DRAGON HEAD プロローグ
小説を書くのは初めてです。
どこか既視感のある設定やシーンが多いもしれませんが、
趣味の範囲で書いているのでご容赦ください。
【佐藤】
夜8時半。
ダイニングテーブルを家族3人で囲み、団欒の時間。
佐藤の今の生きがいであり、守るべきものだった。
「こら、手で食べないの。」
妻の美菜子が娘を軽く一喝する。
しかしながらそのトーンは奥底に愛が秘められていて、
美奈子にとっても娘が生きがいであることが感じられた。
5歳になる娘は、美奈子の話には耳もくれず、
テレビに映る警察に密着する番組に夢中だ。
「舞ちゃん、聞いてるの??」
「舞〜」
子供に注意をするというのは、いつになっても慣れない。
どうしても迫力が無くなる。
そのせいか、
舞は、まだテレビを見つめている。
あまりの意固地さにつられて、自分と妻もテレビを見た。
テレビには、警察に多勢に無勢で押さえつけられ、
加工された甲高い声で罵詈雑言を尽くす男が映し出されていた。
「なんだか、かなしいね。」
舞が小さく哀れみを含んだ悲しみを呟いた。
「でもね舞、この人は悪いことをしてきた人なんだよ??」
「悪いことをした人にはね、いつか必ず天罰が下るの。」
「神様はいつも見ているの、だから舞は悪いことしちゃダメだよ??」
妻の言葉に、心臓を貫かれた。娘はきょとんとしている。
体が、一瞬冷たくなる。胸から背中にかけてが凍りつくような感覚になり、身震いをした。
胸の奥にある黒い罪悪感と、絶対に漏らす訳にはいかない
隠し事が鼓動を早くする。
舞がフォークを肉に突き刺した。
つい、今日こなした仕事を思い出す。
微かに溢れ出る肉汁と、ナイフに刺された脇腹から
溢れ出し、シャツを赤く染める血が網膜の裏で重なる。
断末魔と、血の鉄臭さがよぎる。
〝仕事〟には、何も感じないはずなのに。
夕食が、途端にグロテスクな死肉の山に見えた。
死体には慣れているはずなのに、軽く吐き気を催す。
こんな仕事、早く辞めてしまいたい。
心の底からそう思った。
自分の娘と妻の幸せが、死体の山の上に成り立っていると
思うと、佐藤は言い表すことの出来ない罪悪感に襲われた。
やっぱり自分は幸せになどなってはいけないのだろうか。
いや、そんなことは最初から分かっていたはずだ。
自分は〝悪い人間〟、殺し屋だからだ。
もちろん家族は、その事を知らない。