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悪の組織とウラバナシ  作者: 桜椛 牡丹


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13/13

ifルート:キャロル編

 明けましておめでとうございますわっ!

 随分と掛かりましたがキャロルifとなります。

 コンサート・フェスティバルが大成功を収め、能美キャロラインという少女はひとまずの危機を脱した。

 その後も幾度となく理由を付けてはツカサへと会おうとするキャロルに、ツカサは満更でもない感じで付き合ってはいたのだが。

 「司様、そろそろ私と付き合っていただけませんか?」

 そう毎度のように聞かれることだけには未だに慣れないでいた。



 ◇



 「本日も買い物に付き合っていただき、ありがとうございました♡」

 今日もまた何気ない用事で呼び出された司だったが、まさか買い物だけで一日を使うとは思ってもみなかった。

 「……いーえ、これもまた『ボディガード』の務めなのでー」

 明らかに不服ですという態度を隠そうともしないツカサに、キャロルは満足そうに笑う。

 そう、今のツカサは非常勤のボディガードとしてキャロルに雇われていた。ダークエルダーが金策の為に傭兵事業をしている、という情報をどこからか仕入れ、キャロルは金に物を言わせてツカサだけをピンポイントで指名するという荒業を使ったのだ。


 ……正直、幹部となったツカサを雇おうとしたらどれだけ組織が吹っ掛けたのか想像もつかないのだが、キャロルは王女としての立場と親善大使兼国民的歌手としての収入がある。無理な値段ではなかったのだろう。

 ツカサへの臨時ボーナスもかなりの高額となっていたので、もしかしたら数百万という単位だったのかもしれない。

 「はぁぁぁ……素敵ですわぁ。こうして並んでいられるだけでも感無量です」

 ツカサが不機嫌なのを見ながら、何故かキャロルはウットリとした笑みを浮かべている。


 「……キミは俺が長いウィンドウショッピングに付き合わされてウンザリしている様子を見て、何故笑っているんだい?」

 外に出たいからまた護衛としてツカサを貸してくれ、と依頼された時は渋々付き合うことにしたものの、まさか朝の8時に集合したかと思ったらそこからカフェでモーニングを食べ、アウトレットで夜の9時まで付き合わされるとは思いもしなかった。

 しかも、というか。朝昼夜の食事代を出す程度ならツカサには痛手にならないものの、まさかボディガードがツカサ以外誰もいない状況に置かれるとは思ってもみなかった。

 おかげさまでずっと気を張ることになり、帰りのリムジンの中でようやく一息付けたのである。


 「だって、私の傍に居て()()()をしてくれるのは貴方様と機械人形だけなんですもの。生き返ったような心地ですわ♡」

 キャロルのその言葉に、ツカサはそんなもんかと思いながら目頭を揉む。

 彼女……キャロラインの固有能力は『魅了』。あらゆる人物が「最終的にはキャロルが大好きになる」という常時発動の呪いのようなものである。

 その呪いに耐えられるのは、ノアのような脳に対するノイズを完全に遮断できるような精霊(又はそれに準ずる者)を連れている者か、そもそもそういう能力が効かない者のみ。

 ツカサはノアに解呪してもらいながら、途中で半神として目覚めたので一切キャロルの魅了効果を受けていないのである。


 「だからって嫌な顔を見て喜ぶのはどうなんだ?」


 「私は司様が私の方を見てくれているというだけで嬉しいのですけれど♡」


 「……なんだか最近倒錯的になってきてない?」


 「あら、私がそもそもマトモだと思ってくださっていたのですか?」


 「それを言われたらなぁ……」


 王女と平民なら立場も違うし価値観も違う。そもそも彼女は能力のせいで一般的な生活とは程遠い人生を送ってきたのだ。ツカサの思う『マトモ』の範疇からは程遠いだろう。

 「それに、司様は“倒錯的”な女性の方がお好きなようですから」

 何気なく言うキャロルに、ツカサは数秒経ってから首を傾げる。

 ……はて、そのような趣味嗜好を話した覚えはないのだが、と。

 「一体誰からそんな話を?」

 「歌恋からですわ。『兄は自分のような“変わり者”をありのまま受け入れてくれる、自分だけに特別な一面を見せてくれる女性が好きだ』と、そう言っておりましたが」

 ……カレンめ、いつの間に兄の好物を特定していたのか。

 大正解過ぎてぐうの音も出ない。


 「私は司様に好かれる為ならどうとでも変わりますわよ。それこそ『全ての立場を捨て、俺だけの物になれ』と仰ってくだされば、私は一生座敷牢に繋がれようとも不満を言ったりしませんわ♡」

 「いやいやいやいやいや重い重い重い重い重い」

 何をどうしてそこまで好感度を稼いだというのだ。

 ツカサにはあまりに身に覚えが無くて怖過ぎる。

 「どうしたんだキャロル、俺に魅了は効かないって分かってから積極的になって。俺を私物化したところで大した利益には……」

 「違いますわ司様。それは違います」

 ふわりと、未だに慣れない香水の匂いが香ったかと思えば、頬に添えられた手によって逃げ場を塞がれた上で口を塞がれた。


 一秒、二秒、三秒……。たっぷり十秒ほどの時間の後に、ゆっくりとキャロルの顔が離れていく。

 「私は、貴方様の事が本当に好きなのです。歌恋からは今お付き合いしている女性は居ないと、そう聞いておりますのに……どうして『お試し』にでも付き合ってくださらないのですか……?」

 夜景を写すキャロルの瞳はとても美しい。それが涙に揺れているものだから……。

 正直に言おう。ツカサはずっとキャロルに惹かれている。

 「……キミは、どうして俺に固執するんだい? 前に伝えた通り、俺は半神で人とは寿命から何から別物になってる。普通の人間と付き合うのとはまったく違うものになるはずだ。……それでも、俺でいいのかい?」


 アレから何度も何度も好意を告げられ、こうしたスキンシップを重ねているのだから……ドーテーが惚れるのも当然だろう。

 それでもツカサは我慢してきたのだ。キャロルとツカサではあまりにも住む世界が違い過ぎる、と。

 しかしそれでも、と。キャロルはまたもツカサの口を塞ぎ、ふにゃりと笑う。

 「…………いいではありませんか。『世界に愛される宿命の魔女』と『人を超えた半神』。どちらも恵まれた末に()()を感じた者同士、お似合いだとは思いませんか?」

 キャロルの笑みを前に、ツカサはもう目を離せない。


 これはもうツカサの負けだ。

 ここまで愛されて、想われて。全人類に愛を注がれる事を確約されている存在から『アナタだけ』だと言われたら。

 盾にもならないような建前を、それがなんだと言われ取っ払らわれてしまったら。

 もうツカサに断るだけの理由はない。


 「……俺からも言わせてくれ。キャロル、俺もキミが好きだ。俺と付き合ってください」


 随分と遅くなってしまったが、これがツカサの答えだ。

 その言葉を聞いて、キャロルは……。


 「──はいっ! よろしくお願いいたしますわっ!!」


 元気よく返答をし、ツカサへと抱き着いてきた。

 ウラバナシの更新はマチマチですが、本編は毎週更新しておりますので今年もどうかよろしくお願いいたします。

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