギューーーーーー
「な、 七瀬さん?」
七瀬さんはいきなり抱きついてきた。
「……まだ気づかない? グスっ、」 七瀬さんは泣いていた。
「え、 あの、 その、」
「ずっと好きって言ってたのに、 全然気づかないし。 グスっ、」
「え、 いや好きになってくれるのはいいんだけど、 さっきから泣く理由が分からなくて。」
「まだ気づかない!?」
「えっと、 ごめんなさい…」
「…もういい。」
七瀬さんは諦めたように階段をゆっくり下っていった。
そしてそのまま帰っていった。
なんでだろう?……
その日、 七瀬さんは学校に来なかった。
なんでこうなったんだろう……? 七瀬さんは結局学校には来ず、次の日も休んでいた。
もしかして、本当に嫌われたのか?……… まあいいや。 今日土曜だし、
どこか出掛けて気分転換するか!
僕は外に出た。
「やっぱり外の空気は美味しいな!」
僕はそう言って伸びをした。
「ん?」
あれって、 七瀬さんじゃないか? 意外と近くに住んでたのか。
なんか新鮮だな。 そうだ。 久しぶりの七瀬さんだ。 ついていってみようか。
僕は七瀬さんのあとをつけて行った。
しばらく歩くと、公園があった。
そして七瀬さんは公園のブランコに座り、 下を向いて泣き始めた。
「うぅ……
ヒグっ……」
七瀬さん……
どうしよう……
声かけるべきなのか?……よし! 僕は思い切って七瀬さんに話しかけることにした。
「あの、 七瀬さん?」
「……グスっ……
来人くん……?」
よかった。
聞こえていたみたいだ。
「隣座ってもいいかな?」
「……うん……」
よし、許可も貰ったことだし!
「大丈夫?」
「グスっ、 だってぇ、 来人くんがぁ! グスっ、」
七瀬さんは号泣しながら話し始めた。
「え? 僕? なんのこと?」
「私の気持ちぃ、 グスっ、 全然気づいてくれないじゃん!!」
七瀬さんはそう叫んだ。
「え? いや気づいてるよ。」
「嘘つき!! じゃあ私があ!
『好き』とか、『付き合って!』って言っても、 話しそらしてきたのは何なの!?」
「え? だって好きとか付き合ってとか言われても、 それでって話で」
「だから! それ! それが! 勘違いなの! 私は! 最初から! 本気で! 来人くんが! 好きなの!
好きってゆうのは! 普通の好きじゃなくて! 特別好きなの!!」
七瀬さんは必死に訴えてきた。 特別好きって言われても、 だから何なのか…
「…好きなのは分かったけど、 その付き合うって、 何に?」
「分かった。 私、 まだ諦めてないから!」
七瀬さんは僕の質問に答えずそう言った。
「え? どうゆう」
そして七瀬さんは走っていった。
「ちょ! 待って!」
僕は急いで追いかけたが、 すぐに見失ってしまった。
「一体なんなんだ?」……よくわからないけど、 とりあえず家に帰るか。
そして月曜日。 家から出ると、 そこには七瀬さんがいた。
「おはよう、来人くん。」
「お、 おはよう、七瀬さん。」
「昨日の続きだけどね、」
「いや、別にいいよ。」
「……聞いてよ。
来人くんはさ、 誰かを好きになったこととかないの?」
「えっと… 無いかな。」
「……」
七瀬さんは歩き始めた。
「ま、 待ってって!」
「…… 人を好きになることは、 普通の好きとはちがうの。」
七瀬さんは小さく言う。
「ちがうって、 どこが?」
「…それは自分で考えて。」
「いや、 急にそんなこと言われても」
「じゃあヒント。」
「え?」
「人を好きになるってことは、 その人のことしか考えられなくなるの。 それじゃ」
七瀬さんはそう言って去っていった。
「え、ちょっと!?」……意味わかんねぇ。
それから学校に着いた。
教室に入ると斎藤が駆け寄ってきた。
「おい! お前! 七瀬に告られたんだろ!?」
「え? 告るってどうゆう意味?」
「お前… 嘘だろ? 鈍感にもほどがあるぞ…」
「……ごめん。」
「いや謝らなくていい。
逆にすまん。」……なんで謝ったんだ?
