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7 懇意の仕立て屋

 ネイベット侯爵は言わざるを得ないと覚悟したように小さくため息をついた。


「かしこまりました。では、遠慮なく。

本日、こちらへいらした際のボーラン嬢のドレスを拝見しましたが、王子殿下の婚約者様としての装いとは申せませんでした。ですから、早急にドレスを十着ほど仕立てねばなりません」


「でしたら、わたくしの懇意にしている仕立て屋を紹介しましょう。生地もいいものを揃えているし、デザインも最新のものですのよ」


 王妃の少女のようなはしゃぎに、サビマナもウキウキした。


「それはよろしいお考えかと。すぐに手配いたしましょう。明日にでも採寸できるようにしておきます」


 ネイベット侯爵の視線で文官の一人がお辞儀をして退去した。仕立て屋の手配に向かったようだ。


 王妃が『パン』と柏手を打った。


「そうだわ。それなら、お化粧品やアクセサリーも必要なのではなくて?」


「然様でございますね。こちらも王妃陛下の御用達の商会でよろしいですか?」


「いいわ。二人が婚姻してからゆっくりとボーラン嬢のお気に入りを見つければいいでしょう?」


 サビマナは王妃の問いかけに大きく頷いた。もう一人の文官が手配に行った。


「婚姻後に、いろいろな仕立て屋や商人を呼んでお気に入りを見つけるといいわ。みな、王子妃の御用達になりたいと思うから、素晴らしい物が揃うわよ」


「うわぁ! 楽しみだわぁ!」


 サビマナは、両手を前に組みウットリとした。レンエールとボーラン男爵は眦を下げてそれを見ていた。


「それから……」


 またネイベット侯爵が言い淀むが、国王がチラリと視線を向けたことで促された。


「ボーラン嬢だけでなく、ボーラン男爵殿並びに男爵夫人、また、後継であるボーラン卿にも、お仕立てをお願いします」


「わ、わ、我々もですか?」


「ええ。王子妃の家族として見られるのです。恥をかくのはボーラン嬢となってしまいますので……」


 サビマナは自分が恥をかくと聞いて、悲しそうに視線を落とした。


『さすがに家族の分は我が家で支払うのだろうな。先行投資だと思うしかないな』


 ボーラン男爵は覚悟を決めた。


「では、よい仕立て屋を紹介願えますか? 王都の仕立て屋は知らないのです」


「それは、ワシの気に入りのところを使うといい。レンエールの気に入りでは、ボーラン男爵には、ちと若すぎよう」


 国王の気遣いで笑いが誘われ、朗らかな雰囲気となった。


「男爵夫人は、明日、ボーラン嬢と共にいらして採寸なさるとよろしいわ。ボーラン嬢と同じところで仕立てましょう」


「お母さんとドレスが作れるの? やったぁ!」


 文官が再び手配に動いた。


「国王陛下の御用達と王妃陛下の御用達は姉妹店ですので、採寸でしたらご一緒に可能でしょう。

ボーラン男爵。明日、ご子息ボーラン卿も一緒にいらっしゃれますか?」


「はい! わかりました」


「では、明日の午前中にご家族皆さまでいらしてください。

明日はご昼食も用意いたしておきますので、レンエール殿下とご昼食をおとりになってくださいませ」


「まあ! それなら、わたくしもご一緒したいわ」


 王妃陛下が手をパチンと合わせてニコニコした。


「ワシは明日は王都の端に慰問だ。残念だ。

午後には間に合うように戻ってこよう。

まだまだ親睦を深めねばな」


 国王陛下も満面の笑みで頷いた。

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