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大人達の夜

 本篇『飲み屋と出会いと宴の夜 その3』のオマケ的続きとなります。

 本篇を読んでいない方は、是非そちらから読んでみてくださいませ。

 ツカサ「それにしてもまさか、北海道まで来てイオナさんと会うなんて思っていなかったよ」


 イオナ「それは同感。……あと、そろそろさん付けやめて欲しいな。ミクの事は呼び捨てのクセに」


 ツカサ「え、いやぁ……。だってミクとは幼馴染だし、渾名みたいなもんだし……」


 イオナ「私もコードネームだけど? 私とだって同級生だし、飲み友達でしょー?」


 ツカサ「いやいや、だからって。仮にもアイドルを呼び捨てにはできないって」


 イオナ「呼べー! 呼べー!」


 店員「はい、お呼びでしょうか?」


 イオナ「あ、ナマをみっつ追加で。それとこの『丸かじりキュウリ』と『チンゲン菜の炒め物』をお願いしますぅ」


 店員「ハイかしこまりましたー」


 三國「ナイス対応力だな。伊達にアイドルはやってないって事か」


 イオナ「今のは事故でしょうが、もうっ! ツカサく……いやツカサ! 私も呼び捨てにするからアンタも呼び捨てにして敬語もやめれ! じゃないと広報にある事無い事チクるからねっ」


 ツカサ「わ、わかった! 分かったからそれだけは勘弁してくれっ! 流石に所属組織と殺し合いになるのはマズイって!」


 三國「おー。幹部昇進直後に同組織のアイドルをアンアン鳴かせて真の悪役まっしぐらか。全世界がキミの敵だな、ツカサ」


 ツカサ「それがシャレにならんから困るんだよ! イオナさん……いやごめん、イオナ。ほら、この春雨の天ぷらあげるから、な?」


 イオナ「えー、どうしよっかなぁ。というか春雨の天ぷらってどんなチョイスよ?」


 三國「コイツ、昔から変な食べ物があると試さずにはいられないタチだったからなぁ。……ほれ、このイチゴ牛肉のステーキも一切れくれてやろう」


 ツカサ「おっ、マジ? 気になってたんだよねそれ」


 三國「ほら、あーん……」


 ツカサ「うっ……。あー、アッッヅ!?」


 三國「はははバカめ、誰が冷ましてやるものか」


 ツカサ「わがっでだよチクショウ! でもうめーよありがとう!」


 イオナ「……じゃあ今度は、このホット板チョコバターサンド食べる?」


 ツカサ「ぐっ! 気になってたけど! 気にはなってたけどなんで煮えたぎってるんだよそれ! 明らかに一緒にきた鉄板で冷やすタイプじゃん! なんで冷やさずに渡す気満々なんだよ!?」


 イオナ「……私からの好意、受け取れないの?」


 ツカサ「それ好意じゃなくてイタズラ心じゃん! ヤダよ酒のノリだけで口の中の皮がべろんべろんになるの! 仲良くなった記念にオメーの酒にレモン汁これでもかと搾ってやろうか!?」


