46 ボーラン男爵の能力
国王陛下もレンエールの側近を考えて悩ましげに眉を寄せた。
「優秀だと聞いておったが、残念だ」
「学業に優秀であることと、それを活かせることは別問題なのでしょう。周りを見て、状況把握をし、解決策を考える。その作業をしなくては意味がありませんから」
ネイベット侯爵もバザジール公爵の意見に賛成する。
「バローム。優秀であるのに、どうしてそうなったと考える?」
「はい。何につけ、どう行動するかを命じ、その行動にも制限をつけていったと考えられます」
「なるほどな。何をするべきかを自分で考えることはしなくなってしまったと。
ネイベット大臣。その辺りは二家にアドバイスしてやれ。できる人材として戻ってくるやもしれぬからな」
「かしこまりました」
バザジール公爵が国王陛下をからかうつもりで、再びニヤニヤとして目を合わせる。
「私はその場―レンエールとサビマナの婚約を認めたお茶会―にはおりませんでしたが、両陛下の演技も素晴らしかったそうですね」
「ニールデン。そうからかうな。本当に二人の婚約を成立させねばならなくなったらいかがいたそうかと、恐ろしかったのだぞ」
「そうよ。仕立て屋まで巻き込んで」
王妃陛下が眉を寄せた。困り顔の両陛下にネイベット侯爵が微笑む。
「仕立て屋には収入になっておりますから問題はございません。
王族に嫁ぐにはそれなりの資産が必要だと知らないことがおかしいのですから」
仕立て屋や商人を紹介したのは、どれほどの予算がかかるのかを教えるためだった。まさか、さらに注文して借金を増やすとは予想していない。結局は商人に売ることになったが、サビマナが嫁がないことになればそれらの物は買い取ってやるつもりだった。
国王陛下が悲しげに呟く。
「ボーラン男爵家を潰すことになってしまったな……」
「いえ、それは少し早まっただけのことです。ボーラン男爵家からの納税額はだいぶ落ちておりました。あと五年放置していたら、男爵一家は裸で市井落ちでしたよ」
バザジール公爵は宰相としてその点もチェック済だ。
「そうか。領地の大きさに見合った納税額はあるからな。それが領地経営であり、領民を守っているということに繋がっているのだし、な」
「「その通りです」」
バザジール公爵とネイベット侯爵は大きく頷いた。
ネイベット侯爵の手の者がボーラン男爵領の屋敷に潜入していたことを知っているバザジール公爵が視線をネイベット大臣に向けた。
「ところで。ネイベット大臣。散財する以前のボーラン男爵家の状態はどうでしたか?」
「帳簿を見たところ、借金や散財する前なら、何年もかかりますがギリギリ持ち直せたのではないかと申しております。優秀な管理人がいれば、ですけどね」
もし、ボーラン男爵一家が借金や散財をしなかったら、『未来の王妃のための執事』として人材を送り込み、『国王陛下の命』として領地管理に口を出すつもりだった。そうすれば男爵家は数年かけて持ち直していっただろう。
「そうか。ボーラン男爵は学園に通っていたのであろう? 何を学んできたのだ?」
貴族学園は創立からすでに百年を超えている。
「ボーラン男爵はDクラスでしたので……」
Dクラスは成績順ではない。学習内容も就職するに有益になることを学んでいる。男性であれば馬術や剣術などが主である。
「…………。そ……そうか……。後継者となるものは最低でもCクラス、無理なら相応な秘書を雇うことにせねばならんな……」
誰もが神妙に頷いた。