「いやでも、 告白された覚えはないんだけど。」
「はぁ? 七瀬があんなに落ち込んでたんだぞ? お前フッたろ?」
「いやフッた覚えは…」
「はぁ、ほんと無自覚は罪だよな。」
「……? いや、さっきから言ってることがよく分からないんだけど?」
「もう知らん。」
「え?」
僕は訳がわからなかった。
七瀬さんが落ち込んでいた? 僕は何もやってないけど…
まあいいか。
そして昼休み。
今日は一人で食べよう。
そう思って席を立った瞬間、 七瀬さんが来た。
「来人くん、 一緒にご飯、 食べよ。」
七瀬さん今日登校してたのか。 それに七瀬さんから誘ってきたのは初めてだ。
「うん。」
そして僕達は向かい合って食べ始めた。
しばらく普通に食べていたら、 七瀬さんが口を開いた。
「来人くん、 気づいてよ… 何度も何度も言ってるじゃん。」
「え?」
「好きだよって、」
「……」……
「来人くんのことしか考えられないのに……」
七瀬さんの目には涙が浮かんでいた。
「……」
僕は意味が分からなかった。 僕のことしかって、そんなのあり得るのか?
そしてそのまま時間が過ぎていった。
放課後。 七瀬さんは僕にしがみついてきた。
「来人くん、 好き。 私と一緒にいて。」……七瀬さんは泣いていた。
「うん? まあいいけど。」
「じゃあ付き合ってくれる?グスっ、」
「え? 付き合うってどこに? 買い物とかならいいけど。」
「違うよぉ!グスっ、」
「え? じゃあ付き合うって、 何に?」
「グスっ、 もぅ! 来人くんのばか!!」
そう言って七瀬さんは帰っていった。……やっぱりよくわからないな。
次の日。
七瀬さんは学校に来なかった。
風邪かな?……いやでも昨日の感じだと、 もしかしたら……
「おい来人! 久しぶりにカラオケ行かないか?」
斎藤に誘われた。 久しぶりって言っても、 一週間とかしか経ってないけどな。
「あぁ 分かった。」
「それと、 誰か呼んどいてな。」
カラオケに行くことになると、 人集めを頼まれるのはいつものことだ。
「分かった。」
「おう。」
さて誰を呼ぶか。
そう思いながら周りを教室の中を見回すと、 七瀬さんがいた。
「……」
それにこっちを見ている。
七瀬さんいつの間に登校したんだ?
……まあいいや、とりあえず声かけてみるか。
「七瀬さん、 今日放課後空いてる?」
「……うん。」
「じゃあさ、 一緒にカラオケ行こう。」
「……うん。」
七瀬さんは小さいけど明るく返事した。
よし、 仲直りの機会にもなるぞ。
そして放課後。 学校前。
「お! 来人また七瀬呼んだのか?」
「まぁね。」
「相変わらずラブラブだな!」
「!……」
七瀬さんは顔を赤くした。 なんでだ? それに、
「ラブラブってなんだよ?」
「お前ら見てればわかるって。」
「そうなのか?」……全然わからないな。
「ほら、早く行くぞ。」
斎藤がそう言ったので、 僕と七瀬さんは歩き始めた。
「あの… 来人くん。」
七瀬さんが話しかけてきた。
「どうした?」
「手……繋いでもいい?」
「え?」
七瀬さんからそんなことを言われるなんて。
「やっぱり… ダメ……」
「いや別にいいけど。」
そして僕達は手を繋いだ。
「……」グッ
すると七瀬さんは小さくガッツポーズした。
「ん? どうした?」
「な、 なんでもない……」
そしてカラオケに着いた。
中に入る。
「いらっしゃいませー! 3名様ですか?」
店員が聞いてきた。
「はい。」
「ではこちらにご記入ください。」
斎藤が受付をしてるのを、 僕と七瀬さんは後ろから見ていた。
「……今回は分かってくれるかな…」
七瀬さんが小さな声でなにか言った。 なんて言ったんだ?