 イオナ「ん……。そんだけ砕けてるならまぁ許してやるか」


 ツカサ「許す許さないの話だったのこれ……」


 三國「なんだ、嫉妬か?」


 イオナ「あ゛ー? いや……んー、近いかも? なんとなくだけど、アンタ達のやり取りみてると疎外感みたいなの感じるっていうか……」


 三國「おーおー、だいぶ酔ってるなイオナ。水はいるか?」


 イオナ「ありがと。……最近なんかストレス溜まってしょうがなくてねぇ、ひとりで呑んで発散するのも限度があるって」


 ツカサ「アイドルのストレスの捌け口が酒ってどうなのよ」


 イオナ「あら、暴力とか奇行とか後輩イビリよりマシでしょー?」


 ツカサ「痛いっ!? イタイって叩くな噛むなナメるな今その三拍子全部やってんじゃねーかコラァ!」


 イオナ「キャッキャッ」


 三國「あー、これあっくんの精神が崩壊するやつだ。彼、学生の時からキミに惚れてたんだよ?」


 イオナ「情報屋が唐突に暴露するの滅茶苦茶怖いわね」


 三國「今日はツカサの奢りだから機嫌がいいんだ。ついでに今のショート動画作って渡したし」


 ツカサ「どうしてそんなことするの!? あ、通知やべぇ! これあっくん!? 互いに連絡先知らないハズなんだけど!?」


 三國「売ったら言い値で売れたわ」


 ツカサ「プライバシー!」


 イオナ「仕方ないわねえ、フォローしてあげますか……。『アナタのこと、学生時代から苦手でした』っと」


 ツカサ「トドメじゃん! それフォローじゃなくてトドメじゃん!」


 三國「……お、やった。彼に紹介してたリストが売れたわ」


 ツカサ「え、何のリスト?」


 三國「……」


 ツカサ「そこで黙るなよ!? 怖いよ! 何売ったか言えよ!」


 三國「情報料五千円です」


 ツカサ「情報屋がコノヤロー!」


 三國「ウソウソ。彼に好意を抱いてる女性をまとめてあったんだ。彼は自力で頑張るつもりだったみたいだけど、心が折れたんだねぇ」


 イオナ「ウケる」


 ツカサ「お前らがへし折ったんだけど!?」


 店員「おまたせしましたー。ナマみっつとキュウリとチンゲン菜でーす」


 ツカサ「あ、どーもー」


 店員「ついでにこの『スペシャル鶏皮ゆずゆずゆずポン酢揚げ』もいかがっすかー?」


 イオナ「ほら、奇抜料理だよツカサ」


 ツカサ「なにその……なに? なんで料理名にツッコミどころが散見してるの……?」


 三國「じゃあ、それを二人前ください」


 店員「ハイかしこまりましたー」


 イオナ「わーお、ゆうしゃー」


 三國「マズかったらツカサが食べるし」


 ツカサ「だったらなんで一人前にしなかったの!?」


 三國「美味かったら私とイオナで一人前をもらうつもりだからだが?」


 ツカサ「味を確かめてからもう一回頼むだけじゃん! なんでいつも変なとこで思い切りがいいんだ!」


 三國・イオナ「「ノリ」」


 ツカサ「……あっ、そ。仲良いねアンタら」


 イオナ「そりゃあ私達は昔から友達だったし」


 三國「あの頃は委員長タイプだったイオナが、今やVドルかぁ。時代は移り変わるんだなぁ……」


 イオナ「私的にはミクがセンセなんてやると思わなかったけど」


 三國「成り行きに近いけどね。実家の裏稼業として情報が売り買いできそうな場所で思い付いたのが学校の中ってだけだし」


 ツカサ「学校で情報を売り買いするな」


 三國「多感な年頃の少年少女に必要なのは情報なんだよドーテーボーイ。つまらない青春しか知らないキミよ」


 ツカサ「うっっっっせぇぇぇぇばぁぁぁぁぁっか!! 友達と一緒にモン〇ンやス〇ブラする青春の何が悪いってんだよばぁぁぁぁぁっか!!」


 三國「滅茶苦茶効いててウケる」


 イオナ「へー、ドーテーなの? 二十歳過ぎたら非モテって基本そういう店に駆け込むものだと思ってたけど」


 ツカサ「イオナがそんな言葉口にしちゃいけません! ……コミュ障はまずリアル女子とすら話せないし、そもそも前職はブラックすぎてそんな暇すらないからド……とりあえず独身のままだよ……」


 三國「………なんか、ごめんな?」


 ツカサ「謝るな。余計惨めになるから」


 イオナ「なんなら、私が結婚してあげよっか? 互いに30過ぎて独り身だったら、だけど」


 ツカサ「出た、その甘酸っぱいような判断しにくいセーフティライン。そういうの、ある程度好意のある相手以外に言わない方がいいぞ? 男なんて単純ですぐ勘違いするんだから」


 三國「ツカサは勘違いしないのかい?」


 ツカサ「からかわれてるって分かるからな。そもそもお前らみたいな美人が30まで独り身なワケないじゃん」


 イオナ「ふーーーーーん」


 ツカサ「いたっ! いたい、いたい。脇腹を親指でグリグリすんな骨だぞそこいたいいたいいたいっ!」


 三國「ちなみに私の調べだと、ツカサが同期一番の出世頭だ。というかお前一回自分の資産調べろ。ヤバいぞ?」


 ツカサ「ヤバいって……何が?」


 三國「帰ったあとの宿題だ。もう女の子なんざ選り取りみどりだろうよ」


 イオナ「ふーん選り取りみどりふーん」


 ツカサ「うぐっ!? ちょ、チョークスリーパー!?」


 イオナ「おまえをころす」


 ツカサ「なんで!?」


 三國「ハッハッハ酒が美味いなー」


 ツカサ「ねぇお前さんの友達くっっそ酔ってない!? 殺しにくるんだけど!? せめて引き剥がすくらいはやってよォ!」


 三國「役得だろう?」


 ツカサ「周囲の視線がいてぇーのよ! あと耳たぶを割とガチめに噛んでくるから早くトメテ!」


 イオナ「ガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジ」


 ツカサ「耳たぶ痛てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!」


 三國「ハッハッハッハッハッハッ!! いひぃーひっひっひっ!!」


 ツカサ「笑ってねぇで!!」


 イオナ「あんたねぇ……私だってねぇ………。あんなの……こ…………Zzz……」


 ツカサ「寝たー! なんか気になる事言いながら寝たー!」


 三國「今日はあの忍者さんと二人きりで、知らない土地を生き延びなきゃならなかったんだ。見知った顔を見て一気に疲れが出たんだろうねぇ」


 ツカサ「……だからって、俺の背中で寝る事はなかろうに………」


 イオナ「ねてないもん! わたしまだうたえます!!」


 ツカサ「うわぁ飛び起きた!?」


 イオナ「きいてくだしゃい……私のぜんりょく……。“反魂世界と(シャーマン・)苦い珈琲(コピ・ルアク)”」


 三國「いかん! このままコイツ、本気(マジ)で歌うぞ!?」


 ツカサ「えっ!? ど、どうすりゃいい!!?」


 三國「正面から抱き締めてキスをしろ! そうすれば止まる!」


 ツカサ「よ、よし……! ってできるかバカ!」


 イオナ「…………Zzz……」


 ツカサ「……今度こそ起きないよな?」


 三國「そうである事を祈れ」


 ツカサ「ひぇぇ……」


 三國「とりあえずこっちに寄越せ。ソファ席だから膝枕で寝かせておく」


 ツカサ「おう、頼むわ」


 三國「……ツカサにはしてやらんぞ?」


 ツカサ「知っとるわドアホ」


 ふたり「「……くっくっくっ」」


 ツカサ「あー、懐かしいノリだ」


 三國「子供の頃はずっとこんな感じだったもんな。今後は、末永く御付き合いをよろしく頼むよ」


 ツカサ「それは保護者と担任としてか?」


 三國「ツカサと私として、だよ」


 ツカサ「……ああ、そうだな。こちらこそよろしく頼む」


 三國「じゃあ、だいぶ経って温くなったけど」


 ツカサ「おう。再会を祝して……」


 ふたり「「乾杯」」

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― 新着の感想 ―
[一言] ツカサくんにまさか恋愛フラグが立っていたとは、、、いやもう一人いたか。
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