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銭湯のウラバナシ

 季節は冬へと差し掛かり、日が沈むのもだいぶ早まった今日この頃。

 大杉 歌恋(わたし)は突然始まった模擬戦の審判役を頼まれ、渋々ながらも引き受けた。

 結果は兄が連戦連勝。最後の最後で水鏡先輩に負けてしまったけれど、それでも兄の強さが証明された事は身内として若干誇らしい。


 ……だが、問題はそこではない。

 審判役というからには同じフィールドに立っていなければならず、暴風雨のように荒れ狂う兄達の巻き起こす砂塵によって私は砂だらけにされ、試合が終わる頃には嵐にでも吹かれたのかという程にズタボロになっていたのだ。

 と、いうわけで私は道場に併設されている銭湯へとやって来ていた。

 いや敷地内に銭湯……というツッコミはとりあえず置いておいて。

 諸々の事情は本編を読んでもらうとして、私達模擬戦組は夕食前にひとっ風呂浴びに来ているのである。



 ◇



 「──あれ、歌恋。その背中の傷……」

 身体を洗っている時のこと。

 背後を通った楓がふと私の背中を見て動きを止めた。

 鏡越しに見えるその視線の先は、私の肩口辺りにある蚯蚓脹れの痕。

 「ああ、まだ跡が残ってますか? これはクラバットルに捕まっていた時に鞭打ちされたやつですね」

 私はそう言いながら、未だに硬さの残る肩の傷に触れる。

 ダークエルダーの最先端医療技術によって大部分の傷と精神的な苦痛は治療及び緩和されたのだが、完全に痕を消すには時間をかけた方が将来的に良いと言われたのでしばらくはこのままなのだ。


 奴は“巫女”と呼ばれる少女を集めて邪神を降臨させようとしていたが、その巫女も私や楓のように戦闘能力を備えている場合もある。その為に散々ヤク漬けや拷問をして戦意を削ごうとしたのだ。

 私も例に漏れず顔以外は傷だらけにされ、当時はすっかり心まで折られてしまっていた。生爪を剥がされ熱した火かき棒で臍を抉られても目から光が消えなかったのは巫女服の少女くらいだろう。

 他にも巫女と呼ばれた少女達はいたが、治療を受けた後は一度も集まることなく時が過ぎた。今も壮健であれば何よりなのだが。


 話は少しそれたが、私はこのキズに対してそんなに深く考えてはいない。そりゃあ嫌な思い出ではあるが、傷物にされた代わりにそれまでの私では到底拝む事のできないくらいの大金をダークエルダーが見舞金として用意してくれたのだ。

 私の懐はボーナス前の下手なサラリーマンよりも潤っている。

 だがまぁ、楓からしたらそんな私の心境など慮れる訳もなく。

 「ごめんね、早く助けてあげられなくて……」

 そう後悔とも懺悔とも聴こえる声が反響する。

 

 「いいんですよ、楓。貴女が助けに来てくれただけでも私は感謝しているんです」

 あれだけのヒーロー達が熱海に揃っていても事前に助けにこられた者はいなかった。つまりそれだけクラバットルが巧妙だったという話であり、生贄として消費される前に救出されただけでも御の字なのだから。

 それに、私としては友達を庇っただけなのだ。その友達が私を助けてくれて、それからも親友として関係を紡いでくれるなど恵まれているとも言える。

 だから、


 「これからも私の親友でいてくださいね」


 私はそれだけで満足なのだから。


 ──その数分後、私のオッパイソムリエとしての本性を見せることになるとは思わなかったけれど。



 ◇男風呂の話◇



 星矢:師匠、ぶっちゃけ今のところどうなんですか?


 ツカサ:……どう、とは?


 星矢:とぼけないでくださいよ。あんだけ美人ばかりいて本命がいない、なんて言わせませんよ?


 ツカサ:いやいや、キミね? みんな年下なんだしそんな対象として見てるわけないでしょうが


 星矢:だからって「この子いいなぁ~」みたいなのはあるじゃないですか! 俺は瑠璃一択ですけど、師匠なら選びたい放題でしょ?


 ツカサ:あのねぇ、俺は相手を選ぶような立場じゃないの。選ばれたらいいな、くらいには思ってるけどね?


 星矢:じゃあ本命は誰なんですか?


 ツカサ:そういう感じにはなってないって


 真人:ウチの美月なんてどうでしょうか? 文武両道であの通り美人に育ちました。実家だって見ての通り太いですよ?


 ツカサ:愛娘の自慢がしたいだけでは?


 真人:いえいえ、貴方ならば誰も反対しませんとも。今回だって模擬戦では手を抜いていたでしょう?


 星矢:そうですよ! 師匠は剣術よりも格闘技系の方が強いですもんね! 何でもありなら勝ってたのは師匠ですよ!


 ツカサ:いやいやいやいや、こんなどこの馬の骨とも分からない男に愛娘をオススメしない方がいいですよ。それに何でもありでも勝てるかどうか……


 真人:でもウチの娘を悪くは思ってませんよね?


 星矢:ああいや、もしかしたら師匠は胸が大きい方が好きなのかもしれませんよ? それかあの金髪の後輩ちゃん? 無口なミステリアス少女? 大穴でミクミク先生とか!


 ツカサ:……確かにみんな美人さんだけど、俺がまず釣り合い取れないんだよなぁ……


 真人:ふむ、脈はあるけど引いてる感じですか。これは司さんの方が攻略対象の可能性も……


 星矢:え、マジでそんな感じですか? 師匠、モテモテですか!?


 ツカサ:モテてたら今頃彼女のひとりでも居るはずなんだよ。そんな事ないからいないんだよ


 真人・星矢:えーっ、嘘だ~?


 ツカサ:……揶揄ってるだけだな? 揶揄ってんだな!? よーっし喧嘩なら買うぞ!


 星矢:おっと、師匠の本気が見れるならっ!


 真人:我々も一肌脱ぎましょうか! 既に全裸ですがね!


 (唐突に風呂場へと投げ込まれる『静かにしなきゃ殺す』と書かれた札付きの手裏剣)


 三人:……


 真人:そういえば、陰陽術ではお風呂のお湯も操れるんですよぉ……


 星矢:へ、へぇ~……。見てみたい、なぁ~


 ツカサ:俺もそっち方面に興味あるなぁ~


 三人:ははははは……

 あけましておめでとうございます。


 今年もウラバナシまで読んでくださり本当にありがとうございます。

 本編の方も頑張って続けていきますので、本年もよろしくお願い致します。

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