「よし行くぞ。」
斎藤いつの間に受付終わったのか。
「あぁ」
僕は返事をして七瀬さんと歩いていった。
そして部屋に入った。
ここに来るのも久しぶり、 いや一週間ぐらいなんだけど。
そしてマイクを持つ。
「じゃあ俺から歌うぜ!」
そして斎藤の歌が始まった。
「ふぅ〜」
「なかなか上手いな。」
「だろ?」
「うん。」
そして次は僕が歌った。
「♪〜、 はい次七瀬さん!」
「……!」
すると、 七瀬さんはもう一本のマイクを持った。
「…来人くんと歌いたい。」
「え?」
七瀬さんはそう言って立ち上がった。……これデュエット曲だよな?
初めてだな。 それに七瀬さんとか…
「…始まる。」
「あ! ほんとだ!」
そしてイントロが流れ始める。
七瀬さんと目が合った。
「……」ニコッ
七瀬さんは笑顔になった。 そして歌い出す。
「♪〜、」
そして終わった。
「おい。 お前ら俺の前でイチャイチャして!」
「え? してないよ?」
「嘘つけ! この鈍感が! 七瀬傷付けんじゃねえ!」
「鈍感って、 なにが?」
「…ほんとに」
七瀬さんも納得したようにそう言った。
「え? だからなに?」
「もういい! 一曲歌う。」
そして斎藤は歌った。 その間七瀬さんにすごい睨まれた。
そして曲が終わり、
「じゃあ、そろそろ帰るか。」
斎藤はそう言って荷物をまとめ始めた。
「そうだね。」
僕もそう言って、 七瀬さんと一緒に帰ろうとした。
「来人、 ちょっと待ってくれ。」
斎藤は突然そう言って、 僕を部屋の端に連れて行った。
「なんだよ?」
「お前、 七瀬のことどう思ってる?」
「どうって、 普通だけど。」
「……」
「なんだよ?」
「いや、まあいいや。
とにかく、 男なら七瀬の気持ちをちゃんと受け止めてやれ。」
それだけ言って、 斎藤は部屋を出ていった。
七瀬さんの気持ちって、
僕は少し考えた。 でも分からない。 今までで一番分かりそうなんだけど、 分からない。
とりあえず外に出よう。
「七瀬さん。 一旦、 外でよう。」
「…うん。」
そして部屋を出る。
「あ 受付なら先程斎藤様が済まされました。」
「そ、 そうですか。」
しかし斎藤は見当たらない。 あいつ受付だけやって帰ったな。
でもなんで?
そして七瀬さんとカラオケ屋を出た。
「七瀬さん、 この後どうする?」
「……」
「七瀬さん?」
「……来人くん、 私、 来人くんの家に行きたい。」
「僕の家?」……そういえば七瀬さんがうちにくるのは初めてだな。
「うん…… ダメ、 かな。」
「いや、 別にいいけど。」
「やった……!」
七瀬さんは嬉しそうだった。
「じゃあ行こう。」
そして僕は歩き始めた。
「うん。」
そして歩きながら僕は考えていた。……七瀬さんが僕のことを好きって、
そもそも好きって、 なんだ?
たしか七瀬さんは誰かを好きになったら、その人の事をしか考えられなくなるとか
言ってたような… それにいつか忘れたけど、 僕の事しか考えられないとか、
言ってたような? 七瀬さんの気持ち? うーん……
分からない…
そんなことを考えていると、 いつの間にか家に着いていた。
「…ここ?」
「あぁ」
「大きい……」
「そうかな?」
そんな会話をしながら、 家の中に入っていく。
「よっと、」
「……」
「あ、 いいよいいよ上がって。 親父も母も仕事だから。」
そしてリビングのソファーに座った。
「……」
七瀬さんはキョロキョロしていた。
「なんか飲む?」
「う、 うん。」
僕はキッチンに向かって歩いていった。
「七瀬さんコーヒーと紅茶どっちがいい?」
「じゃあ……
コーヒーで。」
「わかった。」
そして僕はコーヒースティックを出して、 お湯を沸かし始めた。
その間、 また考えてみた。
……やっぱり七瀬さんが僕のことが好きなんて、 わからない。
すると七瀬さんが話しかけてきた。
「あの…… 来人くん。」
「ぇ、 うん。」
七瀬さんいつの間に。
「その… 私の事考えてた、 でしょ…」
小さな声で言われた。 七瀬さんの事? 七瀬さんの気持ちは考えてたけど…
「えっと… 七瀬さんの気持ちを、 ちょっと。」
「!」
七瀬さんは驚いた顔をした。
そして少し間を置いてから話した。
「わ、 わたしの気持ちって、 どんな気持ち?」
「え? それは……」
七瀬さんは目を潤ませていた。 一体どんな答えを求めているのか…
僕の中ではまだ答えは出てないぞ!
「えっと…… ごめん。 分からなかった。」
僕は正直に言った。
そして七瀬さんの方を見ると、俯いて肩を震わせていた。
泣いてる?
「……ぅっ……ひっく」
「七瀬さ、」
「ばかああああ!!」
七瀬さんはそう叫んで、 振り返った。
走るつもりだ! 同じ手を繰り返されたら流石に分かる。
止めないと! 斎藤にも言われてるし、 今理解できないといけない気がする!
「待って!」
僕は急いで後ろから七瀬さんの手を掴んだ。
「離して!」
「嫌だ!」
「なんで!」
「七瀬さんの事が好きだからだ!」
「!?」
七瀬さんの動きが止まった。
そして僕も止まっていた。 僕は七瀬さんを止めるために咄嗟に声を出した。
でもその出てきた声が、 僕も予想外の言葉だったからだ。
「……いま、 なんて?」
七瀬さんが聞いてきた。
僕も自分でびっくりしている。
こんなこと言う予定じゃなかったのに。 なんでこんなこと言ったのか僕が聞きたかった。
「いや、 その…… 分からない。」
「……ふっ」
七瀬さんは少し笑った後、ゆっくり振り向いて僕の方を見た。
涙目だけど、 笑顔になっていた。
「ほんとに……?」
「いや、 違うんだ。
これは、」
「来人くん…… 私も、」
そして七瀬さんは僕の手を振りほどいた。
「私も好き……」
そして七瀬さんは僕の胸に倒れ込んできた。
「え?」
「来人くんのこと、 大好き……」
「え? な? は?」
突然のことで頭が混乱する。 やっと理解できた。 でもその事実が、 信じられないもので。
七瀬さんが僕に好き好き言っていたのは、 そうゆう意味の好きだったなんて…
でも、そんなのあり得ない。
だって七瀬さんはあんなに可愛いくて性格もいいし、それに優しいし。
そんな人が、 僕のことを好きになるわけがない。
「…でも七瀬さん。 僕なんかと七瀬さんじゃ、 釣り合わないよ…」
僕はそんなことを口にしていた。
「……私が好きなんだからいいよ。 でも私はね…」
七瀬さんはそう言いながら少し離れて、 僕の目を見た。
「それより、 来人くんの気持ちがどうなのか… 不安…」
「僕の気持ち?」
「うん。」
七瀬さんは真剣な表情をしていた。
「……」
七瀬さんのことが、 嫌いじゃないことは確かだ。
むしろ、 一緒にいると楽しいと思う。
それに、 七瀬さんに好かれるのも嬉しい。
……初めて七瀬さんと話したあの日。 カラオケをやる人数が少なかったから、
せっかくの機会と誘ったんだ。 それだけだったのに… ちょっと話しだしたら、
もっと話したくなった。気づけば、 いつも七瀬さんのことを考えてた。
「僕は……」
「……」
七瀬さんがじっと見つめてくる。
そして僕は、 ゆっくりと口を開いた。
「僕は……七瀬さんの事が好きかもしれない。」
「!」
七瀬さんは驚きと喜びが混ざったような、 そんな表情をした。
「まだ好きとか…… よく分からないけど、 少なくとも、 七瀬さんといて、 その、
退屈ではなかった。 むしろ楽しかった。」
「……」
「だから、その、 僕と、 付き合って…」
「……ふっ、」
七瀬さんは小さく笑った。
「やっと分かってくれた。」
「え? どういうこと?」
「ううん。なんでもない。」
「そっか……」
「じゃあ改めて…」
「え?」
「私と付き合って下さい!」
「……うん!」
そして僕達は、 お互いの顔を見て笑い合った。
〜fin〜
実は、 これ【Aiのべりすと】で書いた作品です!
最近のAiはすごいですね。 では